ぐる式 (貳) より引っ越し作業中.未完.
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2009年5月26日火曜日

いのうえ meets シェイクスピア『リチャード三世』 2009

2009 年 5 月 23 日

いのうえmeetsシェイクスピア「リチャード三世」 | WOWOWオンライン赤坂ACTシアター『パルコ・プロデュース公演 いのうえmeetsシェイクスピア リチャード三世』|TBS

「馬を貸せ,馬を.馬はないか! 褒美にこの国をやるぞ!」 © リチャード三世.有名なこの台詞,二回連続して出てくるのね (A horse! a horse! my kingdom for a horse!).

二年ほど前に野村萬斎版の『国盗人』=リチャード三世を録画して観たが,今度は劇団☆新感線の いのうえひでのり 版.そちらで左大臣=ヘイスティングス卿を演じていた大森博史が,今度は久秀=バッキンガム公をやっとります.のはエエんだが,録画機の方の入力ライン再設定をし忘れてて,頭の 25 分ほどが欠けてしまったという思い掛けないミス発生.なんという間抜け振りか orz.

エリザベス@久世星佳,マーガレット@銀粉蝶,セシリー・ネヴィル@三田和代の三人は凄ぇ迫力だな.このテルツェットは,まるでマクベスの魔女かグライアイだ (笑).男優陣もオモロかったが,肝心要のリチャード三世がどうもな.なんか最後まで前半はよそ行きの感じを拭えず.ほとんどマラソンかトライアスロンかみたいなこの芝居で,主人公がコレだとキツいよな〜.そのせいか,約三時間のこの芝居 (録画に成功してたら 200 分ぐらいになるはず) が,ヤケに長く感じられた.おっかしいな〜,古田新太ってこんなもんじゃないハズだと思うんだが.子役の二人は……,なんとかならんかったんか (笑).若い俳優を使った方が佳かったかも.テューダー朝になってからエリザベスは王妃の母となったにも関わらず不幸な晩年を送ったそうである.セシリーは宗教に走ったそうだ.この二人はリチャードの死後 10 年以内に相継いで亡くなっている.マーガレットはリチャードの死の三年前にアンジューで亡くなっているそうだ.あのテルツェットは史実ではあり得なかったのかも知れん.

不興を買ったバッキンガムが反乱を起こし,ヘンリー・テューダーが人を集め始める.その後にテルツェットが入って,リチャードが出陣する.ここからラストまでおよそ 45 分以上あるんだが,この辺りからずっと,ごく低い帯域でずっとノイズ的 SE が鳴っている.これがクライマクス曲線のベースになってる感じ.

  • リチャード三世:古田新太
  • アン (エドワード王太子寡婦,自殺):安田成美
  • ジョージ・スタンリー卿 (リッチモンド伯の義父):榎木孝明
  • バッキンガム公 (リチャードの腹心,のちに謀反) *:大森博史
  • 故ヨーク公夫人セシリー・ネヴィル (リチャードらの母):三田和代
  • マーガレット (ヘンリー六世寡婦,フランス・ヴァロア=アンジュー家出身):銀粉蝶
  • エリザベス (エドワード四世妃,ヨーク公リチャードの母):久世星佳
  • リヴァース伯 (マーガレット & 皇太子エドワードの側近) *:天宮良
  • ヘイスティングス卿 (侍従長,エリザベスの保護者) *:山本亨
  • ケイツビー (リチャードの部下):増沢望
  • ラトクリフ (リチャードの部下):西川忠志
  • リッチモンド伯 (ヘンリー・テューダー.のちのヘンリー七世):川久保拓司
  • ドーセット侯 (マーガレットの息子,リッチモンド伯に合流):森本亮治
  • イーリーの司教 (ジョン・モートン.リッチモンド伯に合流) 他:逆木圭一郎
  • 刺客他:河野まさと
  • ロンドン市長他:村木仁
  • ヨークの大司教他:礒野慎吾
  • 使者他:吉田メタル
  • ジェイムズ・ティレル (暗殺者) 他:川原正嗣
  • 兵士他:藤家剛
  • エリザベス (黙役? 娘役,エドワード四世の娘):山本映美莉
  • 皇太子エドワード (子役.エドワード四世の皇太子) *:田中賢斗
  • ヨーク公リチャード (子役.エドワード四世の息子) *:中村咲哉
  • エドワード四世 (イングランド王,リチャードの長兄,病死?):久保酎吉
  • クラレンス公ジョージ (リチャードの次兄) *:若松武史
  • 演出:いのうえひでのり
  • 翻訳:三神勲
  • 音楽:岡崎司
  • 美術:池田ともゆき
  • 照明:原田保
  • 衣裳:前田文子
  • ヘアメイク:宮内宏明
  • 映像:上田大樹
  • 小道具:高橋岳蔵
  • 音響:井上哲司
  • 音効:末谷あずさ
  • アクション指導:川原正嗣,藤家剛
  • 特殊効果:南義明
  • 演出助手:菅野将機
  • 舞台監督:芳谷研,吉見裕司
  • テーマ曲歌唱:平田美和子
  • ムービングプログラマ:古枝康幸
  • 企画・製作:株式会社パルコ
  • 製作: WOWOW
  • 2009 年 1 月 29 日,赤坂 Act シアター

* はリチャードに殺された人物.テーマ曲歌唱,確かにヴォカリーズで歌っとります.で,「ムービングプログラマ」って何をやるの?

