ぐる式 (貳) より引っ越し作業中.未完.

2010年1月27日水曜日

武田泰淳:劇団四季『ひかりごけ』2009

「おら五助さ喰いたくはねぇ.んだが,あの肉はときどき喰いたくなるだ」 © 八蔵.

まぁ,劇団四季を (録画で) 見るのも初めてなんかな.原作読んでないです.すんません,お恥ずかしい.佐川一政の『霧の中』と唐十郎の佐川本は読んだけど,これは状況が異なるから比較はできんな.こちらは團伊玖磨がオペラ化してるらしいが,これも見てみたい.

初演は 1955 年だそうで,なんと半世紀前である.今回の録画は,その 54 年後.舞台は,え〜と広島現代美術館のインスタレーション空間みたいな感じ.無機的で殺菌されてるような.はたまた「キューブ」的で閉塞感に満ちた空間.奥に向かって細長いので,よけいに圧迫感がある.これが第一幕では洞窟,第二幕では法廷現場となる.第一幕の洞穴,社会から孤絶された場所.これはまず五助.これを船長と西川が喰う.喰わなかった八蔵が,次.これも船長と西川が喰う.そして西川だが,これは自殺しようとするのを船長が殺す.あとで判るが,船長は殺した西川を喰ったらしい.暗転後の第二幕,舞台装置はそのままで法廷の場面.まさに社会そのものの場所.前者が肉を喰う場なら,後者は精神を喰う場,ということか.第二幕に登場するのは船長のみ.裁判長,検事,弁護士は派手にエフェクトを掛けられた声のみ.エフェクトのデプスが何かに比例してるんだろか.

  • 船長:日下武史
  • 西川:中村匠
  • 八蔵;神保幸由
  • 五助:髙橋征郎
  • 裁判長 (声のみ):松宮五郎
  • 検事 (声のみ):広瀬明雄
  • 弁護士 (声のみ):立岡晃
  • 作:武田泰淳
  • 演出:浅利慶太
  • 装置:金森馨
  • 照明:吉井澄雄
  • 音楽:鎮守めぐみ
  • 美術監修:土屋茂昭
  • 製作・著作:劇団四季
  • 2009 年 4 月,自由劇場

実質 72 分とコンパクトでよろしい.が,正月早々 (放送は 1 月 8 日) 見る芝居ではないな.気付いた限りでは台詞カットあるいは不自然な繋ぎが一箇所.方言脚本,みなさん滑舌が佳過ぎてどうも違和感がある.音楽はけっこう地味だった. Test Dept とか鳴らしたらどうかな〜.ケージの打楽器音楽の方がエエかな.どうも,この原作は妙な構成になってるらしい (松岡正剛の千夜千冊『ひかりごけ』武田泰淳).芝居の方には原作にはあるらしいイントロ部分がない.やっぱ一度読まないとダメか.熊井啓監督が 1992 年に映画化してるけど,これも見といた方がエエんだろか.

第二幕で,誰にも船長の緑の光が見えない,ということは,中井英夫の「物見高い御見物衆」ということですか.ちなみに『虚無』の全構想が浮かんだのは 1955 年 1 月で,原作の発表はその前年.

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