ぐる式 (貳) より引っ越し作業中.未完.

2005年6月26日日曜日

森薫『エマ』

ふと気が緩んだ隙に五巻まで読んでしまった.いやぁ,面白かった (笑).ディケンズほどには悲惨な状況には墜ちないんですな.

ロンドンを離れたエマが向かった先はヨークの先の海端だったが,同じ列車に乗り合わせた機縁でハワースのメルダース家に再就職.これがまぁ,ドイツからの移住民.同じヨークシャー州には,モールトンの誕生地にしてディーリアスが生まれたブラッドフォードのディーリアス家もドイツ系の移住民だったんで興味深い.伝記を読むとディーリアス家はメルダース家ほどデカくはなかったようだが,現在も健在のハレ管のスポンサーみたいなこともやってて,地元の名士だったらしい.カイゼル髭も同様.あ,それからハワースってのはブロンテ姉妹の生地なんで,そこから引っ張って来たかな.

ヴィルヘルム・メルダース夫人のドロテアの友人にジャポネズム被れの「ミセス・トロロープ」というのがいて,彼女がリチャードさんの奥さんオーレリアだってぇのには「あらら」だが (笑),この二人にまつわるエピソードから,リチャードさんは最初の壁に過ぎなくて,むしろエレノアの父であるキャンベル子爵がボス敵のように見えてきた.

オペラ観覧のウィリアムとエレノア,題材はブッファの『セヴィリアの理髪師』.まぁ,エエけどさ.これ,あんまし縁起のエエもんじゃないよ.この三部作,次作の『フィガロの結婚』では伯爵夫人はすっかり伯爵に等閑視されているし,最後の『罪ある母』なんて,ケルビーノと伯爵夫人が不倫の末に生まれた息子と,伯爵の庶子の娘の話だ.でもまぁ,原作の三部作は階級制度に投げ込まれた爆弾のようなものだったんで,その意味ではウィリアムは聴いといた方がエエか知れん.五巻の後書きでバリトンはレオ・ヌッチが好きって書いてあったけど,このブッファに関しては,ヌッチとアライザのコンビが最高ですな.

しかしまぁ,五巻に至ってもウィリアムはたいした行動は取っておらん.しっかりせぇよ.

エレノアの姉,目の吊り上がったモニカとか,ドロテアとオーレリアに玩具にされてパーティに連れ込まれたエマがやけに綺麗で品格に溢れるとか,ラスボスであるキャンベル子爵の戦闘的保守性とか,第二期テレビ・シリーズへの期待は否が応でも高まるな (笑).とりあえず,六巻出るのはだいぶ先になりそうだし,この原作五巻を入手するか.って, DVD 買わんとあんまり支援にはならんのだろうが.

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