「われわれが (1949 年) 蒋介石の国民党とともに台湾へ移って来る以前から,ソルダと黒社会は利害を共にして来た.だが今や,ソルダはわれわれを切り捨てようとしている」 © ウー・ジーホワ.昔のアスキーと Microsoft みたいですな.
ついに間にダミーを置くことすら面倒くさくなったのか,アルテナさま自ら依頼人となって二人組に台湾旅行というお土産の付いた餌を撒くお話.チェスの駒.シャオリー (小栗?) なるキャリア・ウーマン風の毒薬使い登場.シャオリー=小栗となるのなら,虫太郎となって蛾に比せられるのはあながち突飛でもない.今回は,赤い爪に毒を仕込むという古典的かつまだるっこしい手法を採用している.毒薬使用の主眼が時間と空間という制約からの解放,つまり殺人が行われる時間と場所に犯人がそこに現存する必要がないことであるからには,この方法はあまり効果的ではないと言える. acte II ではもそっと進化した形態を見せていただきたいが,たぶんそんな場面はない.
冒頭でミレイユが不機嫌なのは,淡々とカリキュラムをこなしている霧香に比べて,「お前 (霧香) のせいでわたしは叔父をこの手に掛ける結果になったのよ,たとえそれを望んだとしても」とか考えてるからだろうか (笑).お約束.レーガン搾取.あ〜,そうそう,アルテナさまが毒薬使いを忌み嫌うのは,毒殺という手段が殺害者と被害者が対面するという儀式性に欠けるからでしょうかね.
純血主義で混交を認めない,反対意見を認めない,意に染まぬ相手を蟲呼ばわりするなど,専横的な側面が目立つアルテナさまだが,これがアルテナさまだけではなくソルダ全体の意思決定のあり方であるとするなら,ソルダの息の掛かったミレイユと霧香も影響を受けないではいられない.アルテナさま,クロエ,霧香,ミレイユがほとんど同じ衣装で押し通すのは,手抜きではなくてそれらが制服であるからなのですよ,たぶん.もう二クール目に入っているし,記号論的な意味での同一衣装というのは却下してもエエと思う.
- part A サブ・タイトル前
- part A サブ・タイトル後
- 場面は変わってパリ〜浮かない顔のミレイユ,不機嫌に巻き込まれないように一歩下がって付いている霧香〜露天の花屋からの連想でクロード叔父さんとの対決シーンがフラッシュ・バック〜我に返るミレイユ,こいつ大丈夫かなと思ってそうな霧香〜帰宅. "liar you lie".1’55".
- (※) アジトに侵入者の痕跡〜霧香,置き手紙を見付ける〜黙って開封して読んでいる霧香,不機嫌なミレイユ. 第一話 B パートでの霧香の「わたしは誰? わたしはノワール.それ以外は何も判らない」で使われていたタイトル不詳のシンセ曲.エフェクトが重ねられている. 0’30".
- 依頼人はソルダ.何を考えとんのじゃと絶句するミレイユ〜荘園で葡萄を摘むアルテナさま〜摘もうとしたらでっかい蛾 (毒蛾=シャオリー) が実 (霧香とミレイユ) に止まっていてこちらもまたムッとした顔.不機嫌の応酬 (笑). "les soldats". 0’34".
- ソルダからの依頼内容を確認するミレイユ,台湾黒社会の最大勢力ホン・イーパンのトップ,ウー・ジーホワの始末〜台湾に飛んだ二人組〜霧香の「よいしょ」を挟んで〜ソルダの意図を計りかねている二人組. "les soldats". 0’30".
- 気が進まない霧香〜商売道具である爪のお手入れに余念がないシャオリー〜まんまとアルテナさまに乗せられて,霧香救援に荘園を出立するクロエ〜クロエは自分の独断専行だと思い込んでいるんでお墨付きを与えてやるアルテナさま〜台湾での事態急変も織り込み済みであろうに釈明を加える.結句,ミレイユ,霧香,クロエ,シャオリー (アルテナさまに毒蟲呼ばわりされている) の四名はアルテナさまの掌の上で踊らされているのである. "lullaby". 1’28".
- ホン・イーパンの四人会議.ウー,ソルダとの戦争を宣言する〜ノワールがソルダの依頼を受けて行動していることも承知〜孫先生のあとも,引き続きノワールの始末をシャオリーに依頼.「ノワールが欧州千年の闇だとしても,黒社会の源流は二千年.らい家 (來家? 礼家?) 毒殺術の敵ではありません」.今度こそ "black society". 2’11".
