「こんな痩せ寺に,そんな傑物偉物が一時に四足りも集まるわけがないわぃ!」 © 浅川甚兵衛.
彩の国さいたま芸術劇場/「ムサシ」, ムサシ | WOWOWオンライン.
まずはイントロで武蔵と小次郎の巌流島決闘.本編はその後日談.暗転後,微かな灯りの下で,にょっきり竹林と能舞台のような小さな禅寺が出現.凄ぇ金掛かってるよ,以下,暗転はあれど,舞台はこの寺から動くことがない.これ.え〜と,先の決闘で武蔵に敗れた小次郎は死んでおらず,鎌倉にある臨済宗の禅寺,宝蓮寺に作事係として勤務中の武蔵を,六年越しでリハビリを終え見付け出して乗り込んで来る.だが,この宝蓮寺に集う人々は云々.なんかもう,鎌倉佐助ヶ谷より二里ばかり奥の山里を修行し給ふに,在所のめいめい申しけるは,修行者には何国より来たり給ふ人ぞ.此辺は草深き山なれば,元より仏をくやうする事なければ,況して御僧などには,一鉢の慈悲をほどこすといふ事もかつてしらず,誠に今生の罪人といふは我々が事ならん,あはれ是にしばらく逗留ましませかし,一謁一句の道理をもうけ給はり,活仏にこそならずとも,せめて死仏ともならばなどいひて,四五日もここにとどめ置けり,武蔵申さるは,是より北にあたり竹林の見へ候いか成るところにて候や,などなど.騙されているのは誰かというワトソン探しだった (笑).おそらく二幕構成で,時間はおよそ 3 時間半弱.『表裏源内蛙合戦』よりかは短いんだけど,やっぱ相当長い気がするのに,見てるとあまり長さは感じない.不思議 (笑).
珍しく歌がない.能狂いの宗矩が捻り出す謡曲の類いはあるけど,むしろインラインなので独立してはいない.が,井上=蜷川コンビに付き物のヴィジュアルの凄さは健在.五人六脚や摺り足ダンスなど,身体を張ったギャグも.後者は思わず噴いた (笑).ただ,あまりにベタだな〜,めちゃくちゃオモロいけど (笑).歩き禅は逍遥学派みたいですな.甚兵衛の左腕が乙女に斬られて地ベタにぽとり.その落ちた左腕の指先がにょごにょご動いてるんだが,いつまで経っても動いてる.これも伏線だったのかな.とりあえず,最後のシーンを除いて武蔵と小次郎の決闘コンビ以外は全員人でないものということだったんだが,これはヒトの言葉ではこの二人の再度の決闘は阻止し得ないからだみたいなことを作者本人が NHK のインタビューで語ってたが,決闘を阻止するというより,物理的に決闘できない存在,ということにした方が面白くないかな.ここに出て来る武蔵と小次郎,だいたいがその決闘自体も作り話だそうだから,全然関係ない第三者の夢想に出て来た二つの人格,プラマイは別に逆でも構わないが,その一方がプラス側に振った武蔵でもう一方がマイナス側に振った小次郎,この二人のうちどちらかが消えることは,その第三者の別の人格がもう一方の人格に統合されてしまう.するとプラマイが相殺されて 0 化してしまう.そのために決闘を防ぐ,とか.う〜ん,どちらか一方が殺されることが,長い長い夢から覚めることになる,ってな感じの方がエエかな (笑).
- 宮本武蔵 (現宝蓮寺作事奉行):藤原竜也
- 佐々木小次郎:小栗旬
- 筆屋乙女 (宝蓮寺の大檀那筆屋の跡取り):鈴木杏
- 沢庵宗彭 (大徳寺長老):辻萬長
- 柳生宗矩 (将軍家兵法指南役,能狂い):吉田鋼太郎
- 木屋まい (宝蓮寺の大檀那のご隠居):白石加代子
- 平心 (源氏山宝蓮寺住持):大石継太
- 浅川甚兵衛 (八幡宮先の宮侍,茶の宗匠,乙女の父の仇):塚本幸男
- 浅川官兵衛 (甚兵衛の弟):高橋努
- 忠助 (筆屋の雑用係):堀文明
- 只野有膳 (浅川道場師範代):井面猛志
- 作:井上ひさし (吉川英治『宮本武蔵』より)
- 演出:蜷川幸雄
- 音楽:宮川彬良
- 美術:中越司
- 照明:勝柴次朗
- 音響:井上正弘
- 衣裳:小峰リリー
- 殺陣:國井正廣
- 振付:広崎うらん
- 花柳錦之輔
- 能指導:本田芳樹
- 狂言指導:野村萬斎
- 演出補:井上尊晶
- 音楽補:池上千尋子
- 舞台監督:小林清隆
- テクニカルコーディネーター:金井勇一郎
- 主催:朝日新聞社
- テレビ朝日
- 財団法人埼玉県芸術文化振興財団
- こまつ座
- ホリプロ
- 企画制作:ホリプロ
- 2009 年 4 月 8 日,彩の国さいたま芸術劇場 大ホール
なんか全然穴がないんですけど (笑).五人六脚や摺り足ダンスは何度見てもオモロいな.摺り足ダンスはタンゴだからよけいに可笑しい.木屋まい@白石加代子のギャグは強烈過ぎです.
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