ぐる式 (貳) より引っ越し作業中.未完.
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2009年7月20日月曜日

井上ひさし『ムサシ』2009

「こんな痩せ寺に,そんな傑物偉物が一時に四足りも集まるわけがないわぃ!」 © 浅川甚兵衛.

彩の国さいたま芸術劇場/「ムサシ」ムサシ | WOWOWオンライン

まずはイントロで武蔵と小次郎の巌流島決闘.本編はその後日談.暗転後,微かな灯りの下で,にょっきり竹林と能舞台のような小さな禅寺が出現.凄ぇ金掛かってるよ,以下,暗転はあれど,舞台はこの寺から動くことがない.これ.え〜と,先の決闘で武蔵に敗れた小次郎は死んでおらず,鎌倉にある臨済宗の禅寺,宝蓮寺に作事係として勤務中の武蔵を,六年越しでリハビリを終え見付け出して乗り込んで来る.だが,この宝蓮寺に集う人々は云々.なんかもう,鎌倉佐助ヶ谷より二里ばかり奥の山里を修行し給ふに,在所のめいめい申しけるは,修行者には何国より来たり給ふ人ぞ.此辺は草深き山なれば,元より仏をくやうする事なければ,況して御僧などには,一鉢の慈悲をほどこすといふ事もかつてしらず,誠に今生の罪人といふは我々が事ならん,あはれ是にしばらく逗留ましませかし,一謁一句の道理をもうけ給はり,活仏にこそならずとも,せめて死仏ともならばなどいひて,四五日もここにとどめ置けり,武蔵申さるは,是より北にあたり竹林の見へ候いか成るところにて候や,などなど.騙されているのは誰かというワトソン探しだった (笑).おそらく二幕構成で,時間はおよそ 3 時間半弱.『表裏源内蛙合戦』よりかは短いんだけど,やっぱ相当長い気がするのに,見てるとあまり長さは感じない.不思議 (笑).

珍しく歌がない.能狂いの宗矩が捻り出す謡曲の類いはあるけど,むしろインラインなので独立してはいない.が,井上=蜷川コンビに付き物のヴィジュアルの凄さは健在.五人六脚や摺り足ダンスなど,身体を張ったギャグも.後者は思わず噴いた (笑).ただ,あまりにベタだな〜,めちゃくちゃオモロいけど (笑).歩き禅は逍遥学派みたいですな.甚兵衛の左腕が乙女に斬られて地ベタにぽとり.その落ちた左腕の指先がにょごにょご動いてるんだが,いつまで経っても動いてる.これも伏線だったのかな.とりあえず,最後のシーンを除いて武蔵と小次郎の決闘コンビ以外は全員人でないものということだったんだが,これはヒトの言葉ではこの二人の再度の決闘は阻止し得ないからだみたいなことを作者本人が NHK のインタビューで語ってたが,決闘を阻止するというより,物理的に決闘できない存在,ということにした方が面白くないかな.ここに出て来る武蔵と小次郎,だいたいがその決闘自体も作り話だそうだから,全然関係ない第三者の夢想に出て来た二つの人格,プラマイは別に逆でも構わないが,その一方がプラス側に振った武蔵でもう一方がマイナス側に振った小次郎,この二人のうちどちらかが消えることは,その第三者の別の人格がもう一方の人格に統合されてしまう.するとプラマイが相殺されて 0 化してしまう.そのために決闘を防ぐ,とか.う〜ん,どちらか一方が殺されることが,長い長い夢から覚めることになる,ってな感じの方がエエかな (笑).

  • 宮本武蔵 (現宝蓮寺作事奉行):藤原竜也
  • 佐々木小次郎:小栗旬
  • 筆屋乙女 (宝蓮寺の大檀那筆屋の跡取り):鈴木杏
  • 沢庵宗彭 (大徳寺長老):辻萬長
  • 柳生宗矩 (将軍家兵法指南役,能狂い):吉田鋼太郎
  • 木屋まい (宝蓮寺の大檀那のご隠居):白石加代子
  • 平心 (源氏山宝蓮寺住持):大石継太
  • 浅川甚兵衛 (八幡宮先の宮侍,茶の宗匠,乙女の父の仇):塚本幸男
  • 浅川官兵衛 (甚兵衛の弟):高橋努
  • 忠助 (筆屋の雑用係):堀文明
  • 只野有膳 (浅川道場師範代):井面猛志
  • 作:井上ひさし (吉川英治『宮本武蔵』より)
  • 演出:蜷川幸雄
  • 音楽:宮川彬良
  • 美術:中越司
  • 照明:勝柴次朗
  • 音響:井上正弘
  • 衣裳:小峰リリー
  • 殺陣:國井正廣
  • 振付:広崎うらん
  • 花柳錦之輔
  • 能指導:本田芳樹
  • 狂言指導:野村萬斎
  • 演出補:井上尊晶
  • 音楽補:池上千尋子
  • 舞台監督:小林清隆
  • テクニカルコーディネーター:金井勇一郎
  • 主催:朝日新聞社
  • テレビ朝日
  • 財団法人埼玉県芸術文化振興財団
  • こまつ座
  • ホリプロ
  • 企画制作:ホリプロ
  • 2009 年 4 月 8 日,彩の国さいたま芸術劇場 大ホール

なんか全然穴がないんですけど (笑).五人六脚や摺り足ダンスは何度見てもオモロいな.摺り足ダンスはタンゴだからよけいに可笑しい.木屋まい@白石加代子のギャグは強烈過ぎです.

2009年7月19日日曜日

井上ひさし『表裏源内蛙合戦』2008

「忘れとった.お前におれは殺せない」 © 平賀源内 (裏).

