ぐる式 (貳) より引っ越し作業中.未完.

2000年12月30日土曜日

本日の収穫:Ghost in the Shell, Terry Gilliam The Directors

本日の収穫:観物

  1. 押井守 "Ghost in the Shell - 攻殻機動隊", バンダイビジュアル, BCBA-0246, 1995?
  2. The Directors "Terry Gilliam", 東北新社, TBD 8002, 1998

 めちゃ混みの石丸本店にて.『テリー・ギリアム』での登場作品は以下のとおり.

  1. 12 Monkeys,1995, *
  2. The Fischer King, 1991, *
  3. The Adventure of Baron Muenchausen, 1989, *
  4. Brazil, LD, 1985
  5. Monty Python's The Meaning of Life, DVD, 1983
  6. Time Bandits, LD, 1981
  7. Jabberwocky, 1978, *
  8. Monty Python and the Holy Grail, LD, 1975

* は未見作品. LD/DVD は所有作品.ただし,『Time Bandits』の英国盤 (?) LD は行方不明.イギリスの押井守と呼ばれている (をいをい) テリー・ギリアムだが,未聴 (観) 作品が多いなぁ〜.そうそう, Monty Python のコンプリート DVD ボックスが出ていて, LD 完全制覇できなかったワタシ (1, 2, 7, 8, 9, 10, 12, 14 のみ) としては買わねばの娘.

2000年12月27日水曜日

The Seven Dogs’ War

 押井守の 6 枚組を観終わる.やっぱ,何をやっても押井守は押井守だわ,という至極当たり前な事実を確認.収穫は,『パトレイバー』 2 本もなかなかイケてるが,最高に面白いのが『麿子』である.

2000年12月24日日曜日

●シアター松田:グラディエイター

 シアター松田では『グラディエイター』を観る.うーん,マルクス・アウレリアスって,『自省録』を書いたローマ皇帝だったよな,確か.ほんまに息子に暗殺されたの? リドリー・スコット監督ということで期待して観てみたが,うーん…… おっと,きょうはウテナ第三話を観なかったぞ.

本日の収穫:人生狂騒曲, カーディフ作品集, マトリクス

 話 (シアター松田オーナーや近藤大魔王など) には聞いていた「行列」が 1,580 円ということで,これなら一本持っていてもいいかと思っておったところなので,佳い機会でもあるし購入する.まぁ,基本的にこんな「ノ〜テンハイラ」系は買わない観ないんだけど,『ビバリーヒルズ・コップ I』衝動買いみたいなことも,「たまには」あるわけだわさ.

本日の収穫:観物

  1. Monty Python "Monty Python's The Meaning of Life", ソニー・ピクチャーズエンタテイメント, SUD-31196, 1983, 2000
  2. Jack Cardiff "Works", Vivaldi Four Seasons, Delius Orchestral Works 東芝 EMI, TOBW 3519, 2000
  3. "Matrix" ワーナー・ホーム・ビデオ, DL-WB 17737, 1999

 『マトリクス』は DVD-ROM 版とからしいが, Win 版のみとか.こんな屈辱的なアプリケーション,誰が実行するものか,バカモノめが.『人生狂騒曲』,わははははははははははははははは,とうとう出たぞ! わはははははははははははははは. 1983 年カンヌ映画祭審査員特別賞を受賞した名作である! LD を買い逃していたワタシには朗報である! これはシアター松田上映会でも使えるかも知れない.少なくとも近藤大魔王にはウケるだろうな.

 ジャック・カーディフの作品集は November 26, 2000 にシアター松田で雑誌上で見つけていたヤツ.リリースは Aug 9, 2000 である.ふほほほほ.やりおるの〜,東芝 EMI.ただし,お値段は税込み 5,040 円と,ちょい高め.ヴィヴァルディなんて要らないんですけど.んで,肝心要のディーリアスだが,中身は,というか,曲目は LD 版 東芝 EMI, TOLW-3612, 1991 と同じ.だがお値段は後者が税込み 6,000 円だったので,かなりお安くなった,ように見えるが,ヴィヴァルディなんぞおそらく一度しか観ないだろうと思われるので,体感 (脳感?) そんなに安くない.あとさぁ,オペラ映画『村のロミオとジュリエット』も出して欲しいですなぁ.

