- 山口仲美 "犬は「びよ」と鳴いていた", 日本語は擬音語・擬態語が面白い, 光文社新書, 2002, 2005, ISBN4-334-03156-0
第一部がマクロ的視点から見た導入,歴史,変化の様相など,第二部が個別事例といった感じで書かれていて,やっぱ第一部が面白い.おまけに類書を知らない.と外野は単純に喜んでいるんだが,外国語の擬音語・擬態語辞典を作るのはたいへんだろうな〜.
「びょうびょう (べうべう)」というのは犬の吠え声 (江戸時代後半には遠吠え) を模したものだそうだが,内田百閒の『烏』 (『冥途』所収) に用例*1があるのを発見.少なくとも 1922 (大正11) 年までは使われていたらしい.
そのまま読み進めて行くと『先行者』 (『旅順入城式』所収) でも一カ所*2使われていた.刊行は 1934 (昭和9) 年である.
*1: 内田百閒 "冥途・旅順入城式", 岩波文庫, 1990, 1998, ISBN4-00-311271-7, pp.28-9, 「犬のびょうびょうと吠える声が聞こえた」, p.30, 「そのうち,不意に宿屋の前に来て,びょうびょうと吠えると思ったら,すぐに止めた.そうして今度は又思いもよらない遠くの方に,びょうびょうと吠える声が微かに聞こえた.私は恐ろしく早い犬の吠え声を何時までも追うて眠らなかった」.今読むと,この「びょうびょう」という表記の意外さが怪異を引き立ててるように見えます.
*2: ibid., p. 338, 「すると,遠くの方で犬が吠えた.びょうびょうと長く吠えつづけた後で,急に狼泣きをした」.
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