ぐる式 (貳) より引っ越し作業中.未完.

2006年12月16日土曜日

ジュウシマツの歌, n’est pas mentionné dans un Catalogue d’Oiseaux

生物言語研究チーム(岡ノ谷 一夫、Ph.D.) | 独立行政法人 理化学研究所 脳科学総合研究センター

  • ジュウシマツは家禽.野生ではない. 240 年ほど前に九州の大名が東南アジア原産のコシジロキンパラを入手して飼育.それが広まった.つまり,日本にしかいない.よってメシアンの『鳥のカタログ』にも入っていない.
  • ジュウシマツは佳く鳴く.
  • 幼鳥の鳴きはシンプルで音素も長め.成鳥は複雑で長短取り混ぜて鳴く.発声にも差がある.
  • ジュウシマツの脳の重さは体重の 1/20 ほど.人間に換算すると 3kg 近くとなり,人間の脳の平均重量の二倍ある.体重が増えれば支える機構の重要性が増すのは当たり前なので,その比較はナンセンス.
  • 「地鳴き (call)」,先天的,反応的,単音節,シグナル.「さえずり (song)」,後天的,学習によって獲得する,多音節,求愛行動.危ない,みんな逃げろ! というときに,♬ぴぴるぴるぴるぴぴるぴ〜♬じゃ喰われちまうもんな.
  • オスの大脳皮質にはウェルニッケ野に相当する聞く部分,ブローカ野に相当する歌う部分がある.メスには歌う部分が聞く部分になっている.オスより優れたリスナーだがシンガーではない.
  • さえずりには先天的に鋳型があるらしい.さえずるようになる前は一生懸命に聞いて鋳型を鍛える.性徴期を迎えて歌えるようになると,その鋳型をベースにして独自の歌を編み出す.鋳型仮説という.
  • 歌はチャンク構造になっている.音節 -> モティーフ -> フレーズ -> ソングという構造.言語構造と等しい.
  • 歌には文法構造のみが存在し,意味はない.というか,意味は求愛というただ一つだけ.言語発生論は,文法と意味を分けて考えるべきではないのかという問題提起.
  • 野生のコシジロキンパラの歌は,モティーフの繰り返しだけで構成されている.複雑なフレーズではない.ソングを歌うということはけっこうな負荷が掛かるということであり,その間の認知能力は低下する.また,一度歌い出すと途中の任意の場所で止めることができない.
  • 野生の歌がシンプルな構造なのは,補食圧のためである.可能な限り危険性を拝して言いたいことを言わなければならない.家禽となったジュウシマツにはその補食圧がなくなったため,複雑化への道を歩み出した.文化の発祥 (笑).ある種の鳥類のオスが我が身を実験台に類い稀なる奇天烈なファッション・センスを競い合うのと同じか.

音楽から探ることばの起源 (pdf).

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