 ちなみに,ジャック・カーディフは「あらゆる時代を通じて最高の撮影監督」とか「色彩の魔術師」とか呼ばれているそうな.まぁ,基本的に「イメージビデオ」なんですけどね.演奏はバルビローリとビーチャムだから文句のつけようはないです.

2000年12月23日土曜日

本日の収穫:The Seven Dogs’ War

本日の収穫:観物

  1. 押井守 "The Seven Dogs' War", 監督全集【劇場アニメ編】 バンダイビジュアル, BELL-942, 1996

 だいたいが『迷宮物件 File 538』を観たかったのだ.確かに『迷宮物件 File 538』単発も出品されていたが,これがバカ高い.どうせならこっちの方がエエわいな.とりあえず「観たい」ので,別にオリジナル云々にはこだわらないし.まぁ『天たま』は ダブッちゃった けどさ.

 キネマ旬報 ,1996 No. 1204, 臨時増刊 10 月 26 日号,「押井守全仕事」号表四の広告によると, 1996 年 10 月 25 日発売で,一年間の期間限定商品.カラー / 616 min / CLV 6 枚組.

  1. "うる星やつら オンリー・ユー", ノーカット版, 1983
  2. "うる星やつら ビューティフル・ドリーマー", 1984
  3. "機動警察パトレイバー劇場版", 1989
  4. "機動警察パトレイバー 2 the Movie", 1993
  5. "Maroko 麿子", 1990
  6. "天使のたまご", 1985
  7. "迷宮物件 File 538", 1987

 オマケがけっこう付いている.

  1. 樋上晴彦コンセプチュアル Photo-CD "The Dog's Eye"
  2. 川井憲次スペシャル Music-CD "The Dog's Ear" (新曲 + 未収録曲)
  3. ブックレット 24 ページ

 なんてところだが,いちばんのオマケは「すべて,ニュープリント,ニューマスタリング」かつ『Maroko 麿子』以外はビスタサイズっちゅーことだろうか.と言っても,おれが劇場で観たことあるのは『Beautiful Dreamer』だけ (もしかしたら『Only You』も劇場で観てるかも知れんが),レンタル等で観たのは『天使のたまご』と『迷宮物件 File 538』,『Only You』ぐらいで,この 4 本はどこが違うんか判らんかった (笑).ただ,レンタル・ビデオでは『天たま』と『迷宮物件』はモノラルだったような記憶がある.『天たま』 徳間コミュニケーションズ, 88LX-6, も,音は疑似ステだし.

 ブックレットによると, "Beautiful Dreamer" の LD は一度 (1992 年 4 月) に再発されているらしい.おれの持ってるの (東宝, TLL 2001) とは,ジャケットの絵柄が違う.

 ところで,なぜか DVD リリース予定のない "Beautiful Dreamer" だが (1, 3, 4 は出てるのに,なぜ?),米盤が存在する.

  • Urusei Yatsura Movie 2"Beautiful Dreamer", U. S. Manga Corps, USMD 1728, ISBN1-56219-728-2

 リージョン・フリーで英日二カ国語収録なのは佳いが,これ,「欠陥商品以前」である.画面右上にときたま黒い丸が出るのは,まぁ佳しとしよう.問題はだな,こいつ, エンディング・クレジット (と背景) をばっさりカットしてあるのだ.松谷祐子のテーマ曲は鳴っているのだが,ここで映し出されるのは米版のクレジットなのだ.当然背景の友引高校の俯瞰図は出てこない.最後の校舎の遠景が出てきて,ようやく完結する (というか,新たに始まる) というのに,これではブチ壊しである.まったく,ヤンキーのやることっつったら,もうしょうがねぇな.誰かまともなヤツはいなかったのかよ.

2000年12月18日月曜日

本日の収穫:銀河鉄道の夜

本日の収穫:観物

  1. 杉井ギサブロー, ますむらひろし, 別役実, 細野晴臣, "銀河鉄道の夜", パイオニア LDC, PILA-7058, 1996

 1985 年作品.劇場で 6 回 (12 回?) は観た作品である.まぁ,どれだけ探したことか.ちなみに,本 LD はワイド版.リリースされたのは 1996 年 9 月 21 日? やっぱ,これはエエわ.ワタシ的にはベスト・アニメだね (っつーほど観てないけど).そりゃ『Beautiful Dreamer』もこれと並ぶけど (というか,シナリオというかストーリーというか,そっち方面ではこれに勝てるものはない.ただし,音楽と絵は,ワタシ的にはランクはずっと落ちる),脚本,音楽,絵まで含めると,こっちが勝つもんな.でも,やっぱ「かほる」と「た〜ちゃん」のあだち充的な絵は気になるけど.

