ぐる式 (貳) より引っ越し作業中.未完.

2008年6月5日木曜日

野田秀樹『ロープ』 2006

「あたし,未來からやって来たんだよ」 © タマシイ.この直後のヘラクレス・ノブナガの台詞が「今度はサイエンス・フィクションに逃げ込もうって腹か」という明らさまなレッド・ヘリング.本当の意味は後半 90 分過ぎで明らかになる[ここでの「ミライ」は「未来 (未來)」と「My Lai (Mỹ Lai)」の二つの意味を背負わされている. My Lai は南ヴェトナムのソンミ (Son My) 村の東北部にある集落. 1968 年 3 月 16 日の「ソンミの虐殺」の舞台の一つとなった場所.荒ぶる力に関しては前の方でも「D」が言及しているし,グレート今川に関するタマシイの実況の様子から,勘の佳い客は気付くかも知れない.おれはボラが暴くまで判らんかったが orz. My Lai Massacre - Wikipedia, the free encyclopediaソンミを振り返る.もう一つ,この事件に関しては,ロスの『われらのギャング』にも言及があったことを思い出せなかったことは極めて遺憾. フィリップ・ロス "われらのギャング", 青山南 訳, 集英社, 1977, p. 9, (Philip Roth "Our Gang", Starring Tricky And His Friends, 1971)].同じく,タマシイの「四角いジャングルの下には魂のアジールがある」や「(人間の力とは) 人間を屍体に変えることのできる能力だ」という台詞も印象的だが.

ロープ - 公演情報 - 野田地図

実に々々 11 ヶ月振り () で,ようやく観た.ストーリーなんぞ,すっぱり忘れとりました (笑).テーマ曲 (?) は Gilbert O'Sullivan の "Alone Again" だが, Doors の "The End" じゃないのか.いや〜,二周目を観ると,タマシイの台詞の端々に込められた二重の意味が佳く判る.しかし,何度観てもタマシイ役の宮沢りえ の声は円城寺あや にしか聞こえんな〜.ここで「妄想の世界に送り込まれた暗殺者」に相当するのが,まるで段田安則のために書かれたような入国管理局員のボラ.これは頭の悪い観客に向けて設定された解説役でもある.というわけで,今まで観た野田芝居の中では,もっともメッセージ性が強いというか露骨というか,明らさまな作品[そのうち『オイル』や『パンドラの鐘』も流してくれませんかね.]. 80 分過ぎた辺りから鳴り始めるヘリコプターの爆音 (以後,終幕までドローンのように絶えず鳴っている) から導かれる 30 分あまりのクライマクスはモノ凄い.

  • タマシイ:宮沢りえ
  • ヘラクレス・ノブナガ:藤原竜也
  • JHNDDT:渡辺えり子
  • カメレオン:橋本じゅん
  • グレート今川:宇梶剛士
  • AD:三宅弘城
  • サラマンドラ:松村武
  • 入国管理局ボラ:中村まこと
  • 明美姫:明星真由美
  • レスラー北:明樂哲典
  • レスラー南:AKIRA
  • D:野田秀樹
  • アンサンブル:梅原晶太,岡慶悟,奥山隆,亀岡孝洋,小島啓寿,沢井正棋,芹澤セリコ,多賀健祐,高木珠里,竹岡英征,野笹由紀子,萩原誠人,長谷部洋子,細川洋平,村上寿子
  • 作・演出:野田秀樹
  • 美術:堀尾幸男
  • 照明:小川幾雄
  • 衣装:ひびのこづえ
  • 選曲・効果・演出補:高都幸男
  • 舞台監督:瀬崎将孝
  • ポスター・オイルペインティング:金子國義
  • 2006 年 12 月 20 日, Noda Map 第十二回公演,シアター・コクーン.

渡辺えり子,怖ぇ〜 (笑).取り憑かれ度では,およそ八分間に判る長台詞を実況しまくる宮沢りえ も相当なもんだが,藤原竜也もけっこうキていたような.あと,やっぱ中村まこと.

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