「祭りに敵を屠ることぐらい見物衆を興奮させるものは他にありません」 © 塙保己市.
お目当ては段田安則.
頭からなんかエロ要素過多のコーラスが多くて『珍訳聖書』 (1973 年初版) みたいだなと思ったら.ほんまに古い (1973 年初演) 作品だった.展開のスピードは『珍訳聖書』の方が早そうだが,これは読んでみた感覚であって実際に見た訳ではないから,ほんとのところはどうか判らない.あ〜,杉の市とお市の交接シーンとかもあるけど,北村想の言葉を借りれば「せいこうせいこう.ゴジラのふぁっくや.大性交」[北村想 "寿歌", 不思議想時記, プレイガイドジャーナル, 1980, p. 205.]という感じ (笑).
定信の「あまりに残酷過ぎて,残酷を超えて馬鹿騒ぎになるような殺し方」という問いに応じて保己市が杉の市の処刑法として提案する「三段切り」,「まず罪人を後ろ手に縛り上げ,高い処に吊り下げます.第一刀で罪人の腰から下を切り離します.そうしますと,宙に残った頭と胴は平衡を失い,頭が重いためにぐるりと半回転し下方に降り,胴が上になります.その瞬間を狙って第二刀.首を切り離します」.これに「もう一つ,刑の執行直前にあの男に末期蕎麦を腹一杯食べさせてやってください」と付け加えるのも忘れない.その結果どうなるかというと,名和弓雄『拷問刑罰史』の挿画を伴った島田荘司の文章[島田荘司 "暗闇坂の人喰いの木", 講談社文庫, 1994, 1998, ISBN4-06-185694-4, pp. 280-281.]である.保己市はこの三段切りを杉の市への「花道」と称している.この点では神官は明らかに生贄 (この場合の被差別者は物理的に徴ある者) の側に立っている.
- 杉の市 (二代目藪原検校):古田新太
- お市:田中裕子
- 七兵衛,とっかえべい屋,塙保己市,安房の市,首切り役人:段田安則
- お志保,日本橋の橋番:梅沢昌代
- 熊の市,佐久間検校,東照宮宮侍,魚売り,倉吉:六平直政
- 琴の市,馬具屋,善兵衛,伊豆の市,初代藪原検校:山本龍二
- 佐久間検校の結解,仲買人,若い座郎,甲斐の市,定廻同心浅野,松平定信;松田洋治
- 片割れ女,寡婦:神保共子
- 売り子,寡婦の娘:景山仁美
- 語り手の盲太夫:壤晴彦
- 作:井上ひさし
- 演出:蜷川幸雄
- 音楽:宇崎竜童
- ギター:赤崎郁洋
- 2007 年 5 月 17 日,シアター・コクーン
劇伴がギター一本なのは台本どおりなんだそうだが,イントロのエレアコを使った津軽三味線風はともかく,フォーク調はうるさい.というか邪魔になる.と,最初の方は勝手なことを思っていたが,う〜ん,たまにはエエかと諦めると,あんま気にならなくなる.まぁ,別役実の『街と飛行船』みたいな形態.
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