 当時から気になっていた,カンパネルラとの離別のシーン,記憶では,

  1. カンパネルラが背を向けて歩み去っていく,
  2. カンパネルラがこっちを向いたまま小さくなっていく,

の 2 パターンあったが,この LD では 1) のパターン.

 脚本は別役実で,これを観てから別役戯曲作品をいろいろ勝って読んでみるはめになったという.その絡みで別役童話や別役エッセイにも手を出す.とにかくこの人の本は面白い.言葉に酔えるというか,言葉の変容過程が見える.ほとんど原作通りで,むしろ台詞は削る方向なのだが,唯一「盲目の無線技師」のエピソードだけは追加もの.この老いた無線技師は,死者の声を聴き取る人なんだが,やっぱ『街と飛行船』の無線技師と無関係ではないんだろうな.他に,あちこちにばらまかれている,原作にはない「死の予兆」はけっこう目立つ.割りと赤裸々に語られるので,余計に目立つことになる.

 細野晴臣の音楽だが,サントラ盤 (?) も持っているが,ワタシ的にはほとんど屑しかないアニメ音楽 CD の中で,『Lum the Forever』と並び稀有な例外.今でもときたま聴く.さすがに DX のサウンドは,今聴くと些か古いが.

 オブザーバ (?) のような立場で天沢退二郎が絡んでいるらしく,クレジットに名前が出てくる.信頼度アップ.

 原案のますむらひろしのコミックには,最終稿篇とブルカニロ篇の 2 種類があって,映画は最終稿篇に添っているんだけれども,ブルカニロ博士の方もなかなか捨て難い味がある.

 声では,田中 (藤波竜之介) 真弓と常田富士男が大活躍.イメージソングを歌っていた中原香織も「かほる」役で出てるんだけど,なんか老けた声だな.あと,戦メリーにも出てた金田龍之介という名前が.

 もちろん,宮澤賢治の原作 (最低でも最終稿) も必読だが,

  1. ますむらひろし, "イーハトーブ乱入記" ちくま新書, 1998, ISBN4-480-05756-0
  2. 入沢康雄, 天沢退二郎, "討議『銀河鉄道の夜』とは何か" 青土社, 1976, 1990, ISBN4-7917-5077-2

を読んでおくと,もっと面白い.

 絵というか背景の街並みはスペインかイタリアの田舎街のようなイメージ. オリバー・サックス, "火星の人類学者", 早川書房, 1997, ISBN4-15-208071-X, に出てくる,「夢の風景」画家フランコ・マニャーニ描くところのポンティトみたいな感じ.ひじょうにノスタルジックなイメージを掻き立てる.

2000年12月13日水曜日

森高千里のバック・バンドに河野伸

 何の気なしに 森高千里 "古今東西" 鬼が出るが蛇が出るかツアー, ワーナー・パイオニア, WPLL-8122, 1991, を掛けていて仰天.クレジットに「キーボード,ギター 河野伸」と出てくる.え”,この河野伸って,もしかしてあの河野伸なんかいな? と思って,全編通して観るも,当然のごとく,森高の映像にバックバンド (Janet Jacksons) のメンバーなどほとんど出てこない (笑).うーみゅ,このまま謎で終わるのかと思っておったら,最後にメンバー紹介があって,やっと確認できた.やっぱ, あの河野伸 さんやがな〜〜〜!

Janet Jacksons

  • 松尾弘良 : gtr
  • 吉岡誠 : drms
  • 横山雅文 : bs
  • 河野伸 : kbds, gtr
  • 前嶋康明 : kbds

 Spanks の前は,こんなこともやってたんですね〜 (この LD は 1991 年のやつ.同年か前年の中野サンプラザでのライヴ.ツアーの追加公演だったとか).

 ちなみに, Spank Happy は 「裏ドリカム」とか「暗黒ドリカム」 とか言われていたトリオ (原緑,菊地成孔,河野伸) で,あたしゃ大好きなんでございます.捻りまくりった歌詞 (絶対に裏の意味がある),一聴耳に優しいが,実はとんでもなく癖のある凝りまくったサウンド (変拍子含む),脳天唐竹割りの超高域のヴォーカル,豪華なバックのメンツ (ティポグラフィカからグラウンド・ゼロまで!),しかもそれでいて超ポップ! なんでこれが売れねぇ (売れなかった) のかな〜?

