ぐる式 (貳) より引っ越し作業中.未完.
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2007年5月27日日曜日

Noir #25 業火の淵

Phantom of Noir
コレが例の Phantom of Noir.

「ミレイユをお願いね.あなたもミレイユもこれからきっと辛い試練に晒される.お願い,あの子の力になってあげて.確かに,愛が人を殺すこともある.でも,忘れないで.憎しみはけして人を救いはしない.けして」 © オデット・ブーケの (おそらく) 最期の言葉.→の画像は,アルテナさまとオデット・ブーケという二人の母の対決とも受け取れる.相違点は「憎しみはけして人を救いはしない」か否かの一点のみ.

クロエの酒と薔薇の日々の終わり.今回は実質 6 分弱で終了.禊処にミレイユが姿を現したとたんに, 3P2 のサバイバル対決戦が開始される.-1 となるのはクロエ.なぜクロエが真っ先に退場するハメになったか.単純な話, x1 < x2 + x3 ということだと思うけどねぇ.いや,それだと「憎しみ」云々は無関係になっちまう (笑).

それはそれとして, "melodie" 一発で黒霧香がリセットされてしまうという重大な事実をアルテナさまが見逃していたというのはどうも嘘言くさい気がしてならん.だいたい,あの懐中時計をミレイユの手元に残しておくことを黙認していたのはソルダ自身だし.アルテナさまの悲願はノワール復活による原初ソルダへの回帰だけど,そのノワールの一人がクロエであるということは必須の条件だったのか.そうでなかったとしたら? アルテナさまは 前回 「わたしたちの理想,原初ソルダへの回帰は必ず成し遂げてみせる.たとえこの身がどうなろうと」と明言している.供犠となったクロエが反転する可能性ははたして皆無か.そこにクロエどころかアルテナさますら不在であっても,その目的が必然的に果たされるような,あるいは作者を葬り去るような仕掛け[笠井潔『天啓の宴』帯の煽り文句に曰く,

作者は作品において顕現する存在のうちにおのれを埋葬しなければならない.

笠井潔 "天啓の宴", 双葉社, 1996, ISBN4-575-23278-5.]が施されていたとしたら?