Bunkamura: 表裏源内蛙合戦

今度は第 1 幕 2 時間強で祝祭的全 2 幕約 4 時間弱.それぞれ The Rise and Fall of Gennai Hiraga というわけで,源内神興亡記.シュタインのマイスタージンガーが 4 時間半弱なので,かろうじて短い.でも,あちらは全 3 幕なので,もうヴァーグナーを笑えません (笑).

演出家自身が言う「過剰な演劇との格闘」は,疲弊してストイックかつひそやかになってしまった演劇界に苛ついている蜷川幸雄が殴り込むバフチーン的カーニバル的ハレ的バタイユ的蕩尽と逸脱 (をいをい).怒濤のヴィジュアルの物量攻勢に,ラブレー的 (笑).観客罵倒付き「智恵のない連中が智恵のある者を誹るときに使う言葉は,いつも山師だ.山師,山師,山師,他に気の利いた言葉はねぇのか! 下らねぇ大衆め.貴様たちが,そんなに下らねぇ見せ物が好きなら,尻尾を振っておれの周りに集まって来い.貴様たちの,下衆な好奇心にいくらでもエサを撒いてやる」.マスかきで始まる下ネタも圧倒的物量だが,歌の量も凄い.だが,第 1 幕でとくに感じたのだが,なんかコントを繋げたものみたいに思えるのはなんでですか.

舞台奥は一面の鏡張り.全員正座の前口上付き.中身はタイトルどおり平賀源内の一代記.ただし源内は表裏の 2 役.ウィリアム・ウィルソンかと思うた (笑).だもんで,蛙の意味も『ちんば蛙』かなと思ったが,まったく違いますな orz.鏡を利用した祝祭的蕩尽の「贖罪のいけにえ」あるいは「神の化身となった犠牲者」は,もちろん源内自身.自分でもそう言ってた.源内の長崎行,高松から水路で別府へ,その後九州横断で日田に抜けて,久留米,佐賀,んで長崎街道に入る.その後,大村,永昌 (諫早),日見峠を経て長崎に至るそうだ.歌詞では判らんけど,これは武雄・嬉野経由の陸路である.南側の肥前鹿島を経由する長崎本線の経路ではない.で,竜踊りって「龍踊」と書いて「じゃおどり」と読ませるんじゃなかったっけ.でも,舞台で鳴り物付きで龍踊披露するなんて (笑).源内 (裏) のナレーション「この頃,上方の歌舞伎狂言作者の並木正三『三十石艠始』 (さんじっこくよふねのはじまり) で回り舞台を考案」で人力回り舞台.小道具は黒子が動かし,人は足をくいくいさせて平行移動.第 2 幕冒頭の「講釈坊主志道軒」,裏源内の 6 分半に渡る長台詞,圧巻.

蛙合戦ってのは,産卵期におけるオス蛙のメスの奪い合いのようすを言うらしく,一茶の「痩せ蛙まけるな一茶これにあり」もこれに因んだものだとか.ヴィジュアルで言うと,おそらくホドロフスキの『ホーリー・マウンテン』序盤に出て来る蛙合戦に近いものだと思われる.んじゃ,この芝居の場合,メスが源内でこれを奪い合って最後に殺すんかよと思ったが,なんか絵的に違う気がするよな.

