ぐる式 (貳) より引っ越し作業中.未完.

2008年6月8日日曜日

蜷川オレステース 2006

「では,それぞれの道を行くが佳い.最も麗しき平和の女神を敬いながら」 © アポローン.

『エーレクトラー』の後日談.『反悲劇』中の第五篇『神神がいたころの話』に相当する話だが,ずいぶんのオチャラけてるんでびっくり (笑).一応悲劇のジャンルに入ってるんだが,最後はめでたしめだたしで終わるし,何と言っても deus ex machina が大々的に介入してくるしで,かの『オイディプース』に比べると.ずいぶんと毛色が違った感じになる.お話は,姦婦抹殺のつもりが母殺しとされて狂を発したオレステースと姉エーレクトラーはアルゴス人の裁きを待っている.トロイアから帰還したメネラーオスに助力を歎願するが入れられず,テュンダレオースからも疎まれた末,死刑判決が下る.あくまで二人を支持するピュラデースを加えた三人は,ヘレネーを殺して舘に火を放とうとするが,ヘレネーは神隠し (笑).ヘルミオネーを人質に取ってメネラーオスを面罵しているところへ,アポローンの介入が入り云々,と言った感じ.最後のアポローンに至っては,なんなんですか,こりゃ.噴いてしまったではないですか (笑).

雨に擬した水が始終滴るという舞台で,確かに目を引くが,ときに水音がうるさくて台詞が聞き取り難いのは困りもの.女ばかりのコロスが,しばしな泣き女集団にもなるのは何の冗談か,ちょっと面白いかも.音楽は無国籍ヴォーカルとパーカッションで,なかなかカッチョエエ.あと,やっぱ叫びが多いのはかなり興を削ぐな〜.なんか白々しい.前半のタメを受け止めるべきカタルシスがないのもなんともな〜.最後のアポローンの介入にアメリカ国歌が被るのも,なんともあざとい.要らんことせんと,素のままを出せば佳かったのかも知れない.ってか,蜷川演出とギリシア悲劇は合わない? 『オイディプース』は希有な例外ですか?

  • オレステース:藤原竜也
  • エーレクトラー:中嶋朋子
  • ピュラデース (オレステースの従兄弟):北村有起哉
  • メネラーオス (アガメムノーンの弟,ヘレネーの夫):吉田鋼太郎
  • ヘレネー (クリュタイムネーストラーの妹,トロイ戦争の元凶):香寿たつき
  • プリュギア人 (ヘレネー付きの奴隷):横田栄司
  • 知らせの者:田村真
  • ヘルミオネー (メネラーオスとヘレネーの娘):前川遙子
  • アポローン:寺泉憲
  • テュンダレオース (レーダーの夫,ヘレネーの戸籍上の父):瑳川哲朗
  • コロス:市川夏江,江幡洋子,井上夏葉,羽子田洋子,難波真奈美,今井あずさ,栗田愛巳,松坂早苗,江間みずき,さじえりな,植木彩子,成澤希見子,額田麻椰,村田京子
  • 侍女:永野雪絵,茂手木桜子
  • 従者:横田透,兼子和大
  • 作:エウリーピデース
  • 演出:蜷川幸雄
  • 翻訳:山形治江
  • 美術:中越司
  • 照明:原田保
  • 衣装:小峰リリー
  • 音響:井上正弘
  • 音楽:池上知嘉子
  • 演奏:東佳樹,内田真裕子,山下由紀子,石橋知佳
  • 2006 年 9 月 14 日,シアター・コクーン

テュンダレオースが説く暴力の連鎖説は説得力抜群.メネラーオスの右顧左眄振りもお見事.オレステースは確かに寿命を縮めてそうな大熱演.細見のエーレクトラーに烈婦振りはないので L は無理としても Q とか P なら……,どうだろう (笑).ピュラデース,その表情からてっきり最後に裏切るんだと思ってた.すんません (笑).ヘルミオネー,アポローンの介入でオレステースとの結婚を命ぜられたときの嫌そうな顔が忘れられない (笑).

やっぱこの前の『エーレクトラー』篇の方が観たいな〜.シュトラウスのオペラ版でもエエですから,と思ったが,『サロメ』とは違って,予想よりも映像には恵まれとらんようだな (笑).

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