ぐる式 (貳) より引っ越し作業中.未完.

2006年11月27日月曜日

Black Lagoon The Second Barrage #20 The Succession

「雪の夜って綺麗.今初めてそう思いました」 © 鷲峰雪緒.夜は闇に吸い込まれそうで怖いと言っていた雪緒が骰子一擲.闇へと踏み出す.「雪の夜」だから当然ながら星は見えない.竹中篇の〆もそうだったけど,せっかく見得を切っているんだから,この辺りの雪緒の台詞回しにはもう少し間が欲しかったな.

クソ長文陳謝.ホテル・モスクワ,「破壊と制圧」をモットーに殲滅行動中.その場合,拙速がいちばん有効であると思うんだけど,まぁ示威の意味もあるんでじわじわと締め付け.その間隙に咲くロックと雪緒の (『村のロミオとジュリエット』みたいな) 淡い恋物語.とかふにゃにゃけたことを考えてたけど,雪緒からしてみればロックはオヤヂだよな〜.あり得ませんね (笑).ロックも雪緒も相手が敵側の人間であることを知った上で乗り込むんだし.「ロシア人」を抑え切れない坂東,単独でバラライカ姐御に特攻仕掛けて返り討ちで死亡字幕.んで,ホテル・モスクワの相手は香砂会に加えて鷲峰組も,かな.若頭だった坂東の戦死で銀次が雪緒を立てて代行するんだろうか.んで,チャカが攪乱しまくる,と.

  • メニショフ伍長は坂東の弟分の吉田として転生していた.
  • 撹乱用因子としてチャカ投入.レヴィ評「ケツと頭の区別も付かねぇ脳足リン」.なに〜,カタカナ英語のわりにスムーズに出て来るじゃんか (笑).米系華人と日本人の英語会話か.なるほど.(ヤクザに学ぶ組織論 )
  • どうでもエエけど,大将自らご出陣でロアナプラの方は大丈夫なんだろか.心配です.まさか張大哥に任せてるわけでもあるまいから副将が抑えてるんだろうけど,誰?
  • 雪緒が通っている高校の図書室,広いな〜.読んでるのはなんとハイデガーの『杣径』.装丁からみると 創文社 の「ハイデッガー全集第五巻」ですな.著者の戦後二番目の出版物だそうで,収録されているのは講演五つ『芸術作品の起源』,『世界像の時代』,『ヘーゲルの経験概念』,『ニーチェの言葉「神は死せり」』,『何のための詩人たちか』に『アナクシマンドロスの箴言』の一部らしい.今度『存在と時間』の講義をお願いします.
  • 厨房に立つ坂東と松崎,カレー作ってる? 鍋か.
  • アン・ライス.読んだことないです orz.クレイグ・ライスは少し読みました.関係ねぇよ.
  • 「そういう寝言を言って来たらという仮定の話で言えば,目標に名前が一つ増える.仕事も何も変わりなく,世はこともなし.それだけのことよ」 © バラライカ.この最後の見降ろす眼付きが強烈です (笑).
  • 以前グレーテルを救えなかったから,ロックは今度こそ雪緒を助け出したいんだろうけど…….