  1. part A サブ・タイトル前.
    1. 第十二話 以来のクロエ・ナレーション.台詞もアルテナさまの「ノワール,其は古よりの運命の名.死を司る二人の処女.黒き御霊は迷児を,劫火の淵に誘ひ給ふ」で変更なし. "les soldats". 0’20".
    2. ミレイユ,「荘園」の入り口に到着.舘へ向かう.守護村の再生は間に合いませんでしたか. "salva nos" のア・カペラ・コーラス.遠くから. 0’20".
  2. part A サブ・タイトル後
    1. 「荘園」の舘内で古式伝承再生「ノワール復活式」[舘内に掲げられている「司祭長と黒き手の処女たち」の図.
      司祭長と黒き手の処女たち
      三者それぞれの髪の長さに注目.]
      の準備の真っ最中〜アルテナさま,二人に禊を命じる[アルテナさま,クロエ,霧香 (仮) の三人が同一画面に入っているシーンは意外に少ない.
      アルテナさま,クロエ,霧香 (仮) の身長比
      ここでようやく三人の身長比が判る.]
      . "church". 0’35".
    2. 貧乳二人禊中〜復活式の準備が整いました〜ボルヌの中の人が中の人なだけに詐欺の疑いが (笑) 〜禊の終わりを待っていたかのようにミレイユ到着〜銃口を向ける黒霧香〜ミレイユもしょうがねぇなと銃口を向け合う.サンスの人であるミレイユはいついかなるときでも色に関係なく「霧香 (仮)」を「霧香」と呼ぶ. "secret game" 丸々一曲. 3’44".
    3. 直前の黒霧香「ここはあなたの来るところではない」を受けて銃撃戦開始〜クロエは傍観したまま出て来ず,霧香とミレイユの二人だけ[黒霧香との銃撃戦でミレイユが見せる印象的なシーン.
      ミレイユ vs. 霧香 (仮)
      腰を落としながら連射する.ミレイユが持つ銃の大きさがころころ変わることに対しては不問 (笑).]
      . "canta per me". 2’29".
    4. 例の『Phantom of Inferno』のあの場面[Phantom of Inferno』のあの場面とは,もちろん
      Phantom of Inferno
      ↑コレである.]
      よろしくデッド・ロック,ミレイユが投げ上げた懐中時計が地に落下して保護ガラスが割れ針が飛んだ瞬間に鳴り出す〜黒霧香にロックが掛かり,あっという間に白霧香に状態遷移〜まだリカバリし忘れてたことがあったのか,オデットの言葉が蘇る〜握ってられない霧香,銃を落とす〜下からの照明を浴びて待つアルテナさま〜交叉する二本の剣. "melodie". 1’12".
  3. part B
    1. ようやくクロエが割って入る. "melodie". 0’13".
