「佳いかね,これがわたしにとって大切なことなんだ.彼らを,わたしとではなく,わたしの思想と闘わせなければならないからだ」 © 北一輝.
吉田喜重監督の 1973 年作品.モノクロ.2004 年の放映 は録画途中で別の予約プログラムが立ち上がって,後半が見事おじゃんになってしまっていた.半ば諦めていたのだが,ようやく再放映されて録画も成功である.わははは.
- 北一輝 : 三國連太郎
- 妻・すず : 松村康世
- 兵士 : 三宅康夫
- 兵士の妻 : 倉野章子
- 西田税 : 菅野忠彦
- 岩佐 : 飯沼慧
- 上司 : 内藤武敏
- 傷痍軍人 : 今福正雄
- 朝日平吾 : 辻萬長
- 朝日平吾の姉 : 八木昌子
- 宮崎和命,小林勝也,伊藤初雄,南部彰三,志摩靖彦,南條新太郎,沢田トモ,真木祥次郎,堀北幸男,三田一枝,堀佐和子,小林加奈枝,原聖四郎,四条公彦,石原須磨男,福西忠,吉羽佳子,岩田正,川崎裕之,木治亘,山口竹彦,谷光典,中西宣夫,多賀勝,片岡静香,朝永桐子,坂下光一郎,片山静治,松浦武男,一万田鉄男
- 監督 : 吉田喜重
- 企画 : 葛井欣士郎,吉田喜重
- 脚本 : 別役実
- 撮影 : 長谷川元吉
- 照明 : 中岡源権
- 美術 : 内藤昭
- 音楽 : 一柳慧
- 特別演奏 : 観世栄世,高橋悠治,小杉武久
- 録音 : 久保田幸雄
- 編集 : 岡芳材
- 撮影技術 : 川勝宗一
- 精作主任 : 細井保伯
- 製作 : 上野昂志,葛井欣士郎,岡田茉莉子
- 助監督 : 岡村精,島田開,岡哲
- 衣装 : 加藤昌広,松田一雄
- スチール : 小山田幸生
- 協力 : 文学座,くるみ座,映像京都
- 現代映画社,日本アートシアターギルド (ATG) 共同製作
1921 年の朝日平吾による安田財閥当主善次郎刺殺事件から 1936 年の二・二六事件とその瓦解,および翌 1937 年の北の処刑まで.言ってみれば『日本改造法案大綱』をダシにした,「支配と被支配の内在的メカニズムそのものとの対立を,自らの内に確かめるための「決意」の所産[別役実 "犯罪症候群", 三省堂, 1981, p. 254., ちくま学芸文庫, ISBN4-480-08018-X, 1992, p. 290.]」の状態遷移.この映画でのポイントは三宅康夫演じる無名の兵士.なんとなくスリムな三上寛みたいに見える (笑).お得意の「革命家」と「スパイ」のモティーフ.
北を逮捕した憲兵将校「あれはスパイではありませんでした.でも,あなた (北一輝) に疑われなかったので逆にスパイになりたくなったんだそうです.妙ですね」. 北「妙です.しかし,もしわたしが誰にも疑われなくなったら,わたしもそうしたかも知れません」. 憲兵将校「すると,あれがあなたの本当の弟子だったのかも知れませんね」.
最初期別役作品にときどき出て来る傷痍軍人役の今福正雄は後年の今福將雄.『ジャズ大名』では庵原藩筆頭筆耕の由比軍太夫役.一声発するとすぐ判る.北一輝役の三國連太郎が曖昧な眼付きというか何処とも知れぬ処を見ている風なのは,おそらく右目が義眼ゆえ.しかし,それがかえって逝ってしまったスターリン風に見えてしまうのは皮肉か.それでも,思想と思想との見えざる闘いの圧力は佳く伝わる.作曲は一柳慧,演奏に高橋悠治が参加している.何気に豪華.妙な電子楽器 (ごく初期のシンセ?) も使ってる.
同じ別役脚本の『銀河鉄道の夜』には盲目の無線技士とモールス送受信機が登場していたが,こちらには和文タイプが出て来る.これの登場は大正四年だそうだ.ほぉ〜.加えて,入力系のインタフェースの形状が似ているのも,ちょっと気を引く.
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