「あんな人殺しをするやつと思えば,この腹の中にいるうちに絞め殺して,この世に出てくる邪魔をしてくれたものを」 © 故ヨーク公夫人セシリー・ネヴィル.

やっぱこの後解毒剤としてテイおばさまの『時の娘』読んでしまうだよ (笑).

2009 年 7 月 20 日,再放送

およそ二ヶ月の間隔をおいて念願の再放送.善哉善哉. 松岡訳 を片手に見てたんだが,ずいぶんと細かくカットしてあるんだな.ノー・カットだと上演時間はけっこう延びるんだろか.二回目視聴はずいぶん短く感じられた (をい!).それに,とても面白い.前はちょっとどうよと思ってた古田新太@リチャード三世も佳かったっす.ほぼ三時間強ほとんど出ずっ張りな上に最後の最後で大立ち回り.リッチモンドの影武者を五人まで倒したそうな.ほとんどヘルデン・テナーっつ〜か,ジークフリート? 全編全速力ハイ・パワーってのは無謀です.でも,アレだ,第 1 幕 2 場の口説きの場では,リチャードのプレイボーイ振りよりもアンの方のへちょさ具合の方が強調されてるような.アン以外の女三傑,「マクベスの魔女かグライアイ」ってぇのは力不足.あくまで地上の人だもんな.

この世界は「イングランド」という名の地底国家.モニターの多用『ブレードランナー』的なイメージによるもので,監視されている世界なんだそうである.あの衣装は 60 年代スウィンギング・ロンドンだとか.グランジかと思いましたよ (笑).リチャードの「独白」は口述筆記みたいなもん.そういや,ネットブックみたいな小さなノートを持っている.頭に 2 分半ほど映像付きナレーションで「前回までのあらすじ」.これって,舞台のモニタに映されていたんかな.ついで,本編前の戦闘の様子.とくにヘンリー六世とその皇太子エドワードの殺害現場.二つ合わせて 5 分弱ほどもある.長いっす.第 5 幕 3 場の亡霊の呪言攻撃八連制覇は,対リチャードのみで,対リッチモンドへの「勝利の約束」はすべてカット.リヴァーズはエリザベスの兄だったんですか.エリザベスの長子,ドーセット侯の兄かと思ってました.ドーセット侯の弟グレイ卿,トマス・ヴォーンはドーセット侯と同じ時に処刑されてるんだが,この二人の分はドーセット侯が背負う.

2008年12月24日水曜日

原田眞人『魍魎の匣』 2007

「チャップリンもフラメンコも起源は陰陽道」 © 中禅寺秋彦.をいをい.

魍魎の匣【もうりょうのはこ】

京極堂シリーズは確か『絡新婦の理』まではノベルズで読んでたはずだと思ったけど,『塗仏の宴』まで読んでいたらしい.少なくとも買った 形跡 がある.今となっちゃ,さっぱり覚えておりませんがね.かと言って,あの体積じゃ読みなおす気力もないけど (笑).というわけで,映画版である,というのはウソである.だいたいが原作と映画はそもそもが別物であって (笑).この場合,京極夏彦,堤真一,魍魎の匣というキーワードは単なるトリガに過ぎない.そういや,テレビ・アニメ・シリーズもやってるけど,日テレなんで見てない・録ってない.

堤真一,阿部寛,宮迫博之,椎名桔平,田中麗奈,黒木瞳という善玉側主役級も,宮藤官九郎,柄本明という相手方もけっこうハマってて面白い.元からアクが強い「マンガ」的なキャラクターだからというのを差し引いても,けっこう再現度は高いんではないか.木場はもちっとガタいがでかい体育会系だと思ってたが,まぁこれもエエかも.関口の凡庸っぽさも佳く出てると思う (笑).意外に田中麗奈が佳い.柄本明がちょっとふっくらしてて判らんかった.三島演劇を除けば,野田芝居で元気な役しか見たことがなかった堤真一,けっこうハマり役かも.元ネタがバラバラ殺人事件なんで,まぁショッキングなシーンがあるけど,それ以前にシーケンスの繋がりが佳く判らん.一つ一つのシーケンスは明確なのに,それを繋げて 132 分にすると佳く判らなくなる.だいたい,木場の拳銃一発で箱舘が崩壊するわけないよな.

