ぐる式 (貳) より引っ越し作業中.未完.
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2009年7月20日月曜日

井上ひさし『ムサシ』2009

「こんな痩せ寺に,そんな傑物偉物が一時に四足りも集まるわけがないわぃ!」 © 浅川甚兵衛.

彩の国さいたま芸術劇場/「ムサシ」ムサシ | WOWOWオンライン

まずはイントロで武蔵と小次郎の巌流島決闘.本編はその後日談.暗転後,微かな灯りの下で,にょっきり竹林と能舞台のような小さな禅寺が出現.凄ぇ金掛かってるよ,以下,暗転はあれど,舞台はこの寺から動くことがない.これ.え〜と,先の決闘で武蔵に敗れた小次郎は死んでおらず,鎌倉にある臨済宗の禅寺,宝蓮寺に作事係として勤務中の武蔵を,六年越しでリハビリを終え見付け出して乗り込んで来る.だが,この宝蓮寺に集う人々は云々.なんかもう,鎌倉佐助ヶ谷より二里ばかり奥の山里を修行し給ふに,在所のめいめい申しけるは,修行者には何国より来たり給ふ人ぞ.此辺は草深き山なれば,元より仏をくやうする事なければ,況して御僧などには,一鉢の慈悲をほどこすといふ事もかつてしらず,誠に今生の罪人といふは我々が事ならん,あはれ是にしばらく逗留ましませかし,一謁一句の道理をもうけ給はり,活仏にこそならずとも,せめて死仏ともならばなどいひて,四五日もここにとどめ置けり,武蔵申さるは,是より北にあたり竹林の見へ候いか成るところにて候や,などなど.騙されているのは誰かというワトソン探しだった (笑).おそらく二幕構成で,時間はおよそ 3 時間半弱.『表裏源内蛙合戦』よりかは短いんだけど,やっぱ相当長い気がするのに,見てるとあまり長さは感じない.不思議 (笑).

珍しく歌がない.能狂いの宗矩が捻り出す謡曲の類いはあるけど,むしろインラインなので独立してはいない.が,井上=蜷川コンビに付き物のヴィジュアルの凄さは健在.五人六脚や摺り足ダンスなど,身体を張ったギャグも.後者は思わず噴いた (笑).ただ,あまりにベタだな〜,めちゃくちゃオモロいけど (笑).歩き禅は逍遥学派みたいですな.甚兵衛の左腕が乙女に斬られて地ベタにぽとり.その落ちた左腕の指先がにょごにょご動いてるんだが,いつまで経っても動いてる.これも伏線だったのかな.とりあえず,最後のシーンを除いて武蔵と小次郎の決闘コンビ以外は全員人でないものということだったんだが,これはヒトの言葉ではこの二人の再度の決闘は阻止し得ないからだみたいなことを作者本人が NHK のインタビューで語ってたが,決闘を阻止するというより,物理的に決闘できない存在,ということにした方が面白くないかな.ここに出て来る武蔵と小次郎,だいたいがその決闘自体も作り話だそうだから,全然関係ない第三者の夢想に出て来た二つの人格,プラマイは別に逆でも構わないが,その一方がプラス側に振った武蔵でもう一方がマイナス側に振った小次郎,この二人のうちどちらかが消えることは,その第三者の別の人格がもう一方の人格に統合されてしまう.するとプラマイが相殺されて 0 化してしまう.そのために決闘を防ぐ,とか.う〜ん,どちらか一方が殺されることが,長い長い夢から覚めることになる,ってな感じの方がエエかな (笑).