  • 平賀源内 (表):上川隆也
  • 平賀源内 (裏):勝村政信
  • 青茶婆 (花扇):高岡早紀
  • 大久保一学 (幼名長松) / 鈴木春信:豊原功補
  • 松平頼恭 / 司馬江漢:高橋努
  • 白石茂左衛門 (源内の実父) / 惣二郎安天連 (洗礼名の読みはアンドレ) / 鳥山検校 (金貸座頭のボス) / 田沼意次 / 入墨者い:六平直政
  • (茂左衛門の) 女房お初 = 母 / 遣手婆 ほか:立石凉子
  • 雲井太夫 (娘) / 笠森お仙 ほか:篠原ともえ
  • 高井源之助 (教師) / 杉田玄白 / 将軍家治 / 桜田義好 / 幇間 ほか:大石継太
  • 賀茂真淵:あさひ7オユキ
  • 番頭い (京橋越前屋=現三越,以下同) / 本居宣長 / 植木売 / 前野良沢 / 秋田の家老 / 大名 ほか:福本伸一
  • 彰城東吉 / 夢の市 / 紀伊国屋文左衛門 / 猿廻し / 鼻緒売 / 遊郭の客 / 佐竹義敦 / 大名 ほか:木村靖司
  • 茶坊主 / 黒ン坊の扮装の町人 / 番頭ろ / 瓜売 / 将軍家重 / 菖蒲売 / 僧形の乞食 / 大名 ほか:冨岡弘
  • 関所の役人 / 浅の市 / 大岡忠光 / 暦売 / 侍 / 遊郭の客 / 百姓 / 大名 ほか:二反田雅澄
  • オワイ屋 / 揮を締めた盲 / 入墨者ろ ほか:大富士
  • 長崎の老人 / 三井高光 (越前屋主人) / 七色とうがらし売 / 耳掻売 / 遊郭の主人 / 音羽屋多吉 ほか:飯田邦博
  • 大久保大学 (一学の父,高松藩家老) / 甲秘丹の扮装の町人 / 番頭ほ / 乞食の老人 / 節季候の乞食 / 岡本理兵衛 (戯作版元) / 盲の行司 / 伊勢屋善助 ほか:塚本幸男
  • 唐人 / 丁稚 / 綾の市 / 苗売 / 鰹売 / 遊郭の客 / 歯磨売 / 百姓 / 大名 ほか:堀文明
  • 長崎の役人 / 小者 / 番頭は / ホニホロ売 / 花火売 / 子供 / 首斬り役人 / 百姓 / 大名 ほか:井面猛志
  • 長崎の役人 / 小者 / 番頭に / 田沼の供 / 番太郎 / 金魚売 / 子供/口上の男 / 百姓 / 大名 ほか:篠原正志
  • 関所の役人 / 青もの市 / 足袋売 / 土平飴 / トコロテン曲突 / 遊郭の客 / 団扇屋 / 百姓 / 大名 ほか:田村真
  • 紅毛男 / ヤン・ガランス (カピタン) / 紙鳶売 / 与勘平 / 福屁曲平 / 百姓 / 大名 ほか:星智也
  • 黒ン坊下僕 / 塩売 / 櫛拝売 / 遊郭の客 / 大男根男 / 百姓 / 用人 ほか:澤魁士
  • 樽屋 / 冷水売 / 遊郭の客 / 四ツ目屋 / 百姓 / 大名 ほか:野辺富三
  • 竜踊り / 丁稚 / 七草売 / 子供 / 百姓 / 久五郎 (源内晩年の付き人? 錯乱した源内に斬られる) ほか:西村篤
  • 竜踊り / 丁稚 / 石見銀山売 / 熊 / 百姓 / 用人 ほか:川﨑誠司
  • 竜踊り / 丁稚 / 宝船売 / 提灯売 / 子供 / 百姓 / 用人 ほか:本山里夢
  • 竜踊り / 丁稚 / しゃぼん玉吹き / 百姓 ほか:鈴木重輝
  • 竜踊り / 丁稚 / 煙草売 / 獅子舞 / 子供 / 百姓ほか:増田広太郎
  • 竜踊り / 丁稚 / 鮒売 / 子供 / 百姓 ほか:谷中栄介
  • 女声コーラス (三味線) / 夜鷹 / 柏崎太夫 / 子供 / 娘 ほか:羽子田洋子
  • 女声コーラス (三味線) / 歌比丘尼 / 小夜野太夫 / 子供 / 娘 ほか:難波真奈美
  • 女声コーラス / 枝豆売 / 初音太夫 / 子供 / 娘 ほか:太田馨子
  • 女声コーラス / 腰元 / かぶろ / 子供 / 娘 ほか:蜷川みほ
  • 女声コーラス / 腰元 / 米沢太夫 / 茶屋娘 / 子供 / 娘 ほか:今井あずさ
  • 女声コーラス / 腰元 / 瀬川太夫 / 子供 / 娘 ほか:山崎ちか
  • 加瀬山太夫 / 子供 / 瘡かき女 (廻し一丁で大活躍) / 娘 ほか:茂手木桜子
  • 玉菊太夫 / 子供 / 娘 ほか:荻野美香
  • 脚本:井上ひさし
  • 演出:蜷川幸雄
  • 音楽:朝比奈尚行
  • 美術:中越司
  • 照明:室伏生大
  • 音響:鹿野英之
  • 衣裳:小峰リリー
  • 振付:広崎うらん
  • 所作指導:花柳輔太朗
  • かつらメイク:奥松かつら
  • 演出補;井上尊晶
  • 舞台監督:明石伸一
  • プロデューサー:加藤真規
  • 2008 年 11 月 26 日,Bunkamura シアターコクーン
  • 企画・製作:Bunkamura
  • 東京公演主催:Bunkamura

表裏源内のコンビは緩急自在でさすがだな〜.ただ,裏源内の音程の不安定さはちょっと (笑).六平直政の多様さは凄い.一学 & 春信@豊原功補が飄々とした佇まいで佳い.瀬川太夫@山崎ちか の圧倒的声量に支えられた歌はお見事.龍踊六人衆,あのあんま広くない舞台でよくも.凄ぇ〜.見物は長崎篇のお祭りと江戸の物売り合戦かな.まるで『江戸の呼売りの声』 (笑).

2009年7月16日木曜日

井上ひさし『道元の冒険』2008

「人生は夢,夢こそ人生.その人生を誰がたかが単なると言えるか.そして仏法の成り立ちもまた夢と同じことなのだ」 © 道元.

Bunkamura: 道元の冒険

何か『珍訳聖書』 (1973 年初版) を読んだときのと雰囲気が似てるなと思ったら, 1971 年初演という,比較的古い作品だった.翌日の『表裏源内蛙合戦』はそれより古い 1970 年の初演.

本編のみだと,およそ 3 時間弱.今まで観たうちで,いちばん歌の分量が多いかも.ってか多過ぎ.禅宗日本曹洞宗開祖道元の半生記とみせかけて実は…….その半世紀を見ているのが,阿部寛演じるもう一方の婦女暴行と結婚詐欺で捕まってる男.こいつももともと宗教者だという話だが,いわゆる胡散臭い新興宗教者ですか (笑).でも足してちょうど一人前,というか道元の失われた半身みたいな感じがするのは何故か.冒頭の Gong は梵鐘を模してると思うんだが,それならもっとそれらしい音響にしてくれ.鐘の音じゃなくて,パーカッションにしかに聞こえんよ.いきなりバスガイドが出てくるんだが,これは単なる案内役というか導入役ということでエエのか.ちなみに,場所は宇治の興聖宝林寺,日時は 1243 年 4 月ということで,この年は道元が越前に下向した年にあたる.阿部寛は 2 幕めも出ずっぱりなんだが,ほとんどステージ左で座禅組んでるだけ.座禅自体は 1 幕の後半以降ずっと.これは開山七周年記念の余興「道元禅師半生記」が眼前で演じられている,ということらしい.道元の南宋渡航以降が第 2 幕.『座禅は随処』は,メシ喰うのも風呂入るのもこれ弁道,っつ〜こってすな (笑).四斗樽に馬鈴薯〜大豆〜芥子粒・胡麻粒〜塩〜水.なんかエッシャー的な無限のお話ですか.塩というのがよく判らんが,溶かした後で分離することも考えてあるんだろか.道元=親鸞=日蓮>栄西.栄西の政治権力日和見主義を批判している……ですかね.当時でも相当の批判があったらしい.ケツは時間的に後の方に収束してしまう (笑).