あまつかみのみおや教えみことのり賜くもし痛むところあらば……この葦のうつぼなる深秘の御筥をしてソテナテイリサニタチスイイメコロシテマスしふるフルゆらふらシフルふる……

それはともかく,『Texhnolyze』ラストの蘭の姿を実写で見せられると,インパクト大きいですな.なんつ〜か,乱歩風味というか,『占星術殺人事件』?

  • 榎木津礼二郎:阿部寛
  • 関口巽:椎名桔平
  • 中禅寺秋彦:堤真一
  • 木場修太郎:宮迫博之
  • 鳥口守彦:マギー
  • 青木文蔵:堀部圭亮
  • 中禅寺敦子:田中麗奈
  • 柚木加菜子:寺島咲
  • 柚木陽子:黒木瞳
  • 美馬坂幸四郎:柄本明
  • 久保竣公:宮藤官九郎
  • 原作:京極夏彦
  • 監督・脚本:原田眞人
  • 音楽:村松崇継

ED クレジットでキャストが終わった辺りで音楽が一変.東京事変の『金魚の箱』という曲.意図が判らん.

でさ,『魍魎の匣』って,こんな話だったっけ? (笑)

寺田兵衛役に大森博史,ナイフの男役で植本潤が出とるのに気付かなかった! orz

2008年3月10日月曜日

オンシアター自由劇場『上海バンスキング』, 1982

「悪い夢見てるのよ」 © マドンナ.

初演は 1979 年.三十年前の話だ.舞台は昭和 11 (1936) 年・初夏〜昭和 20 年終戦後の上海.この時代はというとスウィングとかビッグ・バンドとか.まぁ「戦争と人間 ミュージシャン版」ということで想定される範囲内からハミ出ることはない.演奏は役者自身ということでちょっとおっかなびっくりだったんだが,とくに笹野高史のトランペットを筆頭に意外に健闘しているのに驚いた.相当練習したんだろうな〜.後年映画化もされているもよう.ただし,音楽劇とかミュージカルとか言われるそうだが,そりゃちょっと違うんでない? ジャズ芝居だとすると,ラジオ・ドラマになった筒井康隆の『ジャズ大名』の方がエエな.映画ではもっと凄いことになってるし.地震テロップがしつこいのも興を削ぐな〜 orz.

  • 正岡まどか (マドンナ) (vcl):吉田日出子
  • 波多野四郎 (シロー) (cl):藤川延也
  • 松本亘 (バクマツ) (trp):笹野高史
  • リリー:余貴美子
  • 白井中尉 (ts):大森博
  • 弘田真造:中村方隆
  • ガチャンコ・ラリー (trb):真名古敬二
  • 方:鶴田忍
  • 宮下 (as):小日向文世
  • レイモンド・コバチ (バンジョー):佐藤康治
  • シングリー田口 (as):大谷亮介
  • 王:小島紀子
  • 私服刑事:長内秀次
  • 木下:清川幸治
  • 中国将校:戸石充
  • ...
  • 作:斎藤憐
  • 演出・美術:串田和美
  • 音楽:越部信義
  • 振付:チャチャ遠藤
  • 照明:富松博幸
  • 音響:平林恒茂,長根実
  • 1982 年,銀座博品館劇場

吉田日出子は記憶どおりの「右の眼ですか,左の眼ですか」の人で噴いた.歌は上手い.

  1. セントルイス・ブルース (cl, trp)
  2. 貴方とならば (I'm following you) (vcl, trp, 劇中歌 vcl 無伴奏)
  3. ダイナ (vcl, trp)
  4. 暗い日曜日 (Sombre dimanche) (劇中歌 vcl 無伴奏)
  5. 月光値千金 (Get out and get under the moon) (劇中歌 vcl: マドンナとリリー, trp. cl)
  6. 海行かば
  7. エンディング (ウェルカム上海のインスト)
  8. ウェルカム上海

吉田日出子のヘア・スタイルや歌唱は,押井守『トーキング・ヘッド』の多美子に引き継がれることになる (笑).

この劇団には柄本明,高田純次,佐藤B作らが在籍しておったそうな.

2007年8月12日日曜日

野村萬斎『国盗人』 2007

国盗人

「世の中の下らぬ喜び一切を憎悪してやる.もはや悪党になるしかない」 © 悪三郎.えと,グロスター公リチャードとしての出典は「I am determined to prove a villain and hate the idle pleasures of these days.」か.