 LD の A 面 1 曲目は『鬼たいじ』という曲だが,これの替え歌『蟲 (バグ) たいじ』を作って会社 (旧広島大千田町キャンパスの裏手に在った) で歌っていたのも遠い昔の話ではある.

 余談:『鬼たいじ』は,なかなかに悲壮な歌である.だって「桃太郎がいないから」,わたしが犬と猿と雉を連れて鬼退治に出かけるというんだぜ.鬼を退治できるのは,桃太郎みたいに状況の外にいるヤツでないとダメなのは明白.それにも関わらず退治しに行かにゃならんわけで,そりゃ「たいへんだ」.負けると判って「タチムカウ」ですな.そう,再び帰ることはないのだ.あと,『夜の煙突』もヘンな歌だ.お仕事が終わったあとの楽しみは「ポッケに隠れている君とデート」っつーんだけど,この「君」ってなに? どうも,あまりエエものには思えないんだけど.執拗に繰り返されるリフレインの「梯子を登る途中で振り返ると君の家の灯が見える」も意味有り気だ.この「梯子」は当然「夜の煙突」に掛かっているんだけれど,この煙突の天辺は何処に続いているのか? そりゃ,天に続いているに決まってるぢゃん.だから,これは天国への階段なのだ.振り返って君の家の灯が見えるとき,「ぼく」は現世からあの世への分岐点または峠を越しつつあるということになる.

2000年12月12日火曜日

本日の収穫:天使のたまご LD

本日の収穫:観物

  1. 押井守 "天使のたまご", 徳間コミュニケーションズ, 88LX-6, ?

 某オークションでの戦利品. August 11, 2000 の CD 菅野由弘 水に棲む, 天使のたまご音楽編, 徳間ジャパン, TKCA-71938, 2000, に引き続き,ようやく本編を入手.はふぅ.

2000年12月9日土曜日

本日の収穫:グラゴル・ミサ, タラス・ブーリバ, カルミナ・ブラーナ, 尼僧ヨ アンナ

本日の収穫:観物

  1. Janáček "Glagolitic Mass, Taras Bulba" Benackova, Drobkova, Kundlak, Kopcak, Noumann, BMG, 09026-61165-6, 1986, 1987
  2. Orff "Carmina Burana" Battle, Ropardo, Allen, 小澤征爾, PH, PHLP-9041, 1990, 1996
  3. "Matka Joanna od Aniolow (尼僧ヨアンナ)" オーマガトキ, OML-2038S, ?

 すべて LD だが,この「先がない」 LD をぽつぽつ買ってるんけど,どーなるんでしょうねぇ,まったく.予備のプレイヤーも手配しておいた方が佳いのかな〜? いずれはデジタル保存する手段を考えねばなりませんね.

 ノイマンの『グラゴル・ミサ』と『タラス・ブーリバ』のカップリングは輸入盤で,えらく安価かった.お国もののライヴである.

 小澤の『カルミナ・ブラーナ』だが,テンポ揺れすぎ (速い部分が速すぎる).ただし,たいそう元気なのは佳い.独唱陣はおおむね健闘してる.アレンさんは可もなく不可もなく.テナーのフランク・ロパードさんはファルセットにもめげず大健闘.だが,やっぱキャスリーン・バトルさんとは相性最悪.つまり,嫌い.こういうズリ上がり系のソプラノはもっとも苦手とするところ.なんで,すぅっとまともな音程に入ってくれないのかね.それから,『カルミナ・ブラーナ』はイタロのオペラぢゃありませんよ,バトルさん. CD (小澤の新しいやつ) ではソプラノはグルベローヴァだったんだよな,確か.こちらは 1989 年大晦日のベルリンでのライヴ.ちなみに合唱で日本の関屋晋率いる晋友会合唱団が大挙して参加.人気商売とは言え大晦日の夜遅くまでお仕事とは,ご苦労さまです.

 やはり買ってしまった『尼僧ヨアンナ』,原作はヤロスラフ・イワシュキェヴィチ. 1961 年のポーランド映画でモノクロ.同年のカンヌ国際映画祭審査員特別賞を受賞しているとのこと.うーむ,恒文社の「東欧の文学」シリーズ (カザンサキスの『その男ゾルバ』とかカリンティの『エペペ』とかが入ってる叢書ね) に入ってたかな〜? ちなみに,オカルトというか「悪魔憑き」をネタにした映画である.が,『エクソシスト』なんぞを連想しないように.