  • 主として道元に扮する男 / 男 (婦女暴行罪 + 結婚詐欺で拘置中):阿部寛
  • 主として懐奘 (道元の右腕補佐役) に扮する男 / 精神分析医A / 良観 (母方の叔父,延暦寺高僧.良顕?) / 豪雲 (比叡山僧兵隊長) / 公円 (比叡山天台宗座主) / 栄西 (日本臨済宗開祖) / 如浄 (太白山天童景徳寺) / 親鸞:木場勝己
  • 主として義介 (禅僧団経理部長格) に扮する男 / 警官 / 赤橋政方 (鎌倉幕府六波羅治安判事) / 学生A / 青年道元:北村有起哉
  • 主として義演 (調理場主任) に扮する男 / 精神鑑定医B / 正覚尼の信男 / 源実朝 / 老典座 (阿育王山鄮峰広利寺,宗五大禅寺の一つ) / 衆僧 / 日蓮:大石継太
  • 主として義尹 (後鳥羽上皇第三皇子,道元の秘書役) に扮する男 / 鷹司兼平 (近衛府中将) / 学生B / 明全 (栄西の弟子) / 読書人 (先生) / 衆僧 / 壮年道元:高橋洋
  • 主として禅僧一に扮する女 / 彩雲 (僧兵) / 少年僧A / 姑娘 / 衆僧 / 帝:神保共子
  • 主として禅僧二に扮する女 / 少年道元 / 赤橋の家来 / 姑娘 / 衆僧:栗山千明
  • 主として禅僧三に扮する女 / 正覚尼 (実朝の元奥方,後鳥羽上皇の縁続き) / 男の妻 / 姑娘 / 衆僧 / 貴族A:横山めぐみ
  • 主として禅僧四に扮する女 / 玄雲 (僧兵) / 介添僧 / 少年僧B / 姑娘 / 衆僧 / 貴族B:池谷のぶえ
  • 主として禅僧五に扮する女 / 泰雲 (僧兵) / 看護婦 / 姑娘 / 衆僧:片岡サチ
  • 看護夫:手塚秀彰
  • 観光バスガイドの女:茂手木桜子
  • 御仏:金子文 (ご苦労さまです)
  • 作:井上ひさし
  • 演出:蜷川幸雄
  • 音楽:伊藤ヨタロウ
  • 美術:中越司
  • 照明:山口暁
  • 音響:井上正弘
  • 衣装:小峰リリー
  • 振付:前田清美
  • 舞台監督:濱野貴彦
  • 2008 年 7 月 19 日, Bunkamura シアターコクーン

一人多役をネタにした要素とかも面白いが,やっぱちょっと長過ぎ.歌が多いので,その分スピード感が削がれるのも一因だろうか.ステージ天井からの撮影カットが何箇所か.これはラストの場面では効果的だった.このカットは客席からはぜったい見られないもんな.阿部寛,めさデカいな.まさに睥睨する感じ? 栗山千明はショートの方が可愛いかも (笑).

固有名詞依存症

川端康成の『雪国』の石坂洋次郎の『青い山脈』の麓に井伏鱒二の『駅前旅館』がありました.わたしは,その旅館の漱石の『坊ちゃん』です.

作者名はけっこうですから.

やがてわたしは青春の門や肉体の門をいくつも潜って田舎教師になりました.あるとき,女盛りの砂の女とノルウェーの森を見に行きました.蝉時雨の中で坂の上の雲を眺めながら語り合っていると,エロ事師と悪名の高い風の又三郎がわたしたちを写真に撮り,世間に公表しようとしました.そのネガを奪い取り注文の多い料理店で張込みをしていると,ちょうど夜明け前でしたが,真向かいの蟹工船から投げられた砂の器が眉間に命中して,そのはずみで路傍の石に蹴躓き橋のない川に転落したのです.

小説の題名で身の上を語っていました.これは固有名詞依存症の一種ではないでしょうか

2008年6月22日日曜日

彩の国シェイクスピア・シリーズ 2003 蜷川ペリクリーズ

「場面がどの国へ移ろうが,みな同じ言葉を喋りますが,これは罪とも言えぬ罪,どうかお目こぼし願います.わたくしは場面と場面の合間に立ち,物語がどのように進んで行くか,この口からお伝えします」 © ガワー@白石加代子.

暗い舞台上にいきなり蛇口十個.滴る水を受ける桶.銃声,破裂音,爆破音,飛行機の爆音.滑り込んでくるゆったりとした弦楽.鐘が鳴り,三々五々集まる人々.村人もいれば兵士もいる.わしらの村は戦場だった.命の水.一同礼の後に散開.琵琶法師の二人組ガワーが語り始めるペリクリーズ (とタイーサとマリーナ) の冒険綺譚.白石加代子のガワーが「アンタイオカス」と声を発すると「安泰犯す」に聞こえる[おそらく意図的なもの. Antiochus's riddle だし.].法師二人が語り終え退出,太鼓が響き舞台奥の扉が開き本編開始.まず登場するはペリクリーズとアンタイオカス王その他.何このトゥーランドットな衣装は (笑).ガワーの語りは琵琶語りだけでなく,人形浄瑠璃 (実際には人形は俳優が演じるが,黒子も付く.裏側は鏡で観る),さても南京玉簾なども登場.難破の場面はスペクタクル (笑).第二の嵐でのロープを使った動きは,世仁下乃一座がやった岡安伸治の『ドリーム・エクスプレス AT』みたいだ.三時間の間に二回も嵐に遭うとは,オデュッセウス以上に神々の不興を買っているんすか,何をやったんだ,ペリクリーズ? (笑)

例えば原文は Pericles: Entire Play.お話はほんまに勧善懲悪のファンタジー. MIT で公開されているテキストは一応喜劇のジャンルに放り込まれてるが,こりゃ喜劇かい? と思ったヤツは昔からいて,「ロマンス劇」という分類項目にあたるそうな.ここに入るのは他に『テンペスト』など.あ〜,それなら納得.で,その勧善懲悪劇の前と後に付くのが戦場のシーン.舞台展開には銃声,破裂音,爆破音,飛行機の爆音.劇中劇ということ? それはどっちでもエエが,ともかく勧善懲悪は物語の中でしか果たされないということ? せめて虚構の中なりとも秩序をってこと?