さて骰子.雪緒が「人ってね,骰子と同じだって,あるフランス人が言ってるんです.自分でね,自分を投げるんです.自分で決めた方向に.それができるから人は自由なんだって」,ロックは「人は骰子と同じで,自らを人生の中へと投げ込む」.画面には骰子二つ.このときのキャプションは「L'homme est d'abord ce qui se jette vers un avenir, et ce qui est conscient de se projeter dans l'avenir. 」.このフランス語はサルトルの『実存主義とはヒューマニズムである (L'existentialisme est un humanisme)』, 1946, の一節.本来は頭の L は小文字で,その前に「Nous voulons dire que l'homme existe d'abord, c'est-à-dire que」が付く.なんだけど,こりゃ例の投企の宣言ですよ.「人間はまず,未来に向かって自らを投げるものであり,未来の中に自らを投企することを意識するものである」という意味で,ここでは骰子なんてどこにも出て来ない.う〜ん,有名なペイパーナイフのエピソードを含んでいるそうだから本文の方では骰子への言及があるのか知らん.邦訳がある (伊吹武彦 訳『実存主義とは何か』, 人文書院, 1996) けど,読んでません.あ, 部分訳 があった.っつかさ,骰子って偶然性の象徴だよね. "Un coup de dés jamais n'abolira le hasard (骰子一擲いかで偶然を廃棄すべき)" っすよ.どこまで行っても廃棄されませんよ.そういう場での主体的投企としての自由っつったって,投企はつねになされたあとだし,サルトル,どっかで自由=代入束縛みたいなこと言ってたしで,なんすかね,仕掛けられたトリックに引っ掛かりまくりですかね (笑).あの仏文がなければ気分的にスッキリするんだけど.う〜ん,難しい.

なんか #24 までのサブ・タイトル見てると関東和平会鷲峰組篇は六話分ありそうな感じを受けるんだけど,ほんまですか.ベニーは連絡時にちょこちょこ出て来るけどダッチは姿を見せんし声もなし.もしかしてあとから二人も乗り込んで来る? う〜ん,それはないような気がする.

本編に関してはこれにて終了.原作単行本第三巻では『山羊と聖戦とろけんろ〜』が未完だったので,第四巻の封を開け,竹中編の最後まで読んだ.危ねぇ〜 (笑).以下補遺拾遺.

泰山府君其は我也

第十一話 で不明だった「たいざんふく.そは吾なり」の語釈が原作第三巻で判明した.以下,原作でのレヴィの台詞.

「泰山府君其は我也」 (中略) 死と賞罰の神さんが,てめェに裁きを食らわすって勧告だよ.

[ 広江礼威 "Black Lagoon", 003, 小学館, 2004, 2006, ISBN4-09-157203-0, pp.136-7 より ]

「泰山」は合ってたけど,次を動詞に聞いていたのがまるでダメですな.しかも「ん」を聞き漏らしてるし.知ってりゃ聞こえて来るという人体の不思議 (笑).中略部分の「意味がわかんねェか,中国人なのに」はカット.時間的な制約ゆえか政治的な配慮なのかどうかは知らん.んでその「泰山府君」だが,中国の霊山五岳の一つ,山東省にある東岳 (嶽) =泰山の神さまの名だそうである.別名は東岳 (嶽) 大帝.

レヴィにとっては泰山府君の東夷的陰陽道的解釈なんぞ「んなこたァなどうでもいいんだ」っつ〜こったろう.んで,本場では「泰山にあって人間の寿夭生死をつかさどり,死者の生前の行為の善悪を裁く神」として信仰の対象なんだそうである.日本だと 閻魔大王 のイメージですな.泰山はその大王=大帝がまします神聖にして不可侵の霊山なわけだ.こう こう こう.をゝう.

葛洪の『神仙伝』巻五には「泰山老父」なる不老の爺さんが出て来る.齢百八十にして日に三百里も歩く仙人である.漢の武帝に道術を授けて岱 (泰) 山に入ったという*1.泰山府君はそういう霊性をもつ山のヌシなのである.泰山は『山海経』にも出て来る.第四「東山経」の次一,十二山中の最後から二番目に曰く「泰山 (東嶽) といい,頂上に玉多く麓には金が多い.獣がいる,その状は豚の如くで珠をもつ.名は狪狪.鳴くときはわが名よぶ.環水ながれ東流して[江]汶に注ぐ.水中に水玉多し」.この辺はもう「山の神の状はみな人身で竜首である.祠の毛(けもの)には一匹の犬を用い,祈と[䎶](衈)には魚を用いる」とある*2.この辺りになるともう何が何やら訳判らんぞ.「熊猫的迷宮」*3にクラクラしますな.