    2. 睨み合うクロエとミレイユ〜今度はクロエ vs. ミレイユ戦〜ミレイユの一発でまた思い出す霧香.お前はいったいどんだけ忘れとるんだ.っつか,どうやったらそんなに記憶が分断されるんだ〜霧香手を出さず,というか再起動中なので手を出せず〜迷いがないので余裕コイて講釈を垂れるクロエ. そんなん だから時間的余裕を与えてしまい霧香の再起動プロセスが完了してしまう〜教訓:楽勝そうに見える仕事でもナメて掛かっては失敗する可能性があります. "killing".ただし主メロはサックス系じゃなくてシンセ系に取り替えてある. 2’46".
    3. (※) 今度は事態を把握したクロエと霧香の対戦.めまぐるしい〜「怒りで我を忘れている」〜ナイフを捨てた霧香,「お願いクロエ,もう止めて」〜クロエの方もこれが見納めと ケーキ・フォーク をまじまじと.ミドル・テンポのタイトル不詳曲.まだ新曲があったのか. 1’27".
    4. (※) ケーキ・フォーク を捨てるクロエ〜しばし黙考後,猛然とミレイユに襲い掛かる. ピアノ・ソロのタイトル不詳曲.コード進行が前の曲と同じなので,こちらは別の曲じゃなくて前の曲のコーダかも知れない. 0’30".
    5. 黒霧香との歓喜のときを妨げるミレイユに天誅を下そうと喉元にナイフを突き出したクロエ〜あと 20cm ぐらいのところで,ソルダの秘術により時間と空間をワープした白霧香が割って入り,クロエが捨てた ケーキ・フォーク でクロエの胸を刺す[クロエの最期.
      The Last of Chloe
      三本の苗木のうち,一本が消えた瞬間でもある.このとき,クロエはすでに ケーキ・フォーク と訣別しているので,一直線にミレイユに突進する.一方,霧香はクロエが捨てた ケーキ・フォーク を拾って,さらに回り込んでクロエとミレイユの間に入るという神業を見せる.
      霧香とクロエの動き
      ソルダの秘術は時間と空間を超越する.]
      〜クロエの最期の言葉は「ノワール」〜アルテナさまが掲げる燭台,三本の蝋燭のうち向かっていちばん左が消える〜少し哀しそうなアルテナさま〜霧香,「クロエはもう一人のわたしだった.わたしは人を殺せる.人を殺してわたしは哀しい」〜佇むアルテナさま〜石台にクロエの亡骸を横たえる〜「なぜ.どうして.こんなこと」と問い掛ける霧香〜 A パートで投げ上げた懐中時計をいつの間にか回収していたミレイユ,気を取り直して (霧香の問いには答えず) 「行こう.霧香.まだ終わりじゃない」[アルテナさま,クロエ,霧香 (仮) の身長比が出たので,ミレイユも加えてみる.
      ミレイユ,霧香の身長比
      まぁ,うるさいことを言えば,黒霧香と白霧香の身長が同じかどうかは曖昧だが (笑).]
      〜泣き崩れる霧香. "secret game". 3’34".
    6. クロエの頭の上拳一つ分のところに ケーキ・フォーク を供える霧香〜歩き出す二人組.ノワール復活はここに完成された. "secret game" のア・カペラ版. 0’30".
  4. 比率
    • 17’40" / 20’40" = 85.5% (03’00").意識している分よりも,意外と鳴っている時間が長かった. 前回 よりも 4 秒短いだけで,堂々の第二位.