  • ペリクリーズ (タイアの領主):内野聖陽
  • タイーサ (ペリクリーズの妻・サイモニディーズの娘)・マリーナ (その娘):田中裕子
  • ガワー (語り手)・ダイオナイザ (クリーオンの妻)・女郎屋のおかみ:白石加代子
  • アンタイオカス (アンタイオケの王)・ペンタポリスの貴族・セリモン (タイーサを救ったエフェソスの医師)・女郎屋の亭主:瑳川哲朗
  • ガワー (語り手)・クリーオン (ターサスの太守)・サイモニディーズ (ペンタポリスの王)・ライシマカス (ミティリーニの太守):市村正親
  • タイアの貴族・漁師・騎士の従者・娼婦:梅津栄
  • タイアの貴族・漁師・騎士の従者・ボールト:石井愃一
  • ヘリケイナス (ペリクリーズの代理でタイアを統治):田代隆秀
  • アンタイオケの従者・タイアの貴族・エスカニーズ・浪・騎士の従者・セリモンの召使・娼婦・ミティリーニの紳士:富岡弘
  • タリアード・浪・ペンタポリスの貴族・海賊・ミティリーニの貴族:大川浩樹
  • アンタイオケの従者・タイアの貴族・漁師・ペンタポリスの貴族・船遣い・ミティリーニの貴族・リーオナイン (マリーナの暗殺失敗者):妹尾正文
  • アンタイオケの従者・タイアの従者・後見・騎士・タイアの水夫・セリモンの召使・海賊・ミティリーニの貴族:新川將人
  • アンタイオケの使者・クリーオン人形・騎士・タイアの貴族人形・エフェソスの水夫・巫女:井面猛
  • アンタイオケの従者・タイアの従者・後見・騎士・タイアの水夫・セリモンの召使・船遣い・浪・エフェソスの召使:鈴木豊
  • アンタイオカスの王女・浪・ペンタポリスの貴族・タイーサ人形・エフェソスの貧者・娼婦・エフェソスの住人:月川勇気
  • アンタイオケの徒者・ターサスの貴族・後見・騎士・エフェソスの紳士・タイアの水夫:田村真
  • アンタイオケの従者・浪・騎士・後見・タイアの水夫・海賊・エフェソスの住人:野辺富三
  • 貴婦人・リコリダ (マリーナの乳母)・船・女神ダイアナ:景山仁美
  • ペリクリーズ人形・貴婦人・マリーナ人形・巫女:花柳珠千鶴
  • 後見・浪・貴婦人・サイモニディーズ人形・ダイオナイザ人形・巫女:徳垣友子
  • 浪・貴婦人・後見・フィロテン人形・はしけ・巫女:藤田さくら
  • タイアの使者人形・浪・貴婦人・後見・フィレモン・船・巫女:藤田直子
  • 浪・貴婦人・リコリダ人形・後見:瞳ゆり
  • ミュージシャン:朴根鐘
  • 美術総監督:諸井誠 (おそらく 同一人物)
  • 演出・芸術監督:蜷川幸雄
  • 翻訳:松岡和子
  • 装置:中越司
  • 衣装:小峰リリー
  • 音響:井上正弘
  • 振付:前田清実,花柳錦之輔
  • 音楽:笠松泰洋
  • 2003 年 3 月,彩の国さいたま芸術劇場 大ホール (冒頭のテロップでは 2003 年 2 月).

ガワーのコンビ,白石加代子と市村正親は最強ですね (笑).正直,本筋であるペリクリーズ & タイーサ / ・マリーナの話より面白い.しっかし,三時間超は如何にも長い.「バルジ大作戦みたくトイレ休憩挟むのかい?」,ガワーのコンビだけが救いか.でもビジュアルが強烈だし面白かったからエエか (笑).

で,エンド・クレジット.「CUST」って何?

2008年6月8日日曜日

蜷川オレステース 2006

「では,それぞれの道を行くが佳い.最も麗しき平和の女神を敬いながら」 © アポローン.

『エーレクトラー』の後日談.『反悲劇』中の第五篇『神神がいたころの話』に相当する話だが,ずいぶんのオチャラけてるんでびっくり (笑).一応悲劇のジャンルに入ってるんだが,最後はめでたしめだたしで終わるし,何と言っても deus ex machina が大々的に介入してくるしで,かの『オイディプース』に比べると.ずいぶんと毛色が違った感じになる.お話は,姦婦抹殺のつもりが母殺しとされて狂を発したオレステースと姉エーレクトラーはアルゴス人の裁きを待っている.トロイアから帰還したメネラーオスに助力を歎願するが入れられず,テュンダレオースからも疎まれた末,死刑判決が下る.あくまで二人を支持するピュラデースを加えた三人は,ヘレネーを殺して舘に火を放とうとするが,ヘレネーは神隠し (笑).ヘルミオネーを人質に取ってメネラーオスを面罵しているところへ,アポローンの介入が入り云々,と言った感じ.最後のアポローンに至っては,なんなんですか,こりゃ.噴いてしまったではないですか (笑).

雨に擬した水が始終滴るという舞台で,確かに目を引くが,ときに水音がうるさくて台詞が聞き取り難いのは困りもの.女ばかりのコロスが,しばしな泣き女集団にもなるのは何の冗談か,ちょっと面白いかも.音楽は無国籍ヴォーカルとパーカッションで,なかなかカッチョエエ.あと,やっぱ叫びが多いのはかなり興を削ぐな〜.なんか白々しい.前半のタメを受け止めるべきカタルシスがないのもなんともな〜.最後のアポローンの介入にアメリカ国歌が被るのも,なんともあざとい.要らんことせんと,素のままを出せば佳かったのかも知れない.ってか,蜷川演出とギリシア悲劇は合わない? 『オイディプース』は希有な例外ですか?

