ぐる式 (貳) より引っ越し作業中.未完.

2006年6月19日月曜日

蟲師 #26 草を踏む音

  • 蟲師 DVD sp 4 / 蟲師 OP CDS
  • 蟲師 DVD sp 4 (二発目) / nice & neat
  • 蟲師 DVD sp 4 (三発目) / nice & neat (二発目)

「あいつも山も,ずいぶん様変わりしたもんだな.な,元ヌシ殿よ」 © ギンコ.

途中に中断を挟み半年以上続いて来た『蟲師』もとうとう最終回である.光脈筋を原点に置いて,二つの集団がある.沢は原住民の地主の子.イサザは光脈筋を追って放浪する「よそもの」であるワタリの少年.この二つの集団は,基本的に交わることはないが,まったくの没交渉というわけでもない.ワタリの活動の根源は光脈筋だからである.経済活動もそれによって支えられている.子どもたちにとっては,ふつうに「よそもの」である.仲良くなる場合だってある.

ワタリという非定住者の集団に入るには,蟲によるなんからの影響を受けなければならない.定住者の方にとっては,それはある意味「追放 (Exile)」と同義である場合が多い.実際に沢がイサザに仲間に入れてくれと懇願したきっかけは,父親の死とその後に事情によって「山を守れなかった」という自責の念がある.対比的には沢=ロレンス,イサザ=ジョイスとも取れそうだが,イサザにコスモポリタンの面影はない.イサザは沢よりも「脳化」について知っているからである.

蟲師という集団は,この二つのどちらにも属さない.話中に十歳の頃のギンコが登場するが,彼は拾われたワタリの集団から,さらに「抜け落ちて」とある蟲師に預けられるのである. Z 座標だけを見てみると,上から,沢,イサザ,ギンコとなっているように見えるが, XY 平面ではこの逆順で原点から離れて行っているように見える.そしてそれは,たぶん「脳化」の度合いと比例している.農耕だから農家=脳化と言ってしまえば,単なるクソ駄洒落だが,身体性の拒否という点から見れば駄洒落では済まされない.

こんな感じで,三つの集団がそこに所属する子どもたちの姿によって描かれるわけだが,蟲師という集団はかなり融通の効く部分がある.土地に縛られた定住者,光脈筋を追うことから逃れられないワタリと違って,蟲はいわば偏在する.そのため,蟲と関わる蟲師は,農耕民族,狩猟民族に比するところの遊牧民族的趣がある.定住者とワタリの間を取り持つ交易活動も行うのである.

遠い昔のある時点において出会っていた三人の子どもたち.それぞれの歩んだ先は別れてしまったが,「草を踏む音」を鳴らして再び沢の元に現れたギンコは,光脈筋を失ってしまった沢の里にとっては希望の光をもたらした.草を踏んでやってきたのは,たとえ今にも消えそうではあるものの,まぎれもない「希望」だったわけだ.最終回にふさわしい内容だろう.

十歳の頃のギンコを演じるのは沢城みゆきである.彼女はすでに 第十二話 で幼いギンコ=ヨキを演じている.スタッフもその辺に抜かりはない.時間軸上に置いてみれば,この話は「眇の魚」のあとに続くものだろう.ギンコはすでに ぬい の基礎訓練を済ませているわけである.あるいは学士号も取っているのかも知れない.

というわけで,全二十六話 + ダイジェスト一話の完結である.全話見終わって楽しみな点がある.これを上回る作品にいつ出会えるだろうかという期待が,それである.あらあらかしこ.

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