ぐる式 (貳) より引っ越し作業中.未完.

2006年12月14日木曜日

チェルフィッチュ『三月の 5 日間』 2006

チェルフィッチュ. 12 月 11 日, BS2, ミッドナイトステージ館

音楽なし,セットなしのサンプリング芝居. 2003 年 3 月 19 日,アメリカのイラク空爆開始から五日間の渋谷〜六本木近辺でサンプリングした素材のリコンストラクション.いや,「サンプリング」というのはあくまで個人的な妄想ですが (笑).中心になるのはその「5 日間」を渋谷のラブホでヤリまくって過ごした行きずりのカップル,ミノベくんとユッキーさんで,その周りに反戦デモや相貌を変える街とか,犬人間=ホームレスとか.「エチュード」?,あ〜,なるほど,エチュードってこういうタラ〜っとした感じなんすか.火星女 (ミッフィーちゃん@松村翔子) の喋りと身振りがリアルに誇張されてて印象に残る.ちょっとした発見.「あ,そうなんだ」という相槌とデモ隊眼鏡イシハラくんの「あ"〜〜〜」という時間稼ぎがこんなにも神経を逆撫でする耳障りなもんだとは思わんかった.

どこか弛緩したような,あるいは脱臼したような身振り,まるでふつうの (ジャージ姿の役者もいる) 衣装,スッピンで何もない舞台,休憩時間以外は音楽なし,装飾は照明のみ,ほんまに街中でサンプリングしたような,自然な会話のようでいながら舞台上ではまったく対話として成立しない海月的モノローグが延々と.中心にズバリと切り込むことなく,不可触の原点の回りをリサージュ曲線を描いて浮遊する台詞群.台詞の明確な終止形がないんだよね,『トリスタン』みたいに.総数は一桁だけど何度も何度もループされるネタ,耳にタコができるほど繰り返されるある特定のフレーズ.それらが埋め込まれた喋りはまるでふつう (というか,とりとめがないというか,だらだらというか,ぐだぐだというか) なんだけど,これ全部アドリブなしで書き記されているそうなんで,相当な量になるんではないかと.こうやって書いてると,まるでトンガってるように聞こえるけど,妙に脱力した不思議な 90 分.一気に観てしまった.これこそまさに City Life (City Life (Reich) - Wikipedia, the free encyclopedia) っすか (笑).スッピンの舞台と言えば,場所はライヴ・ハウスだそうだけど,ステージと客席間の高低差はない (地続き) んじゃないか.美奈子さん御用達の STB 139 はちょっと高くなってるんだが.

とまぁ,そんな感じを受けたので,「戦争の影」あるいは「積極的な反戦の主張を含むソリッドな意思」よりも,なんかケージ第二期的な時間的リズム構造があるんじゃないかと勘繰ってしまったですよ (笑).

  • 山崎ルキノ
  • 山縣太一
  • 下西啓正
  • 松村翔子
  • 瀧川英次
  • 東宮南北
  • 村上聡一
  • 作・演出:岡田利規
  • 西麻布 Super Deluxe, 2006 年 3 月 14 日

チェルフィッチュとは selfish (自己中) の幼児語だそうで,ベッキーの マサチューチェッチュ と同じ.

第49回岸田國士戯曲賞受賞作品.先週の京都ベースのヨーロッパ企画『サマータイムマシン・ブルース 2005』も 面白かった けど,横浜本拠地のこれも別の意味で佳かったっすね.

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