3! / 2 の全パターンを展開.ま, 3 つで済むんですがね.またしても戦闘シーンで新曲というのも驚かされるが,ここはやはりもっとも印象的なのは多用される "secret game". 両パートでそれぞれほぼ丸々一曲使われる他にも,クロエの鎮魂曲代わりにも使われている.この曲はどう聴いても ("lullaby" + "chloe" + "power-hungry") / 3 という感じが拭えない.あと,やっぱ "salva nos", "canta per me" の二曲も.もうこの子らが 月下之茶宴 に興ずることはないのですよ.

  1. 「二人冥府にありて 密やかに子等を護らん 落日に黒き涙を 誕生」.はてさて,ここで「誕生」したものは,はたして何か.

2007年5月20日日曜日

Noir #24 暗黒回帰

↓今のアルテナさま
今のアルテナさま
↓七年ほど前のアルテナさま
七年ほど前のアルテナさま

「(中略) 選び抜かれたノワールの三本の苗木のうち,わたしたちはコルシカの娘をあえて放置しました.それは,それぞれを全く異なる土壌で育むため.異なる水と光,異なる風と闇を与えた上ですべてを乗り越え,強靭に成長した苗木のみがノワールとなる」 © アルテナさま.それは間引きの文化,定住を前提とする文化ですね.しかしながら,「闇に生きる」秘密結社としては森林の思考,狩猟民族の文化も必要ではないでしょうか.農耕文化が必然的に生み出すであろう技術革新を取り入れた砂漠の思考というミックス・インという形態にした方が打たれ強くないですか.

終盤へ向けて,関係者が一箇所に集まりつつある.っつ〜か,離れているのはミレイユだけなんだが.そちらの方は二箇所だけしか描写されず,残りは「荘園」に入った霧香の方の事情が描かれるのみ.霧香入場後の翌日の「荘園」に,マレンヌとボルヌを双頭とするアルテナさまを盟主とするアルテナ派の集合.反アルテナ派を抑えてなんとしてもノワール復活の「儀式を強行せねばなりません」.アルテナさま,一人じゃなかったのね (笑).

原初ソルダってノワールの下部組織って規定していなかったのかね. n - 2 の分は「ノワール娘。」にすればエエのに.コストが掛かっているか否かは問わず,「黒き手」は二本に限定されるとしても,二名だけじゃ絶対数足りんでしょ.

