- 川端康成 "眠れる美女", 新潮文庫, 1967, 2004, ISBN4-10-100120-0
タイトル作の他,『片腕』,『散りぬるを』の三本入り.いやぁ〜,ほんまに匂ってきそうな話でありましたことよ.強烈.くらくらする.とにかくエロい.たいしたもんだぜ,爺さん,と思ったが,書いたのは六十代前半だ.タイトル作が昭和三十五年 (1960),『片腕』が昭和三十八年 (1963),『散りぬるを』だけが戦前の昭和八年 (1933) の作品.共通項は「死」.エロいのは当たり前の話で,タイトル作は前後不覚に眠らされた全裸の若い娘だし,次のは喋るとはいえ片腕だ.頭じゃないから,どうしても「もの」になってしまう.それを執拗に描写すりゃエロくもなろうというもの.このエロが「死」に対立する「生」の礼賛にまったくなっていないのが「らしい」.だから「匂ってきそうな話」なのである.その匂いは多分腐乱臭.川端康成は死をいかにも嫌そうに不味そうに喰いながら小説を書いている.そりゃ自殺もするだろうよ.
0 件のコメント:
コメントを投稿