え〜と,「三合会は超サイコー」というヒドいセンスの合い言葉はカマセで,相手がイスラム武闘派テロリスト集団だろうがきっちり落とし前は付けさせてもらうという,張大哥の超カチョエエ宣言だったわけですだよ.わかるますたか.はい orz.

あの,「ロベルタ祭り」って……

ロベルタ祭り.何なんすか,も〜 (笑).テレビ CM の BGM は "Melting Brain" (サントラ GNCA-1102 の tr.19). 公式 のサントラ・ページのタイトル「Milting Brain」はもちろん間違いですよ orz. タワー の方は合ってた.

什么人!?

えと先に 第十一話 で張大哥から託された「とある連中 (原作では「“ヒズボラ”共」*4) の愉快なハイキング表」を 第十二話 のラスト近くでレヴィが胸から出すのを見てシェンホアが叫んだ言葉.もちろん中国語なんで何つってるか判らんかったが,原作第四巻で「什么人!?」だと判明*5.「どんな人?」という意味だそうだが,ここはたまたま出くわしたヒロスケから「チッ 貧乳め!!」と罵られた南条操風に「何様!!」とでもすべきか*6.「你是什么人?」はガン付け用法的に「なんだ、てめえは!」と なる そうであるから.こんときレヴィは「ハリー・フーディニーが魔法の壷をちょいと振れば」と言ってるが,原作では「ハリー・フーディーニ」*7になってる.クレイトン・ロースンの『帽子から飛び出した死』では「フーディニー」だし,そう覚えていたのだが, wikipedia では ハリー・フーディーニ - Wikipedia になってた.

この話 (Guerrillas in the Jungle / Goat, Jihad, Rock'N Roll) ではシェンホアのカッチョエエ姿が拝めるのだが,対イブラハ・チームとの一方的な戦闘の開始時に中国語で何か言ってた.もちろん聞き取りなんてできなかったが,これが「嘻嘻.那我来嘙.飞起来吧」*8だそうで.読みは判らんが,意味は「ふふ.じゃあ,いくわよ.踊ってね」.最初の嘻嘻は「にゃはは」の方が佳いのでは (笑).

остановитесь!

ロベルタ編の最終話 (第十話) の A パート・ラストでガチンコ真っ最中のレヴィとロベルタに割って入ったバラライカ姐御が最初に発した語.無理矢理カタカナにすると「オスタノヴィ〜テシュ」とかそんな風に聞こえる.原作第一巻では「остановитесь!」と明記してある.訳は下段に「動くな!」とある*9.ウェブ翻訳をいくつか見てみたら SYSTRAN Language Translation Technology だと「YOU WILL STOP!」, Free Translation Online では「Stop!」と出た.「そこまで!」という感じだろう.ロシア語指導は 秋葉いつき こと Jenya の お仕事 だが,先日の 蕎麦オフ で軍関係のロシア語は彼女のお父さんが担当してると聞いた.現役の軍人さんなのか退役軍人なんだっけ.「世間って狭いねぇ〜」という話になったので,お父さんが指導しているのがアニメの方なのか原作の方なのか,それとも両方なのかは聞きそびれた.

「武器」と書いて「エモノ」と読む.あるいは「得物」

偽札ジェーン篇完結篇 第十八話 で「ちょと意味不明だけど」と気になっていたシェンホワの台詞「攻めるための獲物こそ武器よ」の謎が解けた.と思った.これまたロベルタ編の最終話 (第十話) の最後で,落としどころに納得しないレヴィにダッチが「んなもん簡単じゃねェか」と提案する「どつき合い」の条件が「武器(エモノ)なし.そンなら死ぬこたァねぇだろ」*10.「エモノ」とルビが振ってあった (笑).これで解決かと思ったのだが,念のため岩波国語辞典第二版を引いてみたら,【得物】の第一義が「武器」と出た.どっちだよ (笑).中国で得物=武器なのかは佳く判らんが,仮に日本特有の用法なのだとしたら.本省人 (ってどこの省?) のシェンホアが使うだろうか.第六巻読むまでお預けだな.

