「元能,お前若いな.判らぬか.あれ (『風姿華傳』) はわたしが仕掛けた罠だ.この先数多くの猿楽師があれに足をば掬われるであろう.凡庸な者は言葉に囚われ,形ばかりの能を演じる.覇気ある者はことさらに,あれに背いて形を破る.翻って才子は才に溺れるのだ.この先何百年,あれは無数の偽者どもの躓きの石となるのだ.元能,面白いではないか.あの人の善い金春禅竹が,末代までの猿楽師を雁字搦めにする罠を握っているとは.わたしの生涯最後の悪巧みだ」 © 世阿彌元清.
およそ五百年前,ここに『呪いの書』完成ス.世阿彌 → ブルーノ → ヴァレーズ!
歌舞伎役者の芝居っておもろいな〜.おお,確かに亡霊がたくさん出てくるわぃ.おや,こんな側面もあるのか,「ありがとう存じます.そう見えますのもすべては影の知ったことではでざいますまい.すべてはもったいない帝の大御光のおかげでございます.まことにありがたき大御光,大御光の弥栄を,ときに近江の國へお出掛けと伺いましたが」.熊谷真実二十七歳,諸肌脱いで熱演.
義満死去の報せを聞いて元清,「だが,今夜からは世阿彌,我から選んでなった影でございます」.仏像を前に「うち壊いて面にする」〜元雅の仏像首切断.転がる首.「義満に聞け〜っ!」.
- 世阿彌元清:松本幸四郎
- 葛野の前:三田和代
- 巫女,大江卿の昔の女,椿:浅利香津代
- 白拍子 萩,桔梗,楓:熊谷真実
- 大江望房卿 (能面男):稲垣昭三
- 三条公忠卿:内田稔
- ささらすりの女:新村礼子
- 道阿彌:高木均
- 足利義持,観世十郎元雅 (世阿彌の長男):北村総一郎
- 鉢叩きの老爺:松野健一
- 管領細川氏,音阿彌 (世阿彌の甥):坂口芳貞
- 幕府の使者:松本幸太郎
- 侍所所司赤松氏,幕府の役人:山口将之
- 足利義嗣:片岡弘貴
- 鳥刺しの青年,観世十郎元能 (世阿彌の次男):林次樹
- 踊りの人々:松本錦一ほか
- 鹿苑院殿足利義満 (声のみ):? (松本幸四郎の声の録音再生だそうな)
- 作:山崎正和
- 演出:末木利文
- 美術:石井みつる
- 照明:浅沼貢
- 新劇団協議会三十周年記念公演
- 1987 年,池袋サンシャイン劇場
0 件のコメント:
コメントを投稿