  • 宮本武蔵 (現宝蓮寺作事奉行):藤原竜也
  • 佐々木小次郎:小栗旬
  • 筆屋乙女 (宝蓮寺の大檀那筆屋の跡取り):鈴木杏
  • 沢庵宗彭 (大徳寺長老):辻萬長
  • 柳生宗矩 (将軍家兵法指南役,能狂い):吉田鋼太郎
  • 木屋まい (宝蓮寺の大檀那のご隠居):白石加代子
  • 平心 (源氏山宝蓮寺住持):大石継太
  • 浅川甚兵衛 (八幡宮先の宮侍,茶の宗匠,乙女の父の仇):塚本幸男
  • 浅川官兵衛 (甚兵衛の弟):高橋努
  • 忠助 (筆屋の雑用係):堀文明
  • 只野有膳 (浅川道場師範代):井面猛志
  • 作:井上ひさし (吉川英治『宮本武蔵』より)
  • 演出:蜷川幸雄
  • 音楽:宮川彬良
  • 美術:中越司
  • 照明:勝柴次朗
  • 音響:井上正弘
  • 衣裳:小峰リリー
  • 殺陣:國井正廣
  • 振付:広崎うらん
  • 花柳錦之輔
  • 能指導:本田芳樹
  • 狂言指導:野村萬斎
  • 演出補:井上尊晶
  • 音楽補:池上千尋子
  • 舞台監督:小林清隆
  • テクニカルコーディネーター:金井勇一郎
  • 主催:朝日新聞社
  • テレビ朝日
  • 財団法人埼玉県芸術文化振興財団
  • こまつ座
  • ホリプロ
  • 企画制作:ホリプロ
  • 2009 年 4 月 8 日,彩の国さいたま芸術劇場 大ホール

なんか全然穴がないんですけど (笑).五人六脚や摺り足ダンスは何度見てもオモロいな.摺り足ダンスはタンゴだからよけいに可笑しい.木屋まい@白石加代子のギャグは強烈過ぎです.

2009年7月19日日曜日

井上ひさし『表裏源内蛙合戦』2008

「忘れとった.お前におれは殺せない」 © 平賀源内 (裏).

Bunkamura: 表裏源内蛙合戦

今度は第 1 幕 2 時間強で祝祭的全 2 幕約 4 時間弱.それぞれ The Rise and Fall of Gennai Hiraga というわけで,源内神興亡記.シュタインのマイスタージンガーが 4 時間半弱なので,かろうじて短い.でも,あちらは全 3 幕なので,もうヴァーグナーを笑えません (笑).

演出家自身が言う「過剰な演劇との格闘」は,疲弊してストイックかつひそやかになってしまった演劇界に苛ついている蜷川幸雄が殴り込むバフチーン的カーニバル的ハレ的バタイユ的蕩尽と逸脱 (をいをい).怒濤のヴィジュアルの物量攻勢に,ラブレー的 (笑).観客罵倒付き「智恵のない連中が智恵のある者を誹るときに使う言葉は,いつも山師だ.山師,山師,山師,他に気の利いた言葉はねぇのか! 下らねぇ大衆め.貴様たちが,そんなに下らねぇ見せ物が好きなら,尻尾を振っておれの周りに集まって来い.貴様たちの,下衆な好奇心にいくらでもエサを撒いてやる」.マスかきで始まる下ネタも圧倒的物量だが,歌の量も凄い.だが,第 1 幕でとくに感じたのだが,なんかコントを繋げたものみたいに思えるのはなんでですか.

舞台奥は一面の鏡張り.全員正座の前口上付き.中身はタイトルどおり平賀源内の一代記.ただし源内は表裏の 2 役.ウィリアム・ウィルソンかと思うた (笑).だもんで,蛙の意味も『ちんば蛙』かなと思ったが,まったく違いますな orz.鏡を利用した祝祭的蕩尽の「贖罪のいけにえ」あるいは「神の化身となった犠牲者」は,もちろん源内自身.自分でもそう言ってた.源内の長崎行,高松から水路で別府へ,その後九州横断で日田に抜けて,久留米,佐賀,んで長崎街道に入る.その後,大村,永昌 (諫早),日見峠を経て長崎に至るそうだ.歌詞では判らんけど,これは武雄・嬉野経由の陸路である.南側の肥前鹿島を経由する長崎本線の経路ではない.で,竜踊りって「龍踊」と書いて「じゃおどり」と読ませるんじゃなかったっけ.でも,舞台で鳴り物付きで龍踊披露するなんて (笑).源内 (裏) のナレーション「この頃,上方の歌舞伎狂言作者の並木正三『三十石艠始』 (さんじっこくよふねのはじまり) で回り舞台を考案」で人力回り舞台.小道具は黒子が動かし,人は足をくいくいさせて平行移動.第 2 幕冒頭の「講釈坊主志道軒」,裏源内の 6 分半に渡る長台詞,圧巻.

