ぐる式 (貳) より引っ越し作業中.未完.

2005年6月21日火曜日

英國戀物語エマ #12 スズラン

(墓地で) 「お世話になりました,奥様」, (キングズクロス駅でウィリアムに) 「ありがとう.ありがとうございました」 © エマ.

淡々としているが,かなり盛り上がった最終回.と思ったが,恋人たちの別れというのはそれだけで劇的な属性を持っているもんだよな.

ED はあるが OP はなし.導入部は第一話の冒頭と同じで,頭からカラー.夜明け前のガス燈が灯っている時刻.第一話と同じ馬車がケリーさんちの前を通り過ぎる.ただし第一話では乗っていた女の子がいなくなっていて,男の子とその父親の二人だけ.

エマ,ケリーさんに最後のお別れ.回想.エマが眼鏡を掛けるに至ったエピソードは省略されているが,それでもしんみり.お墓に刻まれているので判るが,ケリーさんの生年は 1838 年で没年は 18?? 年.まだ世紀末だったのか.エマを引き取った動機はまるで『マイ・フェア・レディ』のヒギンズ教授だが,ここはエマの中に磨かれざる何ものかを見出したという風に受け取っておこう.ところで,犬は飼い主に似るというが,メイドも主人に似るのだろうか.今のエマはなんとなく教師のように見える.

"Red sky at night, Shepherd's delight; Red sky in the morning, Shepherd's warning. ",グレイスとコリンが読んでたのは『マザー・グース』か. HNR 62. ONRB*1 では p.117 に記載されていた. 1980 年版の ODNR では発見できず.『ロンドン橋』みたいにあっと驚くような由来は,あったのかも知れんがすでに磨耗し過ぎて読み取れないんだろうな.オリジナルはドイツ起原? 谷川俊太郎の訳では「ゆうやけはひつじかいのよろこび、あさやけはひつじかいのしんぱい」.そのあとの「七時前の雨は十一時前には晴れるって諺」も ONRB の同ページに載っていて "Rain before seven, Fine before eleven.".まさに困ったときの ONRB (笑).

↑の二人が読んでいた本,平野敬一さんの文献リストに依れば,十九世紀末だとするとケイト・グリーナウェイが挿絵を担当した 1881 年 Frederick Warne & Co., 刊の "Mother Goose" という絵本かも知れないが,収録歌数 40 ちょっとというのがちと難点.ならばハリウェルの "The Nursery Rhymes of England" (1842) やニュービーの "The Original Nother Goose's Melody" (1760) かも知んないんだが,これらアンソロジー,コリンに読めるんかな〜という疑問が残る.

ストウナー家を閉めたエマが駅に向かう乗り合い馬車,ウィリアムが Marylebone street へ向かう馬車とすれ違うシーンにはけっこうどきどき.オレンジを巧いこと使ってエマの視線を逸らせてしまった.この乗り合い馬車も OP で出てくる馬車のようだ.ただし,乗り合わせている客は違ってる.けっこう手が込んでるな.

エマの行く先は不明.シティ北部のキングズクロス駅は北へ向か路線の発着場.キングクロス駅とも呼称する場合あり.ヨークという地名が出て来た.ということは北海沿いの村か.三等を二等に変えても数シリングしか違わないということは,案外近いのかも知れない.でも両親はすでにいないし,叔父さんとこでも佳い扱い受けてなかったし,どうするんだろ.

ようやく 花売り娘からスズランを買うようになったウィリアム.その娘はエマにもスズランを売っていた娘だ.スズランの花言葉は「幸せが戻ってくる」.第二期以降で戻ってくれば佳いんだがな〜.

「悲劇を気取っている」というハキムの指摘どおり,自分の言葉を伝えられないウィリアム.エレノアには「わたし待つわ」と宣言され,エマには「ありがとうございました」と拒絶される.ところで,この駅のシーンは記憶と違っていたので原作を見てみたが,やっぱりウィリアムはエマの出発に間に合っていない.なぜに逢わせたか.ケジメ=ダブル・ストップなんだろうな,やはり.エマははっきりと拒絶している.となると,次のターンはウィリアムが追い掛けることになる.その前に逢わせることで助走を付けさせているんだろうな〜.

エマが乗る汽車.これも佳く観れば毎度 OP の頭で登場している列車っぽい.やっぱ,この全十二話全体が過去の話ということなんだろうか.なら,何処から振り返っているんだ? 話者の現在時点は何処なんだろう.そもそも誰が語っているんだ?

と,個人的にかなり盛り上がっているんだが (笑),冷静になってみれば,序破急の序を通過したに過ぎないんだよな.続編以降を待つことにしよう.

*1: Iona and Peter Opie "The Oxford Nursery Rhyme Book", OUP, 1955, 1979, ISBN0-19-869112-2. ODNR は Iona and Peter Opie "The Oxford Dictionary of Nursery Rhyme", OUP, 1951, 1980, ISBN0-19-869111-4, の略称.新装版 になってる.ふつうは Ohio Department of Natural Resources を指すらしい (笑).

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