「いい娘でござんしょう,ねぇ? 玉三郎そっくりだ」 © 髪結新三
「上が十両,下が五両,十両に五両で十五両,いいな,とっときな/わかったな,鰹 は 半 分 も ら っ た よ!」 © 家主 長兵衛
舞台設定は1726年(亨保11年)の,白子屋事件日本橋新材木町の材木商白子屋庄三郎の娘の”お熊”と手代の”忠七”、妻の”常”らが密通および毒殺未遂の罪で処刑された事件が起こった。
をベースにした人形浄瑠璃.なんだが,河竹黙阿弥版の『梅雨小袖昔八丈』は明治6年初演ということで,ちょいとびっくりした.うぇ〜,日本史は習ってたはずだけどな〜 orz.いや〜,それにしても,めっさオモロカッた.
- 古典芸能というよりオペラの世界.ドラマ・ジョコーソとかのアレ.
- 大衆演劇には,もっと近い.長谷川伸なんてすぐそこにある.渡り台詞とかは,確かなかったと思うけど,見栄の切り方なんか,井上ひさし『雪やこんこん』そっくりじゃんか (いや,逆なんだろうけど).
- タイトルに『昔八丈』とあるのに,主人公は黄八丈を着ている娘ではない.
- 白子屋手代の忠七は,その名にも関わらず不忠者.
- 新三は髪結から博労にジョブ・チェンジする.髪結ってのは,要するにボーマルシェが描いたフィガロと同じ立場.どちらも自分の店を持たず,客先で仕事をした.つまり,いろんな情報が集まってくるわけである.
- 「いい娘でござんしょう」の白子屋娘の名が,くまさん八っつぁんの「お熊」.これは実在の人物がそういう名であったからだけど.この4つぐらいは作者河竹黙阿弥の悪意がこもっとる?
- 顔役の弥太五郎源七は,大詰の深川閻魔堂橋で,立ち回りを演じて新三を斬殺する.この舞台では,立ち回りの途中,傘で応戦していた新三が匕首に持ち替え,左肩辺りを斬られたところで終わる.ブルックナーの版問題なんて軽く吹っ飛ぶような大胆極まりない原作改変 (笑).歌舞伎界にはムーティみたいな硬骨漢はおらんのか.
- 一方,お熊も殺人を犯し,忠七と心中しようとしてすったもんだの挙句,源七の件ともども大岡裁きとなる.実際は,
妻子の監督を怠り、世間を騒がした罪を問われた店主・庄三郎と、事件に加担した按摩の横山玄柳は江戸所払いとなり、下手人のきくは死罪、密通をそそのかした罪でひさは町中引廻しの上死罪、密通の罪で手代忠八は町中引廻しの上獄門、従犯のつねは遠島、主犯であるくまは密通と夫の殺害未遂という重罪を問われ町中引廻しの上獄門と仕置が下った。
という判決であったらしい. - 芝居の上では,新三,白子屋婿養子の又四郎がお熊に刺殺,その身代わりに善八の姪で下女のお菊が自害,新三の返り血を浴びた源七を咎めた佐賀町の居酒屋三右衛門夫婦の計五人が死ぬ.けっこう血腥い話なのである.ってか,リゴレットやマクベスよりも多いぞ.
1 to: 10 do: [:i | Transcript cr; show: i edoString] ==> ひい,ふう,みい,よう,いつ,むう.なな,やわ,ここ,とう,ときに新三……
-
序幕 白子屋見世先の場
老舗の材木問屋・白子屋は身代が傾き風前の灯 後家・お常は娘のお熊に持参金付きの婿を迎えようとする ところがお熊は手代の忠七と恋仲で……
(忠七が不忠七に変貌する場面.もちろん新三が唆したわけだが.あと,玉三郎がデカい.髷が鴨居にぶつかりそうだ) - 永代橋川端の場
(最初のほうで出てくる駕籠にお熊が乗ってたのかな.本性を顕した新三が忠七を傘で殴り倒して逃走する.傘尽くしの長台詞が有名) - 二幕目 富吉町新三内の場
(魚売新吉の小芝居がウケる.弥太五郎源七が交渉にやってくるが失敗する.新三が源七を嬲る長台詞がある.アンサンブルが見事) - 元の新三内の場
白子屋へ縁談を持ち込んだ車力・善八は家主の長兵衛に助けを求める 長兵衛は三十両あればお熊を取り戻せるだろうと請け負い新三の家へやってきて……
(家主:中村富十郎大活躍の場.繰り返しはミニマルの基本です (笑)) - 大詰 深川閻魔堂橋の場
- 白子屋手代 忠七 : 中村芝翫 (七代目,成駒屋)
- 白子屋娘 お熊 :坂東玉三郎 (五代目,大和屋)
- 髪結新三 : 中村勘三郎 (十八代目,中村屋)
- 紙屋丁稚 長松 : 中村児太郎 (六代目,成駒屋)
- 弥太五郎源七 : 片岡仁左衛門 (十五代目,松嶋屋)
- 魚売新吉 : 中村源左衛門 (二代目,中村屋)
- 下剃 勝奴 : 市川染五郎 (七代目,高麗屋)
- 車力 善八 :片岡亀蔵 (四代目,松島屋)
- 家主女房 お角 : 市村鶴蔵 (初代?,橘屋)
- 家主 長兵衛 : 中村富十郎 (五代目、天王寺屋)
- 2000年4月歌舞伎座,公演製作:松竹株式会社
- 2012年12月9日 十八世中村勘三郎の至芸 河竹黙阿弥『梅雨小袖昔八丈』
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