元ネタは『リチャード三世』.だが,蝉の声の中,客先中央奥から日傘の女 (白石加代子) がゆっくりとやって来て舞台に上がる.転がっている面一つ.能面ではなくて狂言面の 武悪 だと思うが佳く判らない.それをしげしげと覗き込んで「夏草やつはものどもが夢のあと」.これが召還の呪文となって,日傘女の眼前で繰り広げられる二時間 (たぶん大胆にカットしている) の大活劇.「人生は歩く影法師.哀れな役者」の芝居が終わると再び「夏草や」.面を置いて日傘を差し,来た方を逆に消えて行く.耐え難いほどに沸き起こる蝉の声.面が見せる=魅せる一幕の人間喜劇.う〜ん,『ドグラ・マグラ』だ (笑).舞台は意外に軽快で厭きない.久し振りに視た 白石加代子,老いたりとは言えさすがに怪物の名は伊達じゃぁありませんでしたねぇ.本編の主人公は悪三郎=リチャード三世ではあるけど,そちらでも四役こなすだけでなく,劇的なるものへの導入と解放も司るなど,タイトルは白石加代子『国盗人をめぐって』でもエエんでない? (笑)

  • 悪三郎 (白薔薇一家の三男[ヨーク家グロスター公リチャード]):野村萬斎
  • 善二郎 (白薔薇一家の次男[ヨーク家クラレンス公ジョージ リチャードの次兄]),右大臣[トーマス・スタンレー男爵],理智門[ランカスター家リッチモンド伯ヘンリー・テューダー]:今井朋彦
  • 左大臣[ウィリアム・ヘイスティングス卿 (初代ヘイスティングス・オヴ・ハンガーフォード男爵)]:大森博史
  • 杏 (赤薔薇の王子の妃[アン・ネヴィル 故エドワード王太子妃]),王妃 (白薔薇王・一郎の妻[エリザベス・ウッドヴィル イングランド王女、エドワードの妻]),政子 (先代赤薔薇王の妃[ヘンリー六世妃マーガレット・オブ・アンジュー]),皇太后 (悪三郎らの母[セシリー・ネヴィル ヨーク公リチャードの妻,リチャードらの母]):白石加代子
  • 久秀 (悪三郎の腹心[バッキンガム公 リチャードの腹心]):石田幸雄
  • 一郎 (白薔薇の王[ヨーク家エドワード四世 イングランド王、リチャードの長兄]),市長:山野史人
  • 太郎冠者:月崎晴夫
  • 他:小美濃利明,じゅんじゅん,すがぼん,坂根泰士,土山紘史,時田光洋,平原テツ,盛隆二,大城ケイ,大竹エえり,萩原もみぢ,黒川深雪,福留律子
  • 作:河合祥一郎
  • 演出:野村萬斎
  • 作調:田中傳左衛門
  • 美術:松井るみ
  • 衣裳:コシノジュンコ
  • 照明:笠原純
  • 音響:尾崎弘征
  • 技術監督:眞野純
  • 笛:福原友裕
  • 囃子:梅屋小三郎,古寺正憲
  • 2007 年 7 月 12 日,世田谷パブリックシアター

有名な台詞「A horse! a horse! my kingdom for a horse!」,これは「馬じゃ,馬じゃ! 馬を寄越せば国をくれてやる!」.お得意の洒落や地口も気付いただけで数カ所.以下は杏と悪三郎の最初のツー・ショットから.

  1.    忌まわしき地獄の手先,消え去るが佳い! 疎ましい鬼!
  2. 悪三郎 麗しき天女
  3.    お前ほど厭わしいものはない
  4. 悪三郎 お前ほど愛おしいものはない
  5.    消えておくれ
  6. 悪三郎 聴いておくりゃれ
  7.    お前の犯した悪行の数々
  8. 悪三郎 身共に掛けられし濡れ衣の数々
  9.    思い出すだにおぞましい
  10. 悪三郎 思い出さぬが望ましい
  11.    この怨み,必ず晴らしてやる
  12. 悪三郎 この汚名,必ず晴らしましょう
  13.    観念して地獄へ堕ちるが佳い
  14. 悪三郎 観念して身共と恋に落ちるが佳い

で,『リチャード三世』と来りゃミステリ・ファンにはやっぱ『時の娘』でしょう (笑).『リチャード三世』は (も) 持ってないので,久々に 再読

結城座

先月に開かれた Le 61e Festival d'Avignon に正式招聘された 結城座 が,人間と人形を混在させたジュネ Jean Genet の『屏風 (Les Paravents)』で オープニング・アクト

タイム・コードのベースがこちらでは「呼吸」であるのに対し,あちらでは「心拍」であるなど面白い話が聞けた.あと,寛永十二年旗揚げの伝統的人形劇団であるにも関わらず,人形遣いはその伝統の上に胡坐をかくことなく,必要とあらば禁じ手封じ手も連発するなど,柔軟なところもちゃんとあるのですな〜.