ぐる式 (貳) より引っ越し作業中.未完.

2005年2月13日日曜日

日中糸操り人形の世界

「山川静夫の新・華麗なる招待席」なる番組の「日本・中国 糸操り人形の世界」というタイトルだが,実際にフィーチャされているのは,中国は泉州市木偶劇団と日本の結城座の二劇団.泉州市木偶劇団は 1950 年代に民間の五劇団を統合して公立化した劇団で,結城座の方は旗揚げ 1635 年,天保の改革では浅草寺の一角に幕府公認の江戸五座として中村座,市村座,川原嵜座,薩广座とともに隆盛を誇っていたという由緒正しき佳書の連署.また,それぞれ民間儀礼と結びついて大衆娯楽として発展してきた様式と,小屋掛け公演を発展させてきたのも大きな違いかも.

泉州市木偶劇団の舞台は 2004 年 10 月,東京飯田橋・日中友好会での来日公演から.

  • 泉州市木偶劇団
    • 『元宵楽』.旧暦正月十五日の泉州のお祭り.楽人の演奏演技が凄い.老婆団の早変わり.雑技団や獅子舞も.
    • 『若蘭行』.陰謀で別れ別れになった若妻が夫を訪ねて三千里.
  • 黄奕缺 (泉州人形遣いの神様的存在の大先生)
    • 『馴猴』.猿の自転車乗り.これも凄い.ギターを「取り上げて」弾いたりもする.音楽でポップス調に編曲されたモーツァルトを使ってるのも面白い.
  • 泉州市木偶劇団
    • 『鐘馗酔酒』.鐘馗さま飲酒 (笑).
  • 結城座
  • 泉州市木偶劇団
    • 『三打白骨精』.西遊記から.三蔵を喰らおうとする白骨夫人と悟空たち一行の三度に渡るせめぎ合い.近いところでは 幻想魔伝 最遊記 をときたま観てるので,人形とはいえリアル豚と猿と河童は却って新鮮かも (笑).

泉州での伝統的舞台は「八卦棚」という形式.操演者の胸ぐらいの幕を設け,操演者はその後ろに立って演じる.これに対し泉州市木偶劇団が開発した二技法が, 2m 程の高さと奥行きを持った「天橋式立体舞台」.舞台が二次元になり,横方向だけでなく縦の移動も可能になった.人形と操演者が一体になって幕なし舞台で演じる「一人出遣い方式」.結城座の方は人形浄瑠璃の人形が糸操り人形に代わったと想定すれば佳いのか.黒子が存在するのも同様.

泉州市木偶劇団はとにかく佳く動く.カラクリなどのケレンも豪快.

人形の大きさはどちらも 50 〜 60cm ぐらいのようだ.そのせいか, 人形劇版『フィガロの結婚』 ほどのリアルさはない.結城座の女形人形には脚がないというのは初めて知った.

どちらも操演者は台詞も担当するようだが,結城座の方は別に義太夫部隊がいる.泉州市木偶劇団は別同部隊は音楽担当のオーケストラのみ.

泉州市木偶劇団の方,音楽部隊が演奏する傀儡調という音楽形態も簡単に紹介してくれたのは有り難いかも.南鼓(ランコー),ヘッドに乗せた脚でピッチを変える.もしかして,これが指揮者格? 他に用いられるのは,オーボエ様のアイヤー,シャオと呼ばれる横笛,二弦(リーヒェン),ツィンバロン的な楊琴,バチを使わない南琶(ランベー),二胡 (二弦とは別もの.胴の材質が違うので別種の音がする),各種パーカッション.

黄先生はけっこうな生活を送ってるようだけど,切り絵の名人のお婆さんの方もちゃんと保護してあげればエエのに.

更に追記:2005.02.13

ざっとしか見てないけど, ヘンリク・ユルコフスキ "知的冒険としての人形劇", 加藤暁子 訳, 新樹社, 1990, ISBN4-7875-8397-2, (Henryk Jurkowski "Aspects of Puppet Theatre", 1988) には記載がないみたい.三人掛かりで操作する「手遣い人形」劇である文楽に関しては記載がある (pp. 120-124) が.「糸操り人形」は英語だと marionette だけど,竹本健治のデビュー作『匣の中の失楽』に登場する数学専攻の大学生,根戸真理夫の名前がマリオネットから来てるのは有名な (?) 話らしい.をれは気付かんかったけど orz.杏子さんの裏にいる作者に操られておるわけですな.

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