「哀れな若者よ,君は騙されている」 © ザラストロ.あんたが云うな,アンタが (笑).
The Magic Flute, :::: 魔笛 ::::, The Magic Flute (2006).いわゆるオペラ映画.ショウゲイト (旧東芝エンタテインメント) から今年の 1 月に PCBE-52728 として DVD リリースされている.
空からカメラが降りてくるとだだっ広い沃野に延びる長〜い塹壕.ヘルメットの形状で判るがイギリス兵士がわらわらわらわら.再び上がったカメラが蝶を追い掛けてず〜っとパンして行くとまた別の塹壕.そこから後方に抜けると何やら攻撃準備の様子.軍楽隊がいるが,ここでは吹奏楽器だけでなく,ちゃんと弦がいる,ヴァイオリンだけだが (笑).演奏しながら行進開始.後ろの大砲群から雲へパン・アップすると,わらわらと現れる複葉機群.あ〜,第一次大戦時なのか.突撃開始.爆着で上がる土煙で画面が暗転するところで序曲が終わる.約 7 分.第一幕冒頭の第一声が聞き慣れた台詞じゃない.あ〜,英語台本なのか.タミーノは若い兵士.ドラゴンの代わりに毒ガス.夜の女王の三人の侍女は看護婦か! (笑) お,パパゲーノも兵士の格好してるが,やっぱ笛持ってる.およそ 20 分ちょいで夜の女王のご登場.なんと戦車の上に仁王立ちでやって来る.思わず噴く.何ぢゃ,これは (笑).全曲演奏なので筋の変更はあり得ない.んで,設定を第一次大戦時に持って来る意味が判らない.ザラストロの舘に移動してからは,戦争中もクソもないんじゃないの.ウブで世間知らずが,アヤシ気な新興宗教ザラストロ教に入信した娘を連れ出してと母親に頼まれたが,うまいこと言いくるめられて逆に入信してしまうとか,そんな話だろ (笑).パパゲーノが鳴らす魔法のチャイムでモノスタトス一派が踊り出すとこなんざ,とんだギャグ・シーンだ.いったいどう考えたらタミーノの成功が殺戮を終わらせることになるのか,判りませんです.第二幕頭,戦没者墓碑銘には,英語,アラビア語,ロシア語に混じって,山本直人 享年十九歳,小林三郎 享年十九歳など. Joseph Innes Aged 19 と刻まれた墓が大写しになる.丘一面を埋め尽くす墓地.そういや,ぬめ〜っとしたカメラの動きが,なんとなくジュリアン・テンプルの ソレ を思い出させる.夜の女王の第二幕のアリアなんか,娘を説得するために風車に磷付にして空を飛び回る.凄過ぎです,何を考えてるのか判りません (笑).そういや,夜の女王一派の最後の襲撃で自滅しちゃうのも判らんな〜.この場面,夜の女王は空を飛べるはずなのに,一行が律儀に舘の壁をよじ登っているのも判らん.その後,窓から顔を出した女王に気付いたザラストロが近付いて来て手を差し出すのに,それを拒んで堕ちるのはもっと判らん.なんか,こう,夜の女王はザラストロの別れた妻か何かで,この二人がマッチ・ポンプやってるように見えるんだよな〜 (笑).最初は夜の女王側で登場する三人の童子がいつの間にかザラストロ一派の一員になってるのも謎だ (笑).第二幕のパパゲーノのアリアの最後で,差し渡し 10m 以上はありそうな巨大な唇が出て来るのもギャグだな.パパゲーノにとっては鳥=女らしいな (笑).しかしヒトが空を飛び回ってるのは,実写で見るとシュール極まりないな. ED クレジットの音楽は序曲をもう一回.
映画版ではいろいろ派手になってる,とくにコレはスペクタクルな映像になってるんだけど,それは長所なのか短所なのか. Peter Weigl の "A Village Romeo & Juliet" (マッケラスが降った ヤツ) は割と成功した例じゃないかと思うんだけど,どうだろう.あ〜,でもいちばん成功したのはケント・ナガノが振ったアニメ版『利口な牝狐の物語』かもね.
- Tamino : Joseph Kaiser
- Pamina : Amy Carson
- Sarastro : René Pape
- Queen of the Night : Lyubov Petrova
- Papageno : Benjamin Jay Davis
- Papagena : Silvia Moi / Liz Smith
- Monostatos : Tom Randle
- Priest : Ben Uttley
- First Lady : Teuta Koço
- Second Lady : Louise Callinan
- Third Lady : Kim-Marie Woodhouse
- First Officer : Rodney Clarke
- Second Officer : Charne Rochford
- First Armed Man : Peter Wedd
- Second Armed Man : Keel Watson
- Three Boys : William Dutton, Luke Lampard, Jamie Manton
- James Conlon / Chamber Orchestra of Europe
- Chris Foster / Choir Apollo Voices
- 監督・脚本: Kenneth Branagh
- 脚本: Stephen Fry
- 制作: Pierre-Olivier Bardet
- 製作総指揮: Stephen Wright
- 撮影監督: Roger Lanser
- プロダクション・デザイン: Tim Harvey
- 衣装デザイン: Christopher Oram
- ヘア & メイク・デザイン: Sarah Monzani
- 編集: Michael Parker
パーペおぢさんのザラストロはちょい軽いかなと思ったけど,何かハンス・ザックス的な悩めるリーダーみたいな雰囲気があって,なかなかエエかも.探してみたら,テンシュテットの 第九 (※) でポップさんと共演していた.ペトロヴァさんの夜の女王は速いパッセージでややキレが悪いが,予想より佳い.カイザー氏の青二才振りはお見事 (かも).ジェイムズ・コンロン指揮のヨーロッパ室内管弦楽団の演奏は,まぁ堅実といったところか.
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