またもやディックの映画化.またかという感じで見始めたが,比較的原作に添った内容.というか,今まで観た五本 (他の四本は『ブレードランナー』,『トータル・リコール』,『クローン』,『マイノリティ・リポート』) の中ではいちばん忠実に作ってある.しかし,まぁ,ディック作品の中でももっともリアルで悲歌的な作品をまんま絵にしたものを見せられてもな〜.自ら選択した道とはいえ救いのない話だけに,鬱度が上がる.
実際の映像はアニメ.ふつうに撮った俳優の演技に,いちいちデジタル・ペイントを掛ける「ロトスコープ」というテクニックで作られている.デジタル処理もあんまり派手じゃない.基本的にエフェクト処理のみなので,よって,動きは奇妙にリアル.冒頭の,フレックのアリマキ幻覚とかは,さすがにエエ感じになってる.ってゆ〜か,元々リアルなものにアンリアルな処理を掛けているだけなので,車がチョロ Q だったりとか,コマ割りが変わると身長が伸び縮みしたりとか,スロー・モーションで倒れ込みながら銃を撃つとか,片手でマンホールの蓋を放り投げたりとか,死んだはずの娘 (半人間) が生き返ってナイフ見て発情したりとか,列車の背景がほぼ二秒でループしたりとかの,アニメならではの表現はほとんど見られないのは残念 (笑).例外はスクランブル・スーツで,顔を含めて全身が 5 〜 10 frame ぐらいでうねうねと切り替わるというアニメならではの手法で再現されていて感心 (見難いけど (笑)).
- Robert Arctor : Keanu Reeves
- James Barris : Robert Downey Jr.
- Ernie Luckman : Woody Harrelson
- Donna Hawthorne : Winona Ryder
- Charles Freck : Rory Cochrane
- 監督 : Richard Linklater
- 2006, Time Warner
- 原作 : フィリップ・K・ディック "暗闇のスキャナー", 山形浩生 訳, 創元 SF 文庫, 1991, 1998, ISBN4-488-69609-0, (Philip K. Dick "A Scanner Darkly", 1977), 浅倉久志の訳も 2005 年に『スキャナー・ダークリー』のタイトルでハヤカワ文庫から新訳版として出てるが未読.
手法的な面白さもあるし,一度は見とくべきかも.鬱エンドというか,破滅的あるいは救いのない結末が好きならハマるかも.っつ〜か,ディック特有の閉塞感はいちばん佳く出てたんじゃねぇの.
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