  1. part A サブ・タイトル前.
    1. 霧香 (仮) ナレーション. 第二十一話 でクロエも「本当の名前はわたしも知らない」と告白しているので (仮) を付けるのがスジであるが,煩瑣なので従来どおりで行こう (笑). "les soldats". 0’20".
    2. (※) 前回部分.霧香の「荘園」入場〜はしゃぐクロエ〜お迎えするアルテナさま.クロエが一瞬不安そうな表情を見せる. "secret game" や "melodie" と似た感じのマレット系のタイトル不詳曲.初出. 1’33".
  2. part A サブ・タイトル後
    1. (※) 中世風の暮らしを続けているという「荘園」案内[「荘園」内部の一室.確か食事をとる部屋.
      「荘園」内部
      見てのとおり質素極まる部屋だが,テーブルは磨き上げられていて窓が反射しているのが判る.
      「荘園」外部のアルテナさまと霧香.
      「荘園」外部
      ほとんど廃墟のような佇まい.真下作品にはこうしたイメージが比較的佳く使われているように思う.]
      .サブ・タイトル前のと似た感じだが違う (ちょっとテンポも速い) タイトル不詳曲.初出. 1’32".
    2. 夕方.柱〜夕陽に染まった「荘園」の一室.六本の槍と血にまみれた二本の大剣と折れた剣〜拷問室らしい部屋〜トレードマークのぞんぞろりんのマントを脱いだクロエが合流.鹿爪らしい顔付きで霧香の「死の気配」だの「わたしの家」だのという言葉を聞いてたくせに,ちょっと躊躇ったあとで「わたしの部屋に来ませんか?」といきなり柔らかくなってしまうクロエがステキ.バグパイプ風というかディゲリドゥ (ディジュリドゥ) 風,あるいは笙や篳篥のようなとんがった音色が目立つ "colosseum". 1’29".
    3. 回想.ブーケ家惨殺である「コルシカでの勤め」を淡々とこなす霧香と,それを背後から見守っているクロエ〜今に戻って「それはまさに黒き手の処女,ノワールの姿でした」,その後クロエはあそこで霧香に落ちたと告白している (笑) 〜窓から東の方を眺めている二人〜アジトで懐中時計を見て気合いを入れているミレイユ.時刻は五時六分. "melodie". 1’24".
    4. 夜の「荘園」〜非電化生活〜ランゴーニュ写本の原本を発見〜読みふける霧香を背後から見守っているアルテナさま〜何を高揚したのか音読を始める霧香に微笑むアルテナさま, 二回目 の「愛で人を殺せるのなら,憎しみで人を救えもするでしょう」,よく帰って来てくれました」〜就寝時間〜なぜか躊躇う霧香,待つアルテナさま,右手に ケーキ・フォーク を握りしめてやっぱりストーカーまがいのクロエ. "lullaby". 3’04".
  3. part B
    1. アルテナ盟主派の双頭マレンヌとボルヌ,霧香とクロエにお目見え「美しい……」〜廃墟のようなコロシアムで励むクロエと霧香〜アルテナ盟主派トップ三会談,マレンヌ「この力は重大ですよ,アルテナ.力なくして理想の実現はあり得ません」,アルテナさま「判っています.わたしたちの理想,原初ソルダへの回帰は必ず成し遂げてみせる.たとえこの身がどうなろうと」. "killing".ただし主メロはサックス系じゃなくてシンセ系に取り替えてある. 2’51".
    2. ノワール候補生二人の水浴び〜ケーキ・フォーク〜クロエ「儀式が済んだら,あなたのお友だちもここに呼びましょう.そして,また三人でお茶を飲みましょう」〜霧香「三本目の苗木は必要ない」. "secret game" のア・カペラ版. 1’34".
    3. アルテナさまに「コルシカでの勤め」に使った銃を「返しておきましょう」と差し出されて,弾倉を確認し銃身を引いてようやく全貌を思い出す霧香.なんだ,今までのリカバリは不完全だったのかよ.昔のアルテナさまは眼がもっと丸かった (笑).そのアルテナさまに銃を向ける霧香〜まったく動じないアルテナさま〜心配そうなクロエ,不測の事態に備えて準備〜言語は銃より強し〜暗黒に全身浸かっているから「もっとも許されざる罪をこの身に背負いましょう」という重大な飛躍は置いとくとしても,アルテナさまが妙な調子で断言する二箇所, 1) 「あなたは帰って来たのです,自らの故郷に.その心地佳さを受け入れなさい」, 2) 「罪の中の罪.わたしたちはともに闇を生きるもの.あなたの安住の地はここにしかありません」〜ランドローバーで「荘園」まっしぐらのミレイユ. "le grand retour". 3’57".
  4. 比率
    • 17’44" / 20’40" = 85.8% (02’56").な,な,なんと 第二十二話 を 44 秒も上回って含有率更新.平均も 12 秒も上回る.盛り上がっとるな〜.

