「太陽の黒点が大きくなるとな,ネズミたちはアパートを出てどっかへ向かってゆっくりと歩き出すんだ.集団蒸発,それはレミングだったんだ.ネズミたちはな,朝になると知らん振りして,街外れの溝に沿って工場へ出掛ける.膨れ上がったり,血の泡を口の周りにくっ付けたり,ヒゲをピーンと延ばしたまま硬直したりしながら,ネクタイ締めて鞄持って,例外,禁止,矛盾,拘束なんちゅう壁の間くぐり抜けてね,ときどき立ち止まり不安になって辺りを見回し,ノミを撒き散らしながら,実は太陽の黒点,そ,無限の空洞へ向かってゆっくりと歩き始めるんだ.そしてな,歩きながら水蒸気になって立ち上って消えて行く.でもさ,見ろよ,この広さ.え? 起きて見てう寝て見てう部屋の広さかな.この辺は間仕切りにしてな.ここら辺の額にはな,ラーメン台よ,毛沢東の額でも掲げて.待て待て待て,ここはな,畑にすることだってできんだぜ.麦でも撒いてさ.おれの?にはお隣さんの台所までず〜っと真っ青になって延びてくんだ.佳いだろな〜.そしてな,ベッドはこの辺に置くんだ.今度は折り畳み式はやめて,特大のフランス・ベッドをマルイの月賦で買って,でな,ミマツ食堂のヒロミちゃんでも連れ込んでな,おれはな,おれはここでな,徹底的に踏み止まってやるんだ.壁がないおれはさ,こっから出てくこともここに残ることも結局同じことなんだよな.(暗転) だけどさ,あんたがたは違うんだよな.壁なしじゃやってけないあんたがたはさ,こっから出たつもりでも,結局はまた別の壁に入ってくだけのことなんだよな.怖がっちゃいけないよ.期待してんでしょ? ま,このまま終わるなんて思っちゃいないよな.天井桟敷の十八番だ.ドアに全部板をつけてな,あんたがたの大好きな密室作ってやろうじゃないの.な,期待してんでしょ? 完全犯罪の完全密室だよ.な.ドンドンドン.あららら,ほんとにやり始めやがったよ」 © 壁抜け男@根本豊.
今年 1 月頭の録画.サイケデリック・フルクサス演劇? マルセル・エーメ (の "Le Passe-muraille") とは関係あるのかないのか.終景では関係ありそう.安部公房も関係ありそう.ポーはもちろん,ハーメルンの笛吹き男とかも.音楽は合唱曲はイマイチというかずいぶん落ちるような感じだが,インストは往年のジャーマン・プログレみたい? (笑) それも Can とか Tangerine Dream じゃなくて,呪術的な初期 Amon Düül とか.いや,もっと整った感じか.バンド演奏はほとんどない.なので,維新派の劇伴を思い出してしまった.この公演は寺山没直後のものだったらしい.ってか,この年 7 月で解散してますわな.まぁほとんと万有引力に吸収されたようだけど.というわけで,ほとんど天井桟敷最期のライヴ.お〜, クラレンス公ジョージ はここ出身だったデスか!
- 1. マッチ箱の中の大都会 何かロック開眼以前のカルメン・マキみたいなテーマ歌で始まるなと思ったが,カルメン・マキも天井桟敷に在籍していたそうな. 6 拍子 (2 + 2 + 2) のリフにエスニックな上物.どがちゃかに飲み込まれて,
- 2. 壁の消失
- 3. 囲碁の都市計画 ベースの 5 拍子ウォーキングに乗っかった不確定存在のアジ
- 4. 四畳半の天文学 コーラス〜仮置きの「壁」は何で安部公房じゃなくてサルトルなんだろ.その次はカフカの『ある流刑地の話』.
- 5. もぐら叩き
- 6. 都市の孤独
- (テロップなし) コーラス『あの空き部屋が世界の果てだ』?
- 8. タンゴ
- 9. 頭足人
- 10. リヤカーの惑星
- 11. 遊戯療法
- 12.
王様ネズミ に関する記述 スペルは Rattenkönig なんだろな. - 13. 間奏曲 ヴォーカル・ソロ〜 426 号独房の囚人 2 人の対話.
- 14. 「行きすぎよ,影」
- 15. 夢のネズミ算
- 16. 死都ラトポリス 1. のどがちゃかとエピローグ? 壁の復権と壁抜け男の誕生→文字どおり,インではないという意味でドロップ・アウト.
あの「事実は死んだ!」という台詞の人,解放治療を受けていた女優の人の役名は影山影子だそうな.壁と箱.この時代は壁から抜け出すことに意味があったんですな.壁はよりポータブルな箱に進化し,やがてポータブル・オーディオのエア箱へ至る.萌え箱に逆行する向きもあり.もひとつ,壁があることで生じる内と外という二項関係.これって舞台と客席というか,観るものと観られるものにも関係してますか?
- 新高けい子,蘭妖子,サバドール・タリ (ママ,サルバトール・タリの誤植),若松武 (現・若松武史),根本豊,矢口桃,青山均,西郷孝昭,蛭沢美季子,末次章子,日野利彦,福士恵二,牧野公昭,太田律子,水岡彰宏,高田恵篤,レオ・ウェルツィン
- 藤倉俊之,中山和美,村上亜貴子,大林真由美,中村亮,梅津義孝,佐々木京子,竹原健二,田林恵子,中村真寿美
- 作:寺山修司
- 共同演出:寺山修司,J. A. シーザー
- 音楽:J. A. シーザー
- 美術・衣装・メイク:小竹信節
- 照明:田中未知
- 音響:森崎偏陸
- 舞台監督:浅井隆
- 共同台本:岸田理生
- 演出助手:根本豊
- 舞監助手:田中浩司,山崎信介
- 照明操作:丸山邦彦
- 音響助手:落合敏行
- 大道具製作:(株) 東美
- 機械製作:(株) サンコー制作所
- 照明:C・A・T
- PA:カトヤレコーディングサービス
- 1983 年 5 月,横浜市教育文化ホール
- 演劇実験室◎天井桟敷公演『レミング 壁抜け男』
いかにもアングラという佇まいでした.天井桟敷のロゴすらも (笑).ただ,もっと実験的というかアヴァンギャルドというか,ひょっとしたらいわゆる「ハプニング」みたいなもんかと思ってたけど,意外とまともじゃないですか.そりゃ確かに表現の出し方という点では赤テント,黒テント,早稲田小劇場とは違うんか知れんけど.宇野亜喜良好きなら観といた方が佳い.ただ,役者のアップ映像はほとんどないに等しく,音質も佳くない.ウィーン国立歌劇場の引っ越し来日ライヴはこの三年前だったよな? それなりの録画録音環境は整っていたんじゃないのか. NHK お得意の言葉狩りもかなり目立つ.どうしても検閲するんなら,ばっさりぶった斬って悪目立ちするんじゃなくて,それなりに配慮してくれ.
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