- part B
- (※) ソルダ連絡員からの呼び出し〜待ち合わせ場所はなぜか台湾調ではなくて絵に描いたような大陸仕様の寺院 (斎寿寺?)〜連絡員,ソルダと台湾黒社会が全面戦争に入り,対ノワール要員に冷眼殺手シャオリーが充てられたことを告げる.「冷眼殺手」という通り名は有名らしい.「聞いたことがあるわ.大物じゃない (否定ではなくて付加疑問)」. 第一話 B パートでの霧香の「わたしは誰? わたしはノワール.それ以外は何も判らない」で使われていたタイトル不詳のシンセ曲に "silent pain" が重ねられている. 1’57".
- (※) シャオリーご到着〜ミレイユ,連絡員から他のネタも聞き出そうとする. 第一話 B パートでの霧香の「わたしは誰? わたしはノワール.それ以外は何も判らない」で使われていたタイトル不詳のシンセ曲.前の曲が終わってすぐ (三秒後) 始まるが,今度は単独使用. 0’46".
- (※) 気配に気付いた霧香から仕掛けた銃撃戦,どさくさに紛れて逃げ出す連絡員〜霧香に援護させて追うミレイユ. 第三話 A パートで使われていたアップ・テンポのタイトル未詳曲. 0’21".
- 逃げた連絡員をさっくり仕留めるシャオリー.その殺しって請求すれば報酬が出るんかね〜連絡員を追うミレイユの前に屍体〜待ち合わせ場所だった四阿の方は片付けたっぽいのでミレイユを追う霧香〜連絡員の屍体を発見するミレイユ〜連絡員の黒ずんだ死に顔 (画面には出ない) を見て息をのむ.きっとサタン・バク (新型ポリオ・ウイルス) で殺されたバクスター博士やイーストン・デリーみたいだったのでありましょう.ま,少なくとも眼球が飛び出し (出血してるかも),舌が膨れ上がって口腔内に収まらなくなっているぐらいは間違いない〜ビビってるミレイユに赤い爪で襲い掛かるシャオリー〜危うくかわしたミレイユ体勢崩して転落. "black is black". 2’27".
- 落ちた先の屋根の上で息を吹き返すミレイユ〜礼拝所で手榴弾を喰らった霧香,咳き込んでいると左の顳顬に銃口〜さっさと引金を引かなかったために,クロエの飛びナイフで倒される名無しの紺スーツ〜「お前はいつからここにいる (© 都々目紅一)」と不審顔の霧香に,例によって今まで瞑っていた目を開けて,しゃあしゃあと「助けに来ました.あなたを」と言ってのけるクロエ〜これを聞いた霧香の表情は正木敬之.霧香,口を閉めろ〜ほぼ右 2m 近い場所に落ちている銃に左手を延ばすミレイユ〜その左手の甲を踏みしだくシャオリー. "black is black". 1’51".
- 比率
今回の目玉は何といっても都合三回 (あるいは五回) フィーチャされるディープでカッチョエエ "black is black" とエスニック方面に傾いた "black society" で,トータルで 6’29" (6’57") も使われている.全音楽の四割以上をこの二曲が占めている. Original Soundtrack II に収められている.他に, B パート頭で 第一話 B パートでの霧香の「わたしは誰? わたしはノワール.それ以外は何も判らない」で使われていたタイトル不詳のシンセ曲に "silent pain" を重ねて流すなど,ちょっと変わった手法が使われている.複数の異なる曲を同時に流すとは,いかにもケージが好きそうな手法ではある.これは誰の発案だったのだろう.
特定の曲が特定の人物あるいは特定の状況に対応しているようだが,今まで聴いて来たように,ライトモティーフ的な使用法ではない.使われるのは曲であって旋律ではないからである.つまり,別テイクはあっても変奏がない.
次回予告.「悪心二千年」というのは判らん.釈尊入滅後,正法,像法を経た末法は一万年続くそうであるし,末法世のある時期を悪心二千年と呼ぶ事例も見当たらない.シャオリーが「黒社会の源流二千年」と言っているが,こっちの方だろうか.それを「悪心」と呼ぶのかという疑問が残るが.
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