ぐる式 (貳) より引っ越し作業中.未完.

2006年5月29日月曜日

蟲師 #23 錆の鳴く聲

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「けれど今も街のものは,潰れ果てたが奇妙に美しい聞き覚えのある歌声が,山々に木霊しているのを微かに聞くことがあるのだという」 © ギンコ.

十数年間,固く守られた沈黙の理由は,最初の詩人の誕生.あるいは伝説は如何にして生まれたか.と,まぁ,文化人類学や比較宗教学みたいな話だった.しげ の塩辛い声は類い稀なる才能の象徴.その異能に搗き動かされるが故に (よって,やさび の姿は見えない) 人々は忌み嫌い,全員一致で殺そうとする.今回特にショッキングだったのは,いつもは蟲が登場するさいに流れる音楽が,村人が しげ を糾弾しに集まるところから始まっていたこと.今回は蟲はあくまで背景に過ぎず,不信故に人が人を害する魔女狩りの様相を呈しているところが,かなり無気味.

やさび (野錆?)
ここでは「さび」の字は金偏に靑.以下ギンコ.こいつはサビじゃない.やさび という名の蟲で,生きている.見えるものと見えないものもある.在り方の異なる生命だ.やさび はふつう生き物の死骸に付いて分解する害のないものだが,そのときある音を出す.おまえ (しげ) の声はこの音を何百倍にも大きくしたようなものだ.そのために,餌があると判断した山中の やさび が集まってくる.が,喰うもんがない.それで生きているもんにまで付いちまったんだろう.となれば,散らせば佳い.その上で,おまえの声を取り戻す方法もあるはずだ.

峠というのは境界線だ.そこで しげ は忠実なる従者テツとともに一度転落する.その後生還して やさび 祓いを行い,それなりのハッピーエンドとなるわけだが,そんなことでは騙されないぞ (笑).

つまり,峠を越えた辺りで,しげ とテツは村人の汚辱を一身に背負って殺されるわけだ.斬られたか,圧死させられたか,突き落とされたかはこの際問題ではなく,境界外で殺害されなければならない.殺害という汚れを村に持ち込むわけにはいかないから,残ったものへの説明として,墜落死したという説明がなされる.この時点で,境界外でさらに「突き落とされた」がために不可視の中心点となった しげ の荒ぶる魂を鎮めるために,そして全員一致で一人を殺すという強烈な体験の波及を避けて共同体を機能させるために,以降は伝説として語られることとなったのだ.

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