ソルダ内の「荘園」内が舞台なので. "lullaby" や "melodie", "le grand retour" や "les soldats" に加えて "colosseum" が初登場. "killing" のソロがオチャラケた感じのサックスじゃなくてシンセ系に変更されているのは賢明な処置.

  1. 「クロエという名の愛 最後の試練 地獄の炎に晒されて 業火の淵」.え〜と,クロエにとっての「酒と薔薇の日々」の最後 (笑).この酒は苦かったようですな.

2007年4月22日日曜日

Noir #20 罪の中の罪

アルテナさま二態

「愛で人を殺せるのなら,憎しみで人を救えもするだろう」 © アルテナさま.中の人がもっとも嫌っていた有名な台詞.

アルテナさまご自身によるソルダの歴史と目的の解説.畏れ多くも賢くもソルダ統轄本部の次期司祭長と目されるアルテナさまご自身の手を煩わすとは,なんとも勿体ないことで御座りまする.汝ら信民よ,頭を垂れて拝聴するが佳い.

ソルダの起源は,十世紀末に遡り,「この世界に復讐する.弱き者虐げられた者を助け,地上に正義を実現しよう」をモットーに結成された秘密結社.元々は絶対の秘密と忠誠の誓いを要求する何らかの宗教的背景を負ったものだったと思われる.宗教的背景は,司祭長職が最大の権力を得る云々の発言から,現在でも色濃く残っていることが伺える.

霧香三態

黒霧香の出現は 前回 の次回予告で明かされていたとおりだが,もう一つ,灰霧香とも称すべき第三の人格も出現.こちらは黒霧香から今までどおりの白霧香に状態遷移する際に発生する大量のページ・イン / ページ・アウトによってディスクがのたうち回っている状態のようで,極めて反応が遅い.瞳孔も全開状態 (ひょっとすると全閉状態かも知れん).白から黒へ推移する際も同じ状況に陥るとすると,いくらヌケてると言えどさすがに「パリの騎士たち」とやらに仕留められるであろうから,白→黒→灰→白と推移すると考えるべきか.

アルテナさまによるソルダの歴史の解説およびその見解

ソルダに関するアルテナさまの説明は七箇所におよぶが,そのうち公式見解とおぼしきものは初めの二つだけで,あとの五つはアルテナさまご自身による見解であろうと思われるので分けて示す.

  • 歴史
    1. hist1; それは古い古い物語.千年も前に世界の姿を見た人々がいました.十世紀末,それは起こりました.権力を巡る醜悪な陰謀.大勢の人が殺されました. (この辺りから BGM が消える) 老人も幼子も (この辺りからエコーが掛かる).人が人に対してなし得る最悪の暴虐.人々はその極限を目の当たりにしました.何人かがその地獄を生き延びました.彼らは悟りました.人の世の本質を.地上は常に邪悪と絶望に満ちているのだと.生き残った人々は誓い合いました.この世界に復讐する.弱き者虐げられた者を助け,地上に正義を実現しよう.絶対の秘密と忠誠の誓い,ここにソルダが初めて芽生えたのです.
    2. hist2; ソルダの血は荒野に染み渡り,大河へと流れ込む.盟約を結んだ者たちは各地へと散り,社会の裏に隠れ住んだのです.
  • 見解
    1. opin1; 愛で人を殺せるのなら,憎しみで人を救えもするだろう.
    2. opin2; 時代が移り変わろうとも,人の世は変わらない.地は哀しみに満ちて,人はただ悪を為す.なのに天は,天は何も語ろうとはしない.誰かが罪を背負わねばならない.誰が,罪を.
    3. opin3; 原初ソルダには二人の処女の姿があった.神に仕える身でありながら,あえて剣を執った二人の処女.その勇猛は幾万の騎士にも勝り,聖母の慈愛と死神の冷酷を併せ持つ.ソルダの司祭長の傍らに控える黒き手の処女たち.その名をノワール.
    4. opin4; ソルダの両手は二人の処女.ノワールの地位と名はその後も代々引き継がれた.汚れを恐れぬ処女たちによって.厳正に選び抜かれ,黒き糸で結ばれた二人によって.それは崇高な使命なのだから.
    5. opin5; 人は罪を犯す.如何に足掻こうとも逃れられない.それが人の業なのだから.ならばせめて,人のためにこの手を汚そう.原初ソルダがあえて犯した罪.それは人の業に対する贖罪.ノワールは罪を重ねる.業の歴史は繰り返される.際限もなく,永遠に.
  • 「荘園」に関するクロエの註
    1. (荘園とは) この地上で唯一時の流れから取り残された聖地.ノワール継承の儀式はそこれで行われます.

