話は変わるが NHK 教育の,子ども用というか中学生とか,それくらいのを対象にした番組ってバカにならんなぁ.たまたま 恩田陸 原作の『六番目の小夜子』を二日連続計 12 話 6 時間を観たが,これが面白いんだわ.原作は新潮文庫かどっかから出てたし,某氏のために代わって購入したこともあったのだが,自分では読んだことがなかった.ただし,某商用ネットワークの推理小説フォーラムの一部で評判になっていたことは知っていた.表紙の絵柄も「LaLa」系というか「花とゆめ」系のコミック調で,いささか恥ずかしいもんだったし (だから,創元推理文庫版のアイルズ『レディに捧げる殺人物語』のカヴァーは名香智子が描いてて苦手なのだった.わはは).
で,中身を読んだこともないくせに,勝手にしょうもないサイコ・サスペンスものだと思い込んで,手に取ってもみなかったのだが (中身をパラパラしたことすらないという意味),この映像化,これは佳いんだわ.もちろん推理サスペンスとしてはしょうもないんだが,法月綸太郎『密閉教室』とかに代表される,いわゆる学園物というか,それ系,モートン・ルー『ザ・ウェイヴ』新樹社とかの「集団的暴力のシミュレーションがリアルに変貌していく過程」*1 とかに繋がるのだ.もちろん,『オルレアンのうわさ』*2 的状況として展開していくのである.
- ハイスクールの歴史の授業で実際に起こった事件.ナチスによる大虐殺がなぜ起こったかという生徒の質問に答えるために,ナチス的な社会心理状況を作り出す実験授業を実施することから話が始まる.教師の思惑は,集団による暴力の恐ろしさと個人の尊厳を教えることにあったのだが,事態は不気味に発展し,教師も生徒も自らが作り出した「化け物」に巻き込まれ圧倒されていくという話である.
- 1969 年 5 月の初め,ひとつのうわさがオルレアンで広まった.幾人かの女性が行方不明になっているという.ユダヤ人の商人たちが,ブティックの試着室のなかで薬物をかがせるか注射するかして,地下の通路を経て,外国の売春街へ攫っていったというのだ.この月の末に至る間にうわさは尾ひれをつけられ,この「犯人」たちを威嚇するような性格をもつ.ユダヤ商人の多くは,ある狂気が彼らを抱囲するのを知る. じっさいには,何ごとも生じていなかった.だれ一人として,オルレアンで行方不明の女性などいなかった.すべては口から耳へと伝えられ生じたのである.とてつもなく愚かしく,グロテスクで,不名誉なこのうわさは,かけめぐり,膨張し,オルレアンを揺り動かす.パリから 100 キロ離れたところで中世が出現する. 1969 年が 1000 年もさかのぼったかのように…… エドガール・モラン "オルレアンのうわさ", みすず書房, 1973, 1989, ISBN4-622-01565-X, 裏カヴァー
- ↑に佳く似た話を聞いたことがある.ただし,対象はおのぼり日本人観光客で,しかも新婚カップルの新婦の方.拉致場所は新婚旅行先の某アジア地域.行方不明になる状況は同じ.売られていく先はもっとアンダーグラウンドな世界で,両手首の先を切り落とされているという.こうして都市伝説が生まれ,膨張していくのである.そのスピードは共振の度合いによる.
- ああ,「転校生」ってのは,そ〜ゆ〜トリガになりやすいかも.
- ついこの間には眉村卓の『謎の転校生』(だったっけか) をまとめてやってたんだが (ひさうちみちお が悪役やってたヤツ),やっぱ時代かねぇ.ぜんぜん違うわ.今から観ると,どうしても「しょもな」だもんなぁ…… ま,単純明快ではあるけれど.
- web を探してると,こんなページがあった. NHK ドラマ愛の詩「六番目の小夜子」 2000 年 3 月に放映されていたらしい.なんと, DVD 化されてるではないか. FOSTER -Anne Suzuki 5,800 円 * 3 は高価いと思うけど.
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