ぐる式 (貳) より引っ越し作業中.未完.

2008年6月22日日曜日

彩の国シェイクスピア・シリーズ 2003 蜷川ペリクリーズ

「場面がどの国へ移ろうが,みな同じ言葉を喋りますが,これは罪とも言えぬ罪,どうかお目こぼし願います.わたくしは場面と場面の合間に立ち,物語がどのように進んで行くか,この口からお伝えします」 © ガワー@白石加代子.

暗い舞台上にいきなり蛇口十個.滴る水を受ける桶.銃声,破裂音,爆破音,飛行機の爆音.滑り込んでくるゆったりとした弦楽.鐘が鳴り,三々五々集まる人々.村人もいれば兵士もいる.わしらの村は戦場だった.命の水.一同礼の後に散開.琵琶法師の二人組ガワーが語り始めるペリクリーズ (とタイーサとマリーナ) の冒険綺譚.白石加代子のガワーが「アンタイオカス」と声を発すると「安泰犯す」に聞こえる[おそらく意図的なもの. Antiochus's riddle だし.].法師二人が語り終え退出,太鼓が響き舞台奥の扉が開き本編開始.まず登場するはペリクリーズとアンタイオカス王その他.何このトゥーランドットな衣装は (笑).ガワーの語りは琵琶語りだけでなく,人形浄瑠璃 (実際には人形は俳優が演じるが,黒子も付く.裏側は鏡で観る),さても南京玉簾なども登場.難破の場面はスペクタクル (笑).第二の嵐でのロープを使った動きは,世仁下乃一座がやった岡安伸治の『ドリーム・エクスプレス AT』みたいだ.三時間の間に二回も嵐に遭うとは,オデュッセウス以上に神々の不興を買っているんすか,何をやったんだ,ペリクリーズ? (笑)

例えば原文は Pericles: Entire Play.お話はほんまに勧善懲悪のファンタジー. MIT で公開されているテキストは一応喜劇のジャンルに放り込まれてるが,こりゃ喜劇かい? と思ったヤツは昔からいて,「ロマンス劇」という分類項目にあたるそうな.ここに入るのは他に『テンペスト』など.あ〜,それなら納得.で,その勧善懲悪劇の前と後に付くのが戦場のシーン.舞台展開には銃声,破裂音,爆破音,飛行機の爆音.劇中劇ということ? それはどっちでもエエが,ともかく勧善懲悪は物語の中でしか果たされないということ? せめて虚構の中なりとも秩序をってこと?

  • ペリクリーズ (タイアの領主):内野聖陽
  • タイーサ (ペリクリーズの妻・サイモニディーズの娘)・マリーナ (その娘):田中裕子
  • ガワー (語り手)・ダイオナイザ (クリーオンの妻)・女郎屋のおかみ:白石加代子
  • アンタイオカス (アンタイオケの王)・ペンタポリスの貴族・セリモン (タイーサを救ったエフェソスの医師)・女郎屋の亭主:瑳川哲朗
  • ガワー (語り手)・クリーオン (ターサスの太守)・サイモニディーズ (ペンタポリスの王)・ライシマカス (ミティリーニの太守):市村正親
  • タイアの貴族・漁師・騎士の従者・娼婦:梅津栄
  • タイアの貴族・漁師・騎士の従者・ボールト:石井愃一
  • ヘリケイナス (ペリクリーズの代理でタイアを統治):田代隆秀
  • アンタイオケの従者・タイアの貴族・エスカニーズ・浪・騎士の従者・セリモンの召使・娼婦・ミティリーニの紳士:富岡弘
  • タリアード・浪・ペンタポリスの貴族・海賊・ミティリーニの貴族:大川浩樹
  • アンタイオケの従者・タイアの貴族・漁師・ペンタポリスの貴族・船遣い・ミティリーニの貴族・リーオナイン (マリーナの暗殺失敗者):妹尾正文
  • アンタイオケの従者・タイアの従者・後見・騎士・タイアの水夫・セリモンの召使・海賊・ミティリーニの貴族:新川將人
  • アンタイオケの使者・クリーオン人形・騎士・タイアの貴族人形・エフェソスの水夫・巫女:井面猛
  • アンタイオケの従者・タイアの従者・後見・騎士・タイアの水夫・セリモンの召使・船遣い・浪・エフェソスの召使:鈴木豊
  • アンタイオカスの王女・浪・ペンタポリスの貴族・タイーサ人形・エフェソスの貧者・娼婦・エフェソスの住人:月川勇気
  • アンタイオケの徒者・ターサスの貴族・後見・騎士・エフェソスの紳士・タイアの水夫:田村真
  • アンタイオケの従者・浪・騎士・後見・タイアの水夫・海賊・エフェソスの住人:野辺富三
  • 貴婦人・リコリダ (マリーナの乳母)・船・女神ダイアナ:景山仁美
  • ペリクリーズ人形・貴婦人・マリーナ人形・巫女:花柳珠千鶴
  • 後見・浪・貴婦人・サイモニディーズ人形・ダイオナイザ人形・巫女:徳垣友子
  • 浪・貴婦人・後見・フィロテン人形・はしけ・巫女:藤田さくら
  • タイアの使者人形・浪・貴婦人・後見・フィレモン・船・巫女:藤田直子
  • 浪・貴婦人・リコリダ人形・後見:瞳ゆり
  • ミュージシャン:朴根鐘
  • 美術総監督:諸井誠 (おそらく 同一人物)
  • 演出・芸術監督:蜷川幸雄
  • 翻訳:松岡和子
  • 装置:中越司
  • 衣装:小峰リリー
  • 音響:井上正弘
  • 振付:前田清実,花柳錦之輔
  • 音楽:笠松泰洋
  • 2003 年 3 月,彩の国さいたま芸術劇場 大ホール (冒頭のテロップでは 2003 年 2 月).

ガワーのコンビ,白石加代子と市村正親は最強ですね (笑).正直,本筋であるペリクリーズ & タイーサ / ・マリーナの話より面白い.しっかし,三時間超は如何にも長い.「バルジ大作戦みたくトイレ休憩挟むのかい?」,ガワーのコンビだけが救いか.でもビジュアルが強烈だし面白かったからエエか (笑).

で,エンド・クレジット.「CUST」って何?

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