蛙合戦ってのは,産卵期におけるオス蛙のメスの奪い合いのようすを言うらしく,一茶の「痩せ蛙まけるな一茶これにあり」もこれに因んだものだとか.ヴィジュアルで言うと,おそらくホドロフスキの『ホーリー・マウンテン』序盤に出て来る蛙合戦に近いものだと思われる.んじゃ,この芝居の場合,メスが源内でこれを奪い合って最後に殺すんかよと思ったが,なんか絵的に違う気がするよな.

  • 平賀源内 (表):上川隆也
  • 平賀源内 (裏):勝村政信
  • 青茶婆 (花扇):高岡早紀
  • 大久保一学 (幼名長松) / 鈴木春信:豊原功補
  • 松平頼恭 / 司馬江漢:高橋努
  • 白石茂左衛門 (源内の実父) / 惣二郎安天連 (洗礼名の読みはアンドレ) / 鳥山検校 (金貸座頭のボス) / 田沼意次 / 入墨者い:六平直政
  • (茂左衛門の) 女房お初 = 母 / 遣手婆 ほか:立石凉子
  • 雲井太夫 (娘) / 笠森お仙 ほか:篠原ともえ
  • 高井源之助 (教師) / 杉田玄白 / 将軍家治 / 桜田義好 / 幇間 ほか:大石継太
  • 賀茂真淵:あさひ7オユキ
  • 番頭い (京橋越前屋=現三越,以下同) / 本居宣長 / 植木売 / 前野良沢 / 秋田の家老 / 大名 ほか:福本伸一
  • 彰城東吉 / 夢の市 / 紀伊国屋文左衛門 / 猿廻し / 鼻緒売 / 遊郭の客 / 佐竹義敦 / 大名 ほか:木村靖司
  • 茶坊主 / 黒ン坊の扮装の町人 / 番頭ろ / 瓜売 / 将軍家重 / 菖蒲売 / 僧形の乞食 / 大名 ほか:冨岡弘
  • 関所の役人 / 浅の市 / 大岡忠光 / 暦売 / 侍 / 遊郭の客 / 百姓 / 大名 ほか:二反田雅澄
  • オワイ屋 / 揮を締めた盲 / 入墨者ろ ほか:大富士
  • 長崎の老人 / 三井高光 (越前屋主人) / 七色とうがらし売 / 耳掻売 / 遊郭の主人 / 音羽屋多吉 ほか:飯田邦博
  • 大久保大学 (一学の父,高松藩家老) / 甲秘丹の扮装の町人 / 番頭ほ / 乞食の老人 / 節季候の乞食 / 岡本理兵衛 (戯作版元) / 盲の行司 / 伊勢屋善助 ほか:塚本幸男
  • 唐人 / 丁稚 / 綾の市 / 苗売 / 鰹売 / 遊郭の客 / 歯磨売 / 百姓 / 大名 ほか:堀文明
  • 長崎の役人 / 小者 / 番頭は / ホニホロ売 / 花火売 / 子供 / 首斬り役人 / 百姓 / 大名 ほか:井面猛志
  • 長崎の役人 / 小者 / 番頭に / 田沼の供 / 番太郎 / 金魚売 / 子供/口上の男 / 百姓 / 大名 ほか:篠原正志
  • 関所の役人 / 青もの市 / 足袋売 / 土平飴 / トコロテン曲突 / 遊郭の客 / 団扇屋 / 百姓 / 大名 ほか:田村真
  • 紅毛男 / ヤン・ガランス (カピタン) / 紙鳶売 / 与勘平 / 福屁曲平 / 百姓 / 大名 ほか:星智也
  • 黒ン坊下僕 / 塩売 / 櫛拝売 / 遊郭の客 / 大男根男 / 百姓 / 用人 ほか:澤魁士
  • 樽屋 / 冷水売 / 遊郭の客 / 四ツ目屋 / 百姓 / 大名 ほか:野辺富三
  • 竜踊り / 丁稚 / 七草売 / 子供 / 百姓 / 久五郎 (源内晩年の付き人? 錯乱した源内に斬られる) ほか:西村篤
  • 竜踊り / 丁稚 / 石見銀山売 / 熊 / 百姓 / 用人 ほか:川﨑誠司
  • 竜踊り / 丁稚 / 宝船売 / 提灯売 / 子供 / 百姓 / 用人 ほか:本山里夢
  • 竜踊り / 丁稚 / しゃぼん玉吹き / 百姓 ほか:鈴木重輝
  • 竜踊り / 丁稚 / 煙草売 / 獅子舞 / 子供 / 百姓ほか:増田広太郎
  • 竜踊り / 丁稚 / 鮒売 / 子供 / 百姓 ほか:谷中栄介
  • 女声コーラス (三味線) / 夜鷹 / 柏崎太夫 / 子供 / 娘 ほか:羽子田洋子
  • 女声コーラス (三味線) / 歌比丘尼 / 小夜野太夫 / 子供 / 娘 ほか:難波真奈美
  • 女声コーラス / 枝豆売 / 初音太夫 / 子供 / 娘 ほか:太田馨子
  • 女声コーラス / 腰元 / かぶろ / 子供 / 娘 ほか:蜷川みほ
  • 女声コーラス / 腰元 / 米沢太夫 / 茶屋娘 / 子供 / 娘 ほか:今井あずさ
  • 女声コーラス / 腰元 / 瀬川太夫 / 子供 / 娘 ほか:山崎ちか
  • 加瀬山太夫 / 子供 / 瘡かき女 (廻し一丁で大活躍) / 娘 ほか:茂手木桜子
  • 玉菊太夫 / 子供 / 娘 ほか:荻野美香
  • 脚本:井上ひさし
  • 演出:蜷川幸雄
  • 音楽:朝比奈尚行
  • 美術:中越司
  • 照明:室伏生大
  • 音響:鹿野英之
  • 衣裳:小峰リリー
  • 振付:広崎うらん
  • 所作指導:花柳輔太朗
  • かつらメイク:奥松かつら
  • 演出補;井上尊晶
  • 舞台監督:明石伸一
  • プロデューサー:加藤真規
  • 2008 年 11 月 26 日,Bunkamura シアターコクーン
  • 企画・製作:Bunkamura
  • 東京公演主催:Bunkamura

