えと,入手は観音のフタバでしたかね.再読か再々読.
- ミロラド・パヴィチ "ハザール事典", 工藤幸雄 訳, 東京創元社, 1993, ISBN4-488-01360-0, (Milorad Pavić "Le Dictionaire Khazar", (Hazarski Rećnik), 1988)
「文学史上類を見ない事典小説
(帯)」なんだそうである.体裁としては「Lexicon Corsi,ハザール問題に関する事典の事典 - 1691 年の初版 (1692 年に破棄されたダウプマンヌス版) を再構成し.最新資料を加えた改訂版」なんだそうな.気合い入ってます.「まえがき」やら「成立の経緯」やら「本書の利用法」があって,キリスト教関係資料,イスラーム教関係資料,ユダヤ教関係資料が続き,付属文書として初版編集者の神父の告解やら殺人事件審理の抜粋など. 3 つの宗教関係の資料というのが項目別になっていて語順で並べられているから「事典」.筒井康隆の『心狸学・社怪学』とどう違うんだ? という気もするけど,ハザール関連事項の記述に共通している「ハザール的雰囲気」でまとめられていて統一感があるのが相違か.クラフト・エヴィング商會『すぐそこの遠い場所』晶文社, 1998, 2002, の方がもっと近いか.これも「アゾット事典」だし.
各項目はそれぞれ短編というか掌編と言うか綺譚というか法螺話というかお伽話というか珍談奇談というか,まぁそんな感じだ.しかも,全く甘ったるいところがない.ここが「アゾット事典」と違うとこ.読んだあとの項目が増えていくに連れて,バラバラだった各項目に関連性が発生してある構図に配置されて行くのが面白い.
- 宗教関連資料が 3 つあるのは,現実にハザール族が 3 度信仰を変えたことに対応するらしい.同じ項目に関する記述もあるが,それぞれの立場から書いてあるのがソレらしくて佳い.
- 手元にあるのは「女性版」で「男性版」もある. p. 282 のゴシックの部分が異なるそうだ.
- 原書の「リュート」は訳者の判断で「ウード」にしたとか.手元にあるのでウードが入ってるのはコルトレーンだけだ.鳴らしてみようかいの.
- ジャーゴン・ファイルもこんな読み方ができるんじゃないかな.
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