高倉健≈大地康雄?

またしても 第十一話. A パートの最後.竹中正洋の自己形容.空港で家族連れの日本人に声を掛けられた竹中,誰かに似てると言われて「健さん」.原作では「大地康雄*11.この二人は似てないと思うんですが (笑).原作もアニメもどちらかというと大地康雄似.なんか大地康雄じゃマズかったの? 家族連れの行き先も違う.(フィリピン中部の) セブ島 -> (タイ南部の) プーケット,マニラの歓楽街 -> パッポン.経度にして 30° ぐらい違いますが.直線距離でも 2,500km 以上? どうでもエエが, アユタヤ って バンコク近郊 だったのですか.

〆の 第十二話 でも「健さんのおじさん」が「大地康雄似のおじさん」.同時に家族連れの父親の方も「Excuse me のお兄さん」 -> 「プーケットのお兄さん」*12.まぁ,「四機とカチ合った帰りに日電で『網走番外地』」*13がどうのこうのからしたら「健さん」の方が都合が佳いんだろうが.

*1: 葛洪, 劉向, (郭璞) "抱朴子 列仙伝・神仙伝 山海経", 中国古典文学大系第八巻, 本田済, 沢田瑞穂, 高馬三良 訳, 平凡社, 1969, 1979, p.384

*2: 前掲書, p.473. 『山海經校注』の頭から十一番目も参照.

*3: 『エロイカより愛をこめて』, No. 16, 『熊猫的迷宮』, 青池保子 "エロイカより愛をこめて", 第二十巻, 第二十一巻 秋田書店, 1996, 1997, ISBN4-253-07128-7, ISBN4-253-07129-5, 第二十巻 p.107 〜 第二十一巻 p.138.

*4: 『Black Lagoon』 #16 「Goat, Jihad, Rock'N Roll」 pt.1, 広江礼威 "Black Lagoon", 003, 小学館, 2004, 2006, ISBN4-09-157203-0, p.82.

*5: 『Black Lagoon』 #21 「Goat, Jihad, Rock'N Roll」 pt.6, 広江礼威 "Black Lagoon", 004, 小学館, 2005, 2006, ISBN4-09-157204-9, p.19.

*6: 氷川へきる『ぱにぽに』第三十四話「番外編メソウサスペシャル (2)」 #4 「ホルスタインのような」, 氷川へきる "ぱにぽに", 3 巻, スクウェア・エニックス, 2003, ISBN4-7575-0843-3, p.66.

*7: クレイトン・ロースン "帽子から飛び出した死", 中村能三 訳, ハヤカワ文庫, 1976, 1993, ISBN4-15-071651-X, (Clayton Rawson "Death from a Top Hat", 1938), p.372.

*8: 『Black Lagoon』 #20 「Goat, Jihad, Rock'N Roll」 pt.5, 広江礼威 "Black Lagoon", 003, 小学館, 2004, 2006, ISBN4-09-157203-0, p.182.

*9: 『Black Lagoon』 #4 「Rasta Blasta」 pt.3, 広江礼威 "Black Lagoon", 001, 小学館, 2003, 2006, ISBN4-09-157201-4, p.184.

*10: 前掲書, p.193.

*11: 『Black Lagoon』 #17 「Goat, Jihad, Rock'N Roll」 pt.2, 広江礼威 "Black Lagoon", 003, 小学館, 2004, 2006, ISBN4-09-157203-0, p.115. 地名の件も同じ.

*12: 『Black Lagoon』 #21 「Goat, Jihad, Rock'N Roll」 pt.6, 広江礼威 "Black Lagoon", 004, 小学館, 2005, 2006, ISBN4-09-157204-9, p.23.

*13: 『Black Lagoon』 #19 「Goat, Jihad, Rock'N Roll」 pt.4, 広江礼威 "Black Lagoon", 003, 小学館, 2004, 2006, ISBN4-09-157203-0, p.157-8.

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