併せて,「荘園」に関するクロエの註も付け加えた.

  1. part A サブ・タイトル前
    1. 霧香ナレーション. "les soldats". 0’20".
    2. 前話 回想,一回目の「黒き御手は嬰児の」でユニゾるところから〜ミレイユのインターラプト〜我に返る霧香. "premonition". 0’46".
  2. part A サブ・タイトル後
    1. (※) 月を見上げているミレイユ,霧香「お茶,冷めてしまったわ」. 第六話 A パート最後で使われていた不安のクレシェンド. 0’29".
    2. 舞台は「荘園」に飛ぶ.葡萄を摘んでるアルテナさまとクロエ〜籠一杯に摘んで嬉しそうなクロエ〜「しようのない子ねぇ」と言いたそうなアルテナさま〜舘に帰る〜食前の祈り (台詞がないので何を祈っているかは不明)〜質素な食事〜わがままクロエ,アルテナさまに「儀式の前にもう一度」とランゴーニュ写本原本の朗読をねだる[アルテナさまが語るソルダの 歴史一]. "lullaby" のインスト. 1’45".
    3. アルテナさまの朗読の続き「ソルダの血は荒野に染み渡り,大河へと流れ込む」[アルテナさまが語るソルダの 歴史二]〜ソルダの拡散と浸透〜ソルダ評議会の反アルテナ派四人の会談,ここで初めて「慈母アルテナ」という呼称が出る.「次期司祭長として最大の権力を得ることになる」との発言から,何らかの宗教的基盤を持つことが判る〜舞台は舘に戻る〜厳しい表情のアルテナさま,蝋燭を右手の親指と人差し指で摘んで消す〜クロエの寝室から退去〜先に引用した有名な台詞[アルテナさまが語るソルダへの 見解一]〜謎の難民少女が戦災地を彷徨う.瞳の色からすると幼い頃のアルテナさまらしい〜左手に持っていた人形が落ちる.人形が象徴する何物かを捨て去った=わたしが罪を背負って地上に正義を実現しよう[ヴラディレーナ / バラライカ / 大尉殿と比べると興味深いかも.][アルテナさまが語るソルダへの 見解二見解三].カメラは二人組のアジトへ〜ソルダの「試練」の事情を理解したミレイユの追い込みが始まる. "le grand retour". 5’03".
    4. ミレイユの追い込みに中断を掛ける霧香〜あえて続行するミレイユ〜. "les soldats". 0’25".
  3. part B
    1. クロエ出立に際してアルテナさま,儀式の日が迫っているので, 1) 「あの子に最後の道標を渡してあげて」, 2) 「あの子のお友だちにはただ教えてあげるだけで佳い」〜ミレイユの追い込みの続き.この時点でコルシカの娘ミレイユも候補者の一人であることをほんまに判っているのはアルテナさまだけ〜アルテナさま朗読の続き[アルテナさまが語るソルダへの 見解四]〜クロエ出立を知った反アルテナ派評議会議員たち,「パリの騎士」たちとやらを二人組の元へ派遣する.取り込み作戦はもう諦めたのか[それはそうと,どうして反アルテナ派はクロエを狙わんのだろう.まずは子飼いの軍隊を潰すのが先決だろうに.].さらにアルテナの呼称に形容詞句が追加される.「かつて死を司ると畏れられた慈母アルテナ」〜襲われたアジト. "les soldats II". 2’18".
    2. 仮面なんぞを付けてる時点でお笑い担当確定の「パリの騎士たち」とやらをサクサク倒す二人組〜むっとした表情で書簡を読んでいるアルテナさま〜霧香は宙狩り撃ちを披露しながら八名,ミレイユは二度高屋根から転げ落ちそうになるが屋根滑り撃ちを披露して七名を倒す[曲撃ちとしてはこれが最後ですかね.ミレイユの方は「曲撃ち」ではないかも知れんが (笑). 曲撃ち二態].誰が倒したか判らないのが九名.全部で最低でも二十四名いた勘定になる[黒霧香に対抗するためか,ミレイユもいつになく凶悪な表情. 凶悪ミレイユ]〜アルテナさま,書簡を焼き捨てる[アルテナ不信任案でも提出されましたか.更迭か解任か.単に反アルテナ派からの通告か.それとも間者からの反アルテナ派の動きの知らせか.それが判れば,アルテナさまの暴走がいつ始まったか判明するんだけど.]〜試練にアルテナさまの朗読が被さる,「それは人の業に対する贖罪」[アルテナさまが語るソルダへの 見解五]. "canta per me". 3’13".
    3. 全員倒して合流した二人組,ミレイユの相棒は黒霧香に変じていた. "salva nos" のア・カペラ版. 0’20".
    4. 灰霧香に推移〜クロエの最後の道標[今回のクロエの登場は, 1) 逆光で, 2) マントを羽織って, 3) 塔の上に危なっかしく突っ立っているという,ある種の真下アニメではおなじみのパターン. 塔の上のマント.『エル・カザド』でもこういうシーンが出て来るかどうかが楽しみ.].ミレイユに告げる,「でも,この子はもう還らねばなりません」〜黒を常態とし灰と白を除去するため,霧香の銃で灰霧香を撃つ. "premonition" の後半. 1’31".
    5. 吹っ飛ぶ霧香にフラッシュバック, 1) ブーケ家暗殺現場. 2) 銃を構えているちび霧香, 3) 床に落ちているソルダの懐中時計, 4) もう一回銃を構えるちび霧香,それを確認してほくそ笑むクロエ〜予測できないソルダの突拍子もない戦法に為す術もなく見守るだけのミレイユ.横たわる霧香,佇むクロエ,立ち尽くすミレイユ. "premonition". 0’47".
  4. 比率
    • 16’57" / 20’40" = 82.0% (03’43").これは 第十話 を抜いて.今まででいちばん音楽含有率が高い.ついに八割りを突破.