2000年12月5日火曜日

本日の収穫:ショルティのフィガロの結婚 at オペラ座, 1980

 たまたまドリームライフ本拠地に在庫があるのを確認したので,中古探しを中止して新品を発注していたのが届く.む,すでに DVD 持ってるのに,何故また LD を,だって? ちっちっち.そんなことではポップさんファンとは言えませんぜ.

本日の収穫:観物

  1. Mozart "Le Nozze di Figaro" Bacquier, Janowitz, Stade, Popp, Moll, Solti, Dreamlife DMLB-29, 1992

 演奏自体は 1980 年 7 月 14 日,パリ・オペラ座.で,ポップさんとヤノヴィッツさんは,この二ヶ月後,ベーム率いるウィーン国立歌劇場引越し公演で伝説的な名演を披露することになる.

2000年12月3日日曜日

本日の収穫:クライバーのラ・ボエーム at スカラ座, 1979

本日の収穫:観物

  1. Puccini "La Bohème" Cotrubas, Pavarotti, Popp, Saccomani, Nesterenko, Kleiber, Zeffirelli, Bel Canto Society BCS-0699, 1999

 ソースはたぶん Opera Video 101 と同じ.だが,音質画質ともに格段に向上.もっともかなり盛大なヒス・ノイズとか入ってるし,お世辞にもコマーシャル・レベルとは言えないが,ずっと観やすく聴きやすくなった.ポップさんのムゼッタは第二幕から登場するが,いきなり真っ赤な衣裳で目に付く.声の輪郭のせいでアンサンブルの中でもすぐ判る.主役のコトルバス姉さんを喰ってるような気がせんでもないが.しかしながら,姉さんの名誉のために付け加えておけば,姉さんがスカラ座で『椿姫』のヴィオレッタでデビューしたときは,カラスの代役の代役だったそうで,このときに凄い伝説を作っている…… ヴィスコンティの『椿姫』でシーズン幕開けを飾るはずの初日 (月曜) の 3 日前 (金曜) にマリア・カラスも代役も病欠で歌えなくなり,困りきったスカラ座はグラインドボーン近郊のマダム・コトルバスの家に電話を入れた.

しかし彼女はロンドンにショッピングに出かけており,彼女の夫は風呂に入っていたので一回目の電話に出損ねてしまった.それでもついに,どうやら話が通じ,コトルバス氏はスーツケースを詰め,中に『椿姫』のスコアをつっこんで,急ぎロンドンに向かった.

 ロンドンで落ち会った二人は,ミラノ行きの最終便の出発時刻ぎりぎりに,ヒースロー空港に到着したが,この最終便が,霧のため,欠航となってしまった.翌朝,つまり土曜の朝,霧はいよいよ深まり,ヒースローを発つことになっている便のすべてが欠航の止むなきに至った.二人は,引き続き空港近くのホテルに待機した.日曜の朝が明けた.ヒースローの霧は晴れたが,今度はミラノのリナーテ空港がすっぽり霧に包まれてしまった.

 両方の空港が共に晴れ上がったのは,月曜日,上演の当日になってからだった.二人がようやくミラノに到着すると,空港には,パトカーまで含んだ,ものものしい自動車行列が待ち受けていた.先頭の車には,ミラノ市長,スカラ座総裁ギリンゲッリ,だいぶ気の立っているようすのヴィスコンティらが乗り込んでいた.一行は,がらすきの道路をひた走った (わざわざ通行規制がしかれていたのである).一回きり,それも難しい箇所だけのリハーサルがすむと,マダム・コトルバスは衣装をつけ,そのまま一分の休憩もなしに舞台に立った.そして, 24 回のカーテンコールを受けたのである.

ヒュー・ヴィッカーズ,井口百合香 訳『珍談奇談オペラとっておきの話』 音楽之友社, 1982, ISBN4-276-35044-1, pp.120-121.

 やっぱ.『ボエーム』はコンパクトで佳いねぇ.ところで,カラヤンの『ボエーム』の LD (パヴァロッティとフレーニのやつ) を持ってるつもりだったが,今探すと,ない.ううみゅ.あの映像の記憶ははたしてどこから? もしかして,この記憶はおれの記憶じゃない?