  • オレステース:藤原竜也
  • エーレクトラー:中嶋朋子
  • ピュラデース (オレステースの従兄弟):北村有起哉
  • メネラーオス (アガメムノーンの弟,ヘレネーの夫):吉田鋼太郎
  • ヘレネー (クリュタイムネーストラーの妹,トロイ戦争の元凶):香寿たつき
  • プリュギア人 (ヘレネー付きの奴隷):横田栄司
  • 知らせの者:田村真
  • ヘルミオネー (メネラーオスとヘレネーの娘):前川遙子
  • アポローン:寺泉憲
  • テュンダレオース (レーダーの夫,ヘレネーの戸籍上の父):瑳川哲朗
  • コロス:市川夏江,江幡洋子,井上夏葉,羽子田洋子,難波真奈美,今井あずさ,栗田愛巳,松坂早苗,江間みずき,さじえりな,植木彩子,成澤希見子,額田麻椰,村田京子
  • 侍女:永野雪絵,茂手木桜子
  • 従者:横田透,兼子和大
  • 作:エウリーピデース
  • 演出:蜷川幸雄
  • 翻訳:山形治江
  • 美術:中越司
  • 照明:原田保
  • 衣装:小峰リリー
  • 音響:井上正弘
  • 音楽:池上知嘉子
  • 演奏:東佳樹,内田真裕子,山下由紀子,石橋知佳
  • 2006 年 9 月 14 日,シアター・コクーン

テュンダレオースが説く暴力の連鎖説は説得力抜群.メネラーオスの右顧左眄振りもお見事.オレステースは確かに寿命を縮めてそうな大熱演.細見のエーレクトラーに烈婦振りはないので L は無理としても Q とか P なら……,どうだろう (笑).ピュラデース,その表情からてっきり最後に裏切るんだと思ってた.すんません (笑).ヘルミオネー,アポローンの介入でオレステースとの結婚を命ぜられたときの嫌そうな顔が忘れられない (笑).

やっぱこの前の『エーレクトラー』篇の方が観たいな〜.シュトラウスのオペラ版でもエエですから,と思ったが,『サロメ』とは違って,予想よりも映像には恵まれとらんようだな (笑).

2007年9月24日月曜日

井上ひさし『藪原検校』 2007

「祭りに敵を屠ることぐらい見物衆を興奮させるものは他にありません」 © 塙保己市.

お目当ては段田安則.

頭からなんかエロ要素過多のコーラスが多くて『珍訳聖書』 (1973 年初版) みたいだなと思ったら.ほんまに古い (1973 年初演) 作品だった.展開のスピードは『珍訳聖書』の方が早そうだが,これは読んでみた感覚であって実際に見た訳ではないから,ほんとのところはどうか判らない.あ〜,杉の市とお市の交接シーンとかもあるけど,北村想の言葉を借りれば「せいこうせいこう.ゴジラのふぁっくや.大性交」[北村想 "寿歌", 不思議想時記, プレイガイドジャーナル, 1980, p. 205.]という感じ (笑).

定信の「あまりに残酷過ぎて,残酷を超えて馬鹿騒ぎになるような殺し方」という問いに応じて保己市が杉の市の処刑法として提案する「三段切り」,「まず罪人を後ろ手に縛り上げ,高い処に吊り下げます.第一刀で罪人の腰から下を切り離します.そうしますと,宙に残った頭と胴は平衡を失い,頭が重いためにぐるりと半回転し下方に降り,胴が上になります.その瞬間を狙って第二刀.首を切り離します」.これに「もう一つ,刑の執行直前にあの男に末期蕎麦を腹一杯食べさせてやってください」と付け加えるのも忘れない.その結果どうなるかというと,名和弓雄『拷問刑罰史』の挿画を伴った島田荘司の文章[島田荘司 "暗闇坂の人喰いの木", 講談社文庫, 1994, 1998, ISBN4-06-185694-4, pp. 280-281.]である.保己市はこの三段切りを杉の市への「花道」と称している.この点では神官は明らかに生贄 (この場合の被差別者は物理的に徴ある者) の側に立っている.

  • 杉の市 (二代目藪原検校):古田新太
  • お市:田中裕子
  • 七兵衛,とっかえべい屋,塙保己市,安房の市,首切り役人:段田安則
  • お志保,日本橋の橋番:梅沢昌代
  • 熊の市,佐久間検校,東照宮宮侍,魚売り,倉吉:六平直政
  • 琴の市,馬具屋,善兵衛,伊豆の市,初代藪原検校:山本龍二
  • 佐久間検校の結解,仲買人,若い座郎,甲斐の市,定廻同心浅野,松平定信;松田洋治
  • 片割れ女,寡婦:神保共子
  • 売り子,寡婦の娘:景山仁美
  • 語り手の盲太夫:壤晴彦
  • 作:井上ひさし
  • 演出:蜷川幸雄
  • 音楽:宇崎竜童
  • ギター:赤崎郁洋
  • 2007 年 5 月 17 日,シアター・コクーン

劇伴がギター一本なのは台本どおりなんだそうだが,イントロのエレアコを使った津軽三味線風はともかく,フォーク調はうるさい.というか邪魔になる.と,最初の方は勝手なことを思っていたが,う〜ん,たまにはエエかと諦めると,あんま気にならなくなる.まぁ,別役実の『街と飛行船』みたいな形態.