表裏源内のコンビは緩急自在でさすがだな〜.ただ,裏源内の音程の不安定さはちょっと (笑).六平直政の多様さは凄い.一学 & 春信@豊原功補が飄々とした佇まいで佳い.瀬川太夫@山崎ちか の圧倒的声量に支えられた歌はお見事.龍踊六人衆,あのあんま広くない舞台でよくも.凄ぇ〜.見物は長崎篇のお祭りと江戸の物売り合戦かな.まるで『江戸の呼売りの声』 (笑).

2009年7月16日木曜日

井上ひさし『道元の冒険』2008

「人生は夢,夢こそ人生.その人生を誰がたかが単なると言えるか.そして仏法の成り立ちもまた夢と同じことなのだ」 © 道元.

Bunkamura: 道元の冒険

何か『珍訳聖書』 (1973 年初版) を読んだときのと雰囲気が似てるなと思ったら, 1971 年初演という,比較的古い作品だった.翌日の『表裏源内蛙合戦』はそれより古い 1970 年の初演.

本編のみだと,およそ 3 時間弱.今まで観たうちで,いちばん歌の分量が多いかも.ってか多過ぎ.禅宗日本曹洞宗開祖道元の半生記とみせかけて実は…….その半世紀を見ているのが,阿部寛演じるもう一方の婦女暴行と結婚詐欺で捕まってる男.こいつももともと宗教者だという話だが,いわゆる胡散臭い新興宗教者ですか (笑).でも足してちょうど一人前,というか道元の失われた半身みたいな感じがするのは何故か.冒頭の Gong は梵鐘を模してると思うんだが,それならもっとそれらしい音響にしてくれ.鐘の音じゃなくて,パーカッションにしかに聞こえんよ.いきなりバスガイドが出てくるんだが,これは単なる案内役というか導入役ということでエエのか.ちなみに,場所は宇治の興聖宝林寺,日時は 1243 年 4 月ということで,この年は道元が越前に下向した年にあたる.阿部寛は 2 幕めも出ずっぱりなんだが,ほとんどステージ左で座禅組んでるだけ.座禅自体は 1 幕の後半以降ずっと.これは開山七周年記念の余興「道元禅師半生記」が眼前で演じられている,ということらしい.道元の南宋渡航以降が第 2 幕.『座禅は随処』は,メシ喰うのも風呂入るのもこれ弁道,っつ〜こってすな (笑).四斗樽に馬鈴薯〜大豆〜芥子粒・胡麻粒〜塩〜水.なんかエッシャー的な無限のお話ですか.塩というのがよく判らんが,溶かした後で分離することも考えてあるんだろか.道元=親鸞=日蓮>栄西.栄西の政治権力日和見主義を批判している……ですかね.当時でも相当の批判があったらしい.ケツは時間的に後の方に収束してしまう (笑).

