本日の収穫:観物
- 杉井ギサブロー, ますむらひろし, 別役実, 細野晴臣, "銀河鉄道の夜", パイオニア LDC, PILA-7058, 1996
1985 年作品.劇場で 6 回 (12 回?) は観た作品である.まぁ,どれだけ探したことか.ちなみに,本 LD はワイド版.リリースされたのは 1996 年 9 月 21 日? やっぱ,これはエエわ.ワタシ的にはベスト・アニメだね (っつーほど観てないけど).そりゃ『Beautiful Dreamer』もこれと並ぶけど (というか,シナリオというかストーリーというか,そっち方面ではこれに勝てるものはない.ただし,音楽と絵は,ワタシ的にはランクはずっと落ちる),脚本,音楽,絵まで含めると,こっちが勝つもんな.でも,やっぱ「かほる」と「た〜ちゃん」のあだち充的な絵は気になるけど.
当時から気になっていた,カンパネルラとの離別のシーン,記憶では,
- カンパネルラが背を向けて歩み去っていく,
- カンパネルラがこっちを向いたまま小さくなっていく,
の 2 パターンあったが,この LD では 1) のパターン.
脚本は別役実で,これを観てから別役戯曲作品をいろいろ勝って読んでみるはめになったという.その絡みで別役童話や別役エッセイにも手を出す.とにかくこの人の本は面白い.言葉に酔えるというか,言葉の変容過程が見える.ほとんど原作通りで,むしろ台詞は削る方向なのだが,唯一「盲目の無線技師」のエピソードだけは追加もの.この老いた無線技師は,死者の声を聴き取る人なんだが,やっぱ『街と飛行船』の無線技師と無関係ではないんだろうな.他に,あちこちにばらまかれている,原作にはない「死の予兆」はけっこう目立つ.割りと赤裸々に語られるので,余計に目立つことになる.
細野晴臣の音楽だが,サントラ盤 (?) も持っているが,ワタシ的にはほとんど屑しかないアニメ音楽 CD の中で,『Lum the Forever』と並び稀有な例外.今でもときたま聴く.さすがに DX のサウンドは,今聴くと些か古いが.
オブザーバ (?) のような立場で天沢退二郎が絡んでいるらしく,クレジットに名前が出てくる.信頼度アップ.
原案のますむらひろしのコミックには,最終稿篇とブルカニロ篇の 2 種類があって,映画は最終稿篇に添っているんだけれども,ブルカニロ博士の方もなかなか捨て難い味がある.
声では,田中 (藤波竜之介) 真弓と常田富士男が大活躍.イメージソングを歌っていた中原香織も「かほる」役で出てるんだけど,なんか老けた声だな.あと,戦メリーにも出てた金田龍之介という名前が.
もちろん,宮澤賢治の原作 (最低でも最終稿) も必読だが,
- ますむらひろし, "イーハトーブ乱入記" ちくま新書, 1998, ISBN4-480-05756-0
- 入沢康雄, 天沢退二郎, "討議『銀河鉄道の夜』とは何か" 青土社, 1976, 1990, ISBN4-7917-5077-2
を読んでおくと,もっと面白い.
絵というか背景の街並みはスペインかイタリアの田舎街のようなイメージ. オリバー・サックス, "火星の人類学者", 早川書房, 1997, ISBN4-15-208071-X, に出てくる,「夢の風景」画家フランコ・マニャーニ描くところのポンティトみたいな感じ.ひじょうにノスタルジックなイメージを掻き立てる.
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