ぐる式 (貳) より引っ越し作業中.未完.

2009年8月22日土曜日

斎藤憐『乱歩・白昼夢』結城座 2009

江戸糸あやつり人形劇団 結城座 - 乱歩・白昼夢.早めに出てメシ喰おうと思ってたら,有楽町線要町の車両トラブルに巻き込まれる.

副題として<江戸糸あやつり人形と江戸写し絵による>.「江戸写し絵」は別売のパンフに説明があるが,ハンディなプロジェクタ (ビデオ入力タイプではなく,むかしあったスライド・タイプみたいなの.風呂と呼ばれる幻灯機) で,極薄ガラスに彩色された絵をスクリーンに写し出すというもの.ハンディ・タイプなので,位置も角度も固定されない,というか動き回れるのがポイント.結城座の人形芝居は,人形とそれを演じる操者が一対一で声も当てている.話師あるいは弁士が他にいるという形態ではない.一方,文楽の方は単独の弁士が立ち,糸のない人形を三人で操る.

OP と ED に加えて,ネタは『芋虫』,『屋根裏の散歩者』,『一人二役』,『人でなしの恋』の四本.『芋虫』は人体断裂のシーンがあるが,人間の俳優が演じる芝居よりもなんかリアル.通常,ステージの上では何が起ころうとも芝居の範疇として認識されるのは,まぁ前提であるとはいうものの,例えば人体断裂なんかはそのまま演じることはできない.それができるのはスナッフ・ムービーだけだし,再演不可能だ (笑).だから,断裂される人体と,それまでの人体にはある断絶があるわけだが,人形の場合はそれがない.同一の人形における断裂の前後で流れる時間は繋がっているわけである.それがリアル感に繋がっているのかな,などと下らないことを考える.

途中で人形を出し入れするトランク,こんな感じのアンティーク・トランクっぽいヤツ (ベルトはない) んだが,これの表に薔薇の刻印とかあったら,アレ気なモノを持ち運ぶのに佳いかも (笑).いや,別に刻印がなくたって構わないが.あ〜,でもあれか,トランクにアレ気なモノを入れて乗船したりすると,その船は嵐に遭うんだよな (笑).門野が堕ちたお七人形だが,天狗屋久吉のお弓人形みたいなのだったら判る気もする (笑).ってか人形者は人形と心中するくらいでないといけないんですね.真那胡敬二の明智が人形と差しつ差されつしてるのは面白い趣向だ (笑).

  • 出演:結城孫三郎 (両川船遊),結城千恵,荒川せつ子,結城育子,平井航,橋本純子,結城数馬,長井望美,矢田珠美,岡泉名
  • 明智小五郎:真那胡敬二
  • 作・演出:斎藤憐
  • 意匠:宇野亜喜良
  • 音楽:黒色すみれ
  • 舞台監督:野口毅
  • 宣伝美術:宇野亜喜良,福田真一
  • 2009 年 8 月 20 日,結城座創立 375 周年記念公演,池袋 東京芸術劇場 小ホール 2

「写し絵」の件は 佐々木幹郎, 大西成明 (写真) "人形記", 淡交社 ISBN978-4-473-03567-7, 2009 にも載ってた (pp.38-39).さすがだ.この本で指人形を披露している宇野亜喜良の糸あやつり人形だが,唯一別売パンフのトップ・ページを飾っている.写真はイマイチだけど,これはエエな〜.これでコメディア・デラルテとかできませんかね.アリストパネスとかでもエエけど. 黒色すみれ は vln と vcls, kbds, accord のデュオ. OP のステージのイメージが維新派や万有引力みたいだったんで, Art Zoyd の "Nosferatu" みたいなんを予想してたが,ずっとポップだった.

どうでもエエが,結城座の創立って 1635 年なんだそうで,バッハが生まれる 50 年前,モンテヴェルディの『倫理的・宗教的な森』より 5 年前だよ.凄ぇな.ヘイスブレヒツのトロンプルイユ作品もこれの 30 年ぐらい後だ.

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