  • 主として道元に扮する男 / 男 (婦女暴行罪 + 結婚詐欺で拘置中):阿部寛
  • 主として懐奘 (道元の右腕補佐役) に扮する男 / 精神分析医A / 良観 (母方の叔父,延暦寺高僧.良顕?) / 豪雲 (比叡山僧兵隊長) / 公円 (比叡山天台宗座主) / 栄西 (日本臨済宗開祖) / 如浄 (太白山天童景徳寺) / 親鸞:木場勝己
  • 主として義介 (禅僧団経理部長格) に扮する男 / 警官 / 赤橋政方 (鎌倉幕府六波羅治安判事) / 学生A / 青年道元:北村有起哉
  • 主として義演 (調理場主任) に扮する男 / 精神鑑定医B / 正覚尼の信男 / 源実朝 / 老典座 (阿育王山鄮峰広利寺,宗五大禅寺の一つ) / 衆僧 / 日蓮:大石継太
  • 主として義尹 (後鳥羽上皇第三皇子,道元の秘書役) に扮する男 / 鷹司兼平 (近衛府中将) / 学生B / 明全 (栄西の弟子) / 読書人 (先生) / 衆僧 / 壮年道元:高橋洋
  • 主として禅僧一に扮する女 / 彩雲 (僧兵) / 少年僧A / 姑娘 / 衆僧 / 帝:神保共子
  • 主として禅僧二に扮する女 / 少年道元 / 赤橋の家来 / 姑娘 / 衆僧:栗山千明
  • 主として禅僧三に扮する女 / 正覚尼 (実朝の元奥方,後鳥羽上皇の縁続き) / 男の妻 / 姑娘 / 衆僧 / 貴族A:横山めぐみ
  • 主として禅僧四に扮する女 / 玄雲 (僧兵) / 介添僧 / 少年僧B / 姑娘 / 衆僧 / 貴族B:池谷のぶえ
  • 主として禅僧五に扮する女 / 泰雲 (僧兵) / 看護婦 / 姑娘 / 衆僧:片岡サチ
  • 看護夫:手塚秀彰
  • 観光バスガイドの女:茂手木桜子
  • 御仏:金子文 (ご苦労さまです)
  • 作:井上ひさし
  • 演出:蜷川幸雄
  • 音楽:伊藤ヨタロウ
  • 美術:中越司
  • 照明:山口暁
  • 音響:井上正弘
  • 衣装:小峰リリー
  • 振付:前田清美
  • 舞台監督:濱野貴彦
  • 2008 年 7 月 19 日, Bunkamura シアターコクーン

一人多役をネタにした要素とかも面白いが,やっぱちょっと長過ぎ.歌が多いので,その分スピード感が削がれるのも一因だろうか.ステージ天井からの撮影カットが何箇所か.これはラストの場面では効果的だった.このカットは客席からはぜったい見られないもんな.阿部寛,めさデカいな.まさに睥睨する感じ? 栗山千明はショートの方が可愛いかも (笑).

固有名詞依存症

川端康成の『雪国』の石坂洋次郎の『青い山脈』の麓に井伏鱒二の『駅前旅館』がありました.わたしは,その旅館の漱石の『坊ちゃん』です.

作者名はけっこうですから.

やがてわたしは青春の門や肉体の門をいくつも潜って田舎教師になりました.あるとき,女盛りの砂の女とノルウェーの森を見に行きました.蝉時雨の中で坂の上の雲を眺めながら語り合っていると,エロ事師と悪名の高い風の又三郎がわたしたちを写真に撮り,世間に公表しようとしました.そのネガを奪い取り注文の多い料理店で張込みをしていると,ちょうど夜明け前でしたが,真向かいの蟹工船から投げられた砂の器が眉間に命中して,そのはずみで路傍の石に蹴躓き橋のない川に転落したのです.

小説の題名で身の上を語っていました.これは固有名詞依存症の一種ではないでしょうか