- 笠井潔 "天啓の器", Le Récipient de la Révélation, 創元推理文庫, 1998, 2007, ISBN978=4-488-41506-8
己=仲居,ザ・ヒヌマ・マーダーズ,濤晶夫,藤晶夫,藤蒼司,檜沼創嗣,篠原宗司,宗嗣 (p. 461),と来りゃ,どう考えても中井英夫『虚無への供物』だが,中井いじりのように見えて実は,天童直己=竹本健治いぢり? 書かされた挙げ句に乗っ取られるし (笑).
『宴』の暗い熱っぽさの替わりに,竹本風味になっているのは流石.
おお, p. 544 に,こんな一節が,「太宰治の初期作品の言葉を引用すれば,「選ばれし者の恍惚と不安」を表白していたのかもしれない.
」[「太宰の初期作品」とは『葉』.その冒頭に「撰(えら)ばれてあることの 恍惚(こうこつ)と不安と 二つわれにあり」とある.訳は堀口大學らしい.原詩は 1880 年の "Sagesse" (Wisdom) の一節らしいが未だ見付けてない.]! 「」内は USY2BD の『友引前史』に出て来た台詞.ちぇ,何だよ太宰かとか思ったが,まぁ元はヴェルレーヌらしい,ということで.
『虚無への供物』の頭尾
ウチには『虚無への供物』が三種類あるんだが,その冒頭と終結は以下の二つの形に別れていた.
type A
黒ビロードのカーテンは,ゆるやかに波をうって,少しずつ左右へ開きはじめた. ... 朱いろから橙いろに薄れかかった夕日をその上にあてどなく漂わせながら,辛子いろのカーテンは,ゆるやかに波を打って,少しずつ左右からとざされてゆき,立ちつくす黒い影を,いま,まったく隠し終った.
type B
黒天鵞絨のカーテンは,そのとき,わずかにそよいだ.小さな痙攣めいた動きがすばやく走りぬけると,やおら身を翻すようにゆるく波を打って,少しずつ左右へ開きはじめた. ... 朱いろから橙いろに薄れかかった夕日をその上にあてどなく漂わせながら,辛子いろのカーテンは,そのとき,わずかにそよいだ.小さな痙攣めいた動きがすばやく走りぬけると,やおら身を翻すようにゆるく波を打って,少しずつ左右からとざされてゆき,立ちつくす黒い影を,いま,まったく隠し終った.
- "虚無への供物", 中井英夫作品集 X, 三一書房, 1987, type A
- "虚無への供物", 講談社文庫, 1974, 1993, ISBN4-06-136004-3, type B
- "虚無への供物", 中井英夫全集 I, 創元ライブラリ, 1996, ISBN4-488-07011-6, type A
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