2007年8月26日日曜日

彩の国シェイクスピア・シリーズ 2007 蜷川コリオレイナス

階段舞台

「今のおれは愚鈍な役者だ.自分の役を忘れ台詞が出て来ない.醜態を晒すだけだ」 © ケイアス・マーシアス・コリオレイナス[原文は「Like a dull actor now,I have forgot my part, and I am out,Even to a full disgrace.」.].他にも,「お前もよくいっているでしょう,何よりもわたしの褒め言葉で軍人になったと.それなら今度もわたしに誉められるよう,一度も演じたことのない役だけれど,しっかり務めていらっしゃい」 © ヴォラムニア[原文は「I prithee now, sweet son, as thou hast saidMy praises made thee first a soldier, so,To have my praise for this, perform a partThou hast not done before.」.],「本来のわたしに背くことをさせたいのですか.わたしはこういう男です.むしろその役を佳く演じていると言ってください」 © マーシアス[原文は「would you have meFalse to my nature? Rather say I playThe man I am.」.]など,やっぱ芝居に関連する台詞がちょくちょく見られるな.

彩の国シェイクスピア・シリーズの第十六発目は三時間超.なんと舞台のほとんどはでっかい階段. The Rise and Fall だから階段か (笑).段数は二十段ぐらいだが横はステージいっぱいに広がっている.両脇には大きな鏡.舞台が実際以上に横に大きく見える.あと,大勢の登場人物.元老院はともかく,市民に兵士というモブ・シーンの迫力.一瞬映画でも見てるような錯覚.凄げぇド派手だな〜.

お話は,政治的にウブなコリオレイナスの栄光と没落.唐沢寿明の怒濤の台詞は,なんか『Casshern』を思い起こさせる (笑).がそれを上回っていやらしいのが勝村政信の敵役オーフィディアス.それをさらに上回るのがマーシアスの母ヴォラムニア役の白石加代子.インタビューでは役に入り込み難かったというなことを言ってたが,さすがに凄いっす.コリオレイナスはシェイクスピア最後の悲劇だそうだが,『ハムレット』や『マクベス』,『リア王』とかに比べると人物造形がシンプル (悪く言えば類型的) で判りやすくなってるような気がする.キャラクタよりもイデオロギー重視だな (笑).

元々女性陣はヴォラムニア,ヴァージリア,ヴァレリアの三人ぐらいしか出て来ないが,マーシアスの妻であるヴァージリアの影の薄さはいったいどうしたんですかね.一種の巨大な怪物的スケールを持つヴォラムニア以外はまったく目立たん.もう一つ,ここで護民官と民衆が表す平民主義はまるで衆愚政治のソレとして描かれていて,それが今の日本の現状とぴったりマッチ orz.

ちょいとばかし『攻殻』の謡を思わせるイントロとエンディング近くの野卑なコーラスを交えた音楽はとても佳いが,他はそれほどでもなかった.長丁場でその上叫んでばっかりの役者陣,さすがに疲れているのか,声はかすれ気味.

  • ケイアス・マーシアス・コリオレイナス:唐沢寿明
  • ヴォラムニア:白石加代子
  • タラス・オーフィディアス:勝村政信
  • ヴァージリア:香寿たつき
  • メニーニアス・アグリッパ:吉田鋼太郎
  • シシニアス・ヴェリュータス (護民官):瑳川哲朗
  • コミニアス:原康義
  • タイタス・ラーシアス:大友龍三郎
  • ジューニアス・ブルータス (護民官):手塚秀彰
  • 元老院議員 (ローマ,ヴォルサイ):小田豊
  • 市民5,元老院議員,兵士,役人 1:冨岡弘
  • 市民 1,兵士,ローマ人 1,召使 3:大川浩樹
  • 市民 2,兵士:小林正寛
  • 市民 4,アンシアムの市民,元老院議員,兵士:高瀬哲朗
  • ヴァレリア:高橋礼恵
  • 市民 3,兵士,ローマ人 3,召使 1:樋浦勉
  • ナイケイナー,市民,使者,兵士,元老院議員:鈴木豊
  • 警保官,市民,兵士,副官,元老院議員:清家栄一
  • 召使 2,市民 2,兵士,役人 2:塚本幸男
  • 共謀者 1,市民,兵士,元老院議員,歩哨 2:新川將人
  • 共謀者 3,市民,兵士,元老院議員,副官:二反田雅澄
  • 元老院議員,市民,兵士 1,ラッパ手:福田潔
  • 使者,市民,召使,兵士:井面猛志
  • 使者,市民,召使,兵士:篠原正志
  • 歩俏 1,市民,兵士,元老院議員:鍛治直人
  • 元老院議員 2 (ローマ,ヴォルサイ),市民,兵士:高山春夫
  • 元老院議員 2 (ローマ,ヴォルサイ),貴族 2:北川勝博
  • 伝令,市民,兵士,元老院議員,共謀者 2:星智也
  • 市民 8,兵士 2,ローマ人 2:KAI
  • エイドリアン,市民,兵士,貴族 1:田村真
  • 市民,兵士:角田明彦
  • 市民,召使,兵士:藤沼剛
  • 侍女:梶浦美樹
  • 市民 6,兵士,使者:泉裕
  • 市民,兵士,元老院議員:川崎誠一郎
  • 市民,兵士:川崎誠司
  • 使者,市民,召使,兵士:原田琢磨
  • 市民,兵士,使者:石田佳央
  • 幼いマーシアス,市民:前橋聖丈 / 楢山和己
  • 演出:蜷川幸雄
  • 翻訳:松岡和子
  • 美術:中越司
  • 照明:原田保
  • 衣装:小峰リリー
  • 音響:井上正弘
  • 音楽:笠原泰洋
  • 彩の国さいたま芸術劇場

いや〜,金が掛かっとるな〜.ちなみにベートーヴェンのアレはコレではなくハインリヒ・ヨーゼフ・フォン・コリン作の戯曲に付けられたものなので,コレとは腹違いになる.そりゃそうだ,こちらのコリオランは反民主派の貴族制の代表だもんな〜.

