ぐる式 (貳) より引っ越し作業中.未完.

2006年11月2日木曜日

ホフマン『牡猫ムルの人生観』

  • ホフマン "牡猫ムルの人生観", 上下巻, 秋山六郎兵衛 訳, 岩波文庫, 1935, 1936, 1956, 1957, 1982, (E.T.A. Hoffmann "Die Lebensansichten des Katers Murr", 1819, 1822)

明治三十九年,漱石の名無しの猫に「先達ってカーテル・ムルという見ず知らずの同族が突然大気燄を掲げた」と言わしめた一編.序文に「牡猫ムルが自分の人生観を書いたときに,自分の主人のところにあった印刷した書物を遠慮なく引きさいて,それを無邪気に下敷や吸取紙に使用した,これらの紙が原稿の中にそのまま残って,そして,——不注意からその原稿の一部として一緒に出版されたのだった!」とあるとおり,ムルが書いた部分と楽長クライスラーの伝記が交互に現れる形を取る.クライスラー部には一部時間軸の移動もある.それ自体はエエんだが,どうにも翻訳が古い.翻訳が昭和十,十一年,改訳が昭和三十一年ということだが,まず会話がダメで,地の部分もクドい.調べるのには佳いのかも知れんけど,読むもんじゃねぇな,これは.地に足の着いていない夢幻劇的感覚は相変わらずなんだが.

原語版.プロジェクト・グーテンベルクより. Projekt Gutenberg-DE - Kultur - SPIEGEL ONLINE.これは序言から読まんとダメ.

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