- エラリイ・クイーン "帝王死す", 大庭忠男 訳, ハヤカワ文庫,, 1977, 2007, ISBN978-4-15-070113-0, (Ellery Queen "The King is Dead", 1952)
島一つを買い取り,そこに私設軍隊までを備えたベンディゴ帝国という設定が,まるで面堂家みたいで妙におかしい.いや,面堂家はむしろポッツ一族なのかも知れんが (笑),そこへクィーン父子が拉致されて来てというクィーン (作者の方) でもこんなの書くんだ〜的な珍作.いやぁ,カインとアベルとユダを出しといてコレはないだろうと.『最後の女』もそうだけど,『帝王死す』もタイトルどおりで,やや呆然 (笑).「意外な犯人」, 1) まったく犯人像を予想できなかったケース, 2) 予想どおりの犯人像だったということで驚くケース[いわゆる「抜き打ち査閲」と呼ばれているパラドクス (P. ヒューズ, G. ブレヒト "パラドクスの匣", 柳瀬尚紀 訳, 朝日出版社, 1979, (Patrick Hughes, George Brecht "Vicious Circles and Infinity", An Anthology of Paradoxes 1975, 1978)).だが,もっと凄いのを同書で見付けた.ときどきオクスフォード駅で見掛ける掲示に曰く「ロンドン行最終列車は今夜は運行しません」 (p. 174).これは短くて佳い.全然関係ないが,共著者の G. ブレヒトは ナイマン本 のフルクサスの項に出て来るブレクトと同一人物.ジョン・ケージ一派とツルんでたあの方です.].
本編 p. 229 から p. 274 までがライツヴィル探訪記.全体の 10% 以上の分量か.ここだけ雰囲気ガラリ変わるし,これもライツヴィルものに入れてもエエかも.
というわけで,ライツヴィルもの長編のストックがなくなりました.ハヤカワさん,早く『フォックス家』を重版してくださ〜い.