ソルダの歴史とアルテナさまの見解が語られるので "les soldats" および "les soldats II" が出てくるのは当然としても,この回で目立つのは前回初めて登場した "premonition" の方.音楽の方はアルテナさまおよびソルダを信用していませんか (笑).その他, "le grand retour" も今回初めて登場.しかも 5’03" という大盤振る舞い.今までの最長は第九話 B パート頭の "salva nos" 4’06" だったが一分近く差を付けて堂々のトップ.この一曲だけで全体の 1/4 近くを占めている.この曲,途中で表情が何回か変わるが,絵と音楽は見事に合致している.

  1. 「祝福を受けし者 夕叢霧香 別れの朝,墓場にて 無明の朝

2006年11月14日火曜日

アントワーヌ・フェーヴル『エゾテリスム思想』

  • アントワーヌ・フェーヴル "エゾテリスム思想", 西洋隠秘学の系譜, 田中義廣 訳, 白水社 文庫クセジュ, 1995, ISBN4-560-05763-X, (Antoine Faivre "L'ésotérisme", 1992)

思わず別のところでガンガン 引用 しちゃったりしてるが,この本の対象はルネサンス以降なのでいわゆるデカルトの非合理的部分 (→種村季弘『怪物の解剖学』) にあるような「闇」を体系化しようとする試みを「エゾテリスム思想」と称するらしい.別の言い方だと,非合理的思考のヘテロクリットな現実化.十把一絡げに「オカルト思想」として胡散臭気に括ってしまっては「風呂の湯と一緒に中に入っている子どもも捨ててしまう恐れがある」.どうでもエエけど,面白いというかあまり見たことない比喩だな,これ.

基本要素は四つ. 1) 象徴的かつ現実的なコレスポンダンス, 2) 書物のように読み取らねばならない生きている自然, 3) グノーシス的想像力と媒体, 4) 変成体験.変容 (トランスフォーメイション) ではダメで,変身 (メタモルフォーズ) の意味をも伴った変成 (トランスミューテイション) じゃないとダメらしい.あと非必要条件の相対的要素として, 5) グノーシス獲得のためのコンコルダンスと 6) 伝授.あ〜,こりゃまんま『フーコーの振り子』に出て来ますな.

というわけで,ルネサンスから現代までの闇の思想史概観という体裁ではあるけれど,おなじみの名前がごろごろ.思想家を除外しても,ヒルデガルド・フォン・ビンゲン辺りから始まって,エーコは当然ながら,シリル・スコット,シュトックハウゼンまで.薔薇十字会員だったサティはもちろん,ノヴァーリス,リラダン,ヴァーグナー,ベックリン,モロー,スクリャービン,ストリンドベルイ,マッケン,イェーツ,シモンズ! 『音楽のエゾテリスム』の著者ジョスリン・ゴドウィンももちろん出て来る.索引がないのが惜しまれる (笑).訳注もしっかりしてます.

われらがパピュスに関するまとまった記述は 106 ページに

 幾人かの強力な人物がかなり異質で雑多な大衆を支配した.フランスではジェラール・アンコース博士 (別名パピュス 1865 -1916) が「オキュルティスムのバルザック」という異名——それほど多作であった——を得たが,本人はただの医師であり,研究者であり,実験家であると称していた.パピュスの『隠秘学基礎論』の刊行と彼の雑誌『イニシエーション』の創刊はともに 1888 年である.

とある程度.ディーリアスとパピュスの共著になるブックレット「解剖学」の刊行は 1894 年.

ディーリアスから離れて『フーコーの振り子』に接近すると,文庫クセジュから面白そうな本がいくつか出ている.

あとはコレ.

  • ヨーハン・V・アンドレーエ "化学の結婚", 付・薔薇十字基本文書 普及版 種村季弘 訳, 紀伊國屋書店, 1993, 2002, ISBN4-314-00931-4, (Ferdinand Maack "Chymische Hochzeit: Christian Rosenkreutz Anno 1459 nach der zu Straßburg bei Lazari Zetzners seel. Erben im Jahr 1616", 1913)

本編のほかに「薔薇十字の名声 (ファーマ・フラテルニタティス)」,「薔薇十字の信条告白 (コンフェッシオ・フラテルニタティス)」,「全世界の普遍的かつ総体的改革」,およそ 60 ページにわたる解説もあってお得.でも面白いかは…… ごにょごにょ.この ページ で紹介しているのは何かの間違いだと思うんだけど (笑).異端思想という点では『チーズとうじ虫』が最高に面白いが,これは粉挽屋のメノッキオが焚刑に処せられるというドラマが底にあるからな〜.

エーコからも離れてみると,「エゾテリックな言及が混じる見事な映画」として以下の四本が挙げられている. 1) キューブリック『2001 年宇宙の旅』 1968, 2) ジョン・ブアマン『エクスカリバー』 1981, 3) ラッセル・マルケイ『ハイランダー,悪魔の戦士』 1986, 4) ジョージ・ルーカス『スター・ウォーズ』 1977 とその続編,だそうで…….