ぐる式 (貳) より引っ越し作業中.未完.

2007年4月21日土曜日

フーコー『監獄の誕生』

  • ミシェル・フーコー "監獄の誕生", -監視と処罰-, 田村俶 訳, 新潮社, 1977, 2005, ISBN4-10-506703-6, (Michel Foucault "Surveiller et punir", -Naissance de la Prison-, 1975)

看守の観点に立てば,そうした (集団的効果を発しかねない) 群衆に変わって,計算調整が可能で取り締まりやすい多様性が現われ,閉じ込められる者の観点に立てば,隔離され見つめられる孤立性が現われるのだ.

[ ミシェル・フーコー "監獄の誕生", -監視と処罰-, 田村俶 訳, 新潮社, 1977, 2005, p. 203 より ]

パノプティコンは,いわば実験をおこない,行動を変えさせ,個々人を訓育したり再訓育したりする一種の機会仕掛けとして活用できる.

[ ibid, p. 205 より ]

独房中心の監獄,そこでの拍子をつけるように明確に区分されたそこの時間経過,そこでの強制労働,監視と評点記入のそこでの審級段階.裁判官の機能を代理として果たし多様化する,そこの規格化状態の専門家たち,そうした監獄が刑罰制度の近代的な手段となったとしても,何にも不思議ではない.監獄が工場や学校や兵営や病院に似かよい,こうしたすべてが監獄に似かよっていても何にも不思議ではないのである.

[ ibid, p. 227 より ]

パノプティコンの最大の発明は一方的な可視性にある.監視のコストを下げるには,監視される側がその状況に組み込まれそれを維持するような措置をとれば佳い.つまり,被監視者がつねに監視者の視線を感じ取るような機構である.監視者が実際に監視しているかどうかは問題ではない.被監視者を,つねに監視される可能性があると思わせる状況に放り込むだけで佳い.これにより監視者の自動的没個人化が可能になる.原動力は被監視者自身が絶えず生み出す.つねに見られているというストレスを自分自身に与え続けることは,多種多様な方向を向いている人々を全員が一定方向を見るように「揃える」ことに効果がある.「工場や学校や兵営や病院」はそれを必要としている.

もともと土牢の機能は「閉じ込める,光を断つ,隠す」の三つだった.パノプティコンでは,「閉じ込める」という機能だけが残され,あとの二つは逆転している. (ibid, p. 202).一つだけ残された「閉じ込める」機能も解消できたとしたら,これはすなわち Big Brother のイメージである (一対一だとストーキングになってしまうので効果はない).かつては,とくにキリスト教世界では宗教がその役割を担っていた時代もあっただろう.現在はどうか.多種多様なメディアがその位置に着こうとしているんだろうか.

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