ぐる式 (貳) より引っ越し作業中.未完.

2004年4月8日木曜日

J - K ユイスマンス『彼方』

 実証主義者と無神論者とが蔓延る 19 世紀末のパリ.「窓を開いて,息詰まる環境から脱出」せねばならないデュルタルは,錬金術,悪魔学,占星術が合流する青髭公ジル・ド・レーの一代記執筆に熱中する.そこに顕現する中世神秘学の空間.著者曰く「心霊的自然主義」.

 終盤前のクライマックスでは黒彌撤の顛末が語られるなど,オカルディズムの蘊蓄としても読めるのだろうけど,「おれが居るべき時代は現在ではない」という厭世観 & 時代嫌悪*1が強烈.主人公を取り巻く鐘撞きにして遅れてきた中世人カレーや博覧強記の医師デ・ゼルミー,占星学者ジェヴァンジェーらも時代に取り残された,あるいは時代を嫌悪している人物ばかり.

 初めて読んだのは確か大学の頃だと思うけど,以来手放すこともなく二,三年に一度くらい読み返しているなぁ.愛読書の一冊ということになるんだろか.

 有名なグリューネヴァルトの『キリスト磔刑図』の描写は p. 13 - 18.

  • J - K ユイスマンス "彼方", 田辺貞之助 訳, 創元推理文庫, 1975, 1981, ISBN4-488-52401-X

*1: 後記: Thu Apr 8 16:25:43 JST 2004, ユイスマンスは『さかしま』を含んだ選集みたいなのが桃源社から出てたけど,まだ入手可能なんかなぁ.二三年前に三省堂で『大伽藍』を見掛けたような記憶があるけど.

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