ぐる式 (貳) より引っ越し作業中.未完.

2006年8月28日月曜日

竹本健治『フォア・フォーズの素数』

買ったのが去年の 11 月, 9 ヶ月近く寝かしていたのにはワケがあって,キーボード左の山の中に埋もれていたのをすっかり忘れていたのであった (笑).

タイトル作は,こんなプロセスをそっくりそんまま短編に仕立て上げるなんて,やっぱ傑作.『メニエル氏病』も超弩級の豪快なトリックで大笑い.でも,やっぱ決め台詞は「そこはそれ——」.『チェス殺人事件』は『定本 ゲーム殺人事件』で読了済み,『銀の砂時計が止まるまで』は徳間を経てハルキ文庫で再版されたネコ・シリーズの最終巻で読了済み.言われてみれば,確かにネコ・シリーズとは雰囲気が違う.おれはどっちも好きだけど.あとは『ウロボロスの偽書』から独立したようなカレー綺譚の『白の果ての扉』,映画『メメント』と同じ前向性健忘症 (ウェルニッケ脳症) を題材にとった『空白のかたち』が秀逸.なんか GC のメカニズムを連想した.人間の脳にもガベージ・コレクタがある?

佐伯千尋シリーズが三作.最後の『非時の香の木の実』は例によって千尋を陵辱する話でタイム・リセット部を除いた前半部は『ウロボロスの偽書』そのままだが,後半は千尋の方が殺されて分解される.と聞くとエグい話のようだが,遅い晩飯喰いながら読んでたわけで,それほどグロいわけではない.病的な熱気というよりも,もっと冷たい感触がある.竹本健治の作品のなかで陵辱されるヒロインといえば「クー」や敵にとっ捕まって拷問される「ネコ」もあるが,千尋の方は,『実験』,『闇に用いる力学』,『跫音』,『仮面たち,踊れ』,『震えて眠れ』,『空白のかたち』,『非時の香の木の実』と並べてみたときに判ることがある.初めは何やら「病い」のようなもののオブセッションかと思ったけど,それだけではなくて,千尋というキャラクタは,忌まわしいもの,不浄なもの,触れてはならぬもの云々という「聖性を帯びたもの」を封じ込める空間の擬人化なのではないかということだ.以下,つづく (続きません).

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