2007年7月29日日曜日

彩の国シェイクスピア・シリーズ 2001 蜷川ハムレット

誰でも知ってる『ハムレット』だが,観るのは初めてだ (笑).いや〜,やっぱ読むのと観るのじゃ大違いだねぇ.もう 60 歳近いハムレットだが,違和感は最初だけで,あとは言葉のパワーに押し切られる.プロはやっぱ違うな〜.あと,え〜と,音響のせいだろか,台詞は一部聞き取り難い.時間は三時間弱.なんでもシェイクスピアの作品中でも最大規模なんだそうである.

この劇中では殺人が五件.『マクベス』より多い.自殺というか事故死は一件.これは『マクベス』の自殺数と同じ.ところで,先王ハムレットは劇中劇のとおり毒殺されたのだろうか.ここではクローディアスと先王の亡霊は同じ役者が演じてる.う〜む.事故死したオフィーリアを除くと,殺されたのは宰相ポローニアス家とデンマーク王家の人間だけだ.得をするのは誰か? もちろんフォーティンブラスである.お人好しのクローディアスに王位乗っ取りを示唆したのはバイクに乗ったフォーティンブラスじゃねぇのか (笑).

例の有名な台詞,「尼寺へ行け (Get thee to a nunnery:)」はそのままだったが,「To be, or not to be: that is the question:」は「生きてとどまるか,消えてなくなるか,それが問題だ」となっていた.あとは「このデンマークでは何かが腐っている (Something is rotten in the state of Denmark.)」だな.『われらのギャング』の第四章「トリッキー,国民に訴える」の (有名な演説「デンマークではなにかが腐っている」[フィリップ・ロス "われらのギャング", 青山南 訳, 集英社, 1977, pp.89-129, (Philip Roth "Our Gang", Starring Tricky And His Friends, 1971)]) の出典が『ハムレット』だとは知らんかった.今読み返してみたら,三箇所ほど「ハムレットの城」として言及[ibid, pp. 93-95.]されていたのに,である…… orz.

  • ハムレット:市村正親
  • オフィーリア:篠原涼子
  • オリヴィア:宮本裕子
  • ポローニアス:湯浅実
  • クローディアス・先王ハムレットの亡霊:瑳川哲朗
  • ガートルード:夏木マリ
  • ホレイショー:大森博
  • レアティーズ:橋本さとし
  • ローゼンクランツ:大川浩樹
  • ギルデンスターン:横田栄司
  • オズリック:清水幹生
  • 座長・墓掘り:沢竜二
  • 黙劇の王妃・墓掘りの相棒:山谷初男
  • 劇中の王妃:月川勇気
  • フォーティンブラス:成宮寛貴
  • 序詞役:マメ山田
  • マーセラス:土師孝也
  • 隊長:大友龍三郎
  • 紳士:伊藤哲哉
  • 牧師:高瀬哲朗
  • コーネリアス・黙劇の王:衣川城二
  • バーナード・伝令:二反田雅澄
  • フランシスコー・ルシアーナス:篠原征志
  • ヴォルティマンド・黙劇の暗殺者・水夫:廣哲也
  • 使者:矢野晴彦
  • 劇中の王:木村雅
  • 演奏:天野裕子,池上知嘉子,則包桜,中山理恵,渡辺理恵
  • 翻訳:松岡和子
  • 芸術総監督:諸井誠
  • 芸術監督・演出:蜷川幸雄
  • 装置:中越司
  • 衣装:小峰リリー
  • ファイト:廣哲也
  • 音響:井上正弘
  • 音楽アドバイザー:池上知嘉子
  • 2001 年 9 月,彩の国さいたま芸術劇場 小ホール

『ハムレット』の登場人物って,こんなにいるんだ.

2005年2月28日月曜日

蜷川オイディプース 2004

オイディプス王 公式サイト. 2004 年 7 月 3 日,ギリシアはアテネの野外劇場ヘロデス・アティコス劇場での公演を 2005 年 2 月 26 日(土) - 午後 01:30 〜 午後 04:00 - BS2,土曜シアター 山川静夫の "新・華麗なる招待席" で放映.舞台本編は二時間に収まる.演出:蜷川幸雄, 翻訳:山形冶江,衣装:前田文子,音楽:東儀秀樹,オイディプス:野村萬斎,イオカステ:麻実れい,クレオン:吉田鋼太郎,テイレシアス:壤晴彦,神官:瑳川哲朗,コリントスの使者:川辺久造,羊飼い:三谷昇,報告者:菅生隆之.

凄いよ,これは.もう,凄まじい迫力.カタストロフに向けてぎりぎりと緊縛されていく集中力に加えて,言葉があまりにも激越なもんだから,一瞬たりとも眼が離せない.ソロもだが,人数少ないとはいえコロスの威力がまざまざと.観終わるとへとへと.

音響系と雅楽を混ぜたような東儀秀樹の音楽は,初めはその叙情性に違和感を覚えたけど,なんかこう,眼が吊り上がったような芝居に対する中和剤としては佳かったのかも知れない.

The killer awoke before dawn, he put his boots on. He took a face from the ancient gallery and he walked on down the hall. He went into the room where his sister lived, and ... then he paid a visit to his brother, and then he walked on down the hall. And he came to a door ... and he looked inside,

"Father ?",
"Yes, son ?",
"I want to kill you"

"Mother ?",
"Yes, dear ?",
"I want to ..."

[ part of "The End" by Jim Morrison from The Doors Official Website より ]

ところで,テーバイ王家三部作のうち,『アンティゴネー』はク・ナウカのライヴを 録画できた ので残りは『コロノスのオイディプス』,早く観たいな (笑).あと,『エーレクトラー』もどっかやってない? オペラの方でもエエけど.