ぐる式 (貳) より引っ越し作業中.未完.

2006年1月24日火曜日

蟲師 #13 一夜橋

  • 蟲師 DVD 1b (台詞なし 15 秒)
  • 蟲師 OP CDS / 蟲師 DVD 1a (台詞あり 15 秒)

「彼女はもう彼女とは言えないが,それでもまだ生かされている.モノのようには扱えない」 © ギンコ.

実際に「楽園」に通じているのかどうかは判らんが「楽園への道」を踏み外して谷底に落ちると,「谷戻り」と呼ばれる (「ヒトとは呼べぬモノになり」果てた) ゾンビ化された状態になって戻ってくる.あ〜,『猿の手』の変形なのか.サーリとヴレンチェン (村のロミオとジュリエット) のように追われるようにして山間の村から逃げ出そうとするゼンとハナ.こちらは逆にジュリエットの方が先に逝く.

(字未詳だが読みは,にせかずら)
贋葛か.蔓状の蟲.向日性がある.現地のソレは「ずいぶん弱々しい」.逆方向に引っ張ると丈夫.陽光が少な過ぎる故らしい.通常は樹上生活を営んでいるが,現地のソレは,ギンコ「生物の身体を乗っ取ることで谷の底から出ようとしているのだろう.やつらにはもっと陽の光が必要だが,谷を昇る力が備わってないからだ.そして生物の身体に宿り陽の光を浴び力を蓄え,そういう族が一定数に達するごとに宿主から出て群れを成し谷を渡り,より望ましい場所へ移住する.それが一夜橋なんじゃないかな.以前聞いたことがある.およそ二十年ごとに蟲の渡りがある谷があるとな」.谷底には動物の骨が見当たらない -> にせかずら は死体に寄生している可能性が高い.

蟲以外.

谷戻り
ゼン「谷に落ちて戻ったはいいが,心は喰われてい」る.「中味は蛻の殻になって」しまっていて,「谷に一夜橋の掛かる夜,死んでしまう」.にせかずら に寄生された状態をいう.現地では死体に寄生しているので,一夜橋が掛かる=寄生体から抜けだすと,宿主は元の死体に戻るので「死んでしまう」.
一夜橋(ひとよばし)
ゼン「谷に一夜だけ掛かる橋」.実際は群れを成した にせかずら が移住する際に見せる渡りの現象.ハナが死んだ夜に掛かる一夜橋,こちら側からは渡ることができるが,戻る (逆方向へ向かう) と谷へ落ちるというのは,現地の にせかずら が弱いとはいえ「逆方向に引っ張ると丈夫」だから.現地に一夜橋が掛かる周期はおよそ二十年.

外界との交通手段が吊り橋だけというのはあり得ないと思う.だから「一夜橋」は「いちやばし」じゃなくて「ひとよばし」と読むんだろう.「人の世」に繋がる橋だ.ハナと逃亡未遂を犯したゼンが村八分にされているように,この村の全員がどっかに緋文字を付けてるんじゃ.というと惑星ならぬ流刑村落 (笑).ギンコを止めようと橋を落としたハナの母が実際にやったのは隔絶化.そこに にせかずら が掛けた一夜限りの橋を渡ることができるのは,けっきょく「よそもの」であるギンコだけ.逃亡の意志があっても流刑村落の一員である村人ゼンにはその束縛から脱出することはできなかった,と.水平方向はそれでエエかも知れんとして,上下方向は? 佳く判らんのだが (笑),以前にギンコが左腕でヒトと蟲の配置関係を説明してたのと同じような気がするが,こっちはすでに死体で蟲界に入って行ったわけだからそれだけ特殊か.死体が登場人物として出てくるのは 第八話 以来だけど,あちら「より」も死んでいる.なんかポーの『ヴァルデマール氏の病気の真相』とか埴谷雄高の脳ゾンデ (『死靈』に出てくる「死者の電話箱」) とか思い出しちゃったよ.

「忘れよう.きっと忘れられる.此所を出れば」 © ゼン.此所を出なくても忘れられる方法が一つある.「谷戻り」になることだ.実際にゼンが選んだのもそれだった.

さて,「谷」.『漢字源』ではハ印 (わかれ出る) 二つ + 口 (あな) で,水源の穴から水がわかれ出ることを示す,とある.この出典は『説文解字』一一下の説だと思われるが,『字統』では口に従う字ではないとある.こちらでは,谷口の形.左右から山がせまり,谷口が低く狭まった形を示す.金文の字形では下が口ではなくてVになっている.さい (Uにーで盖を加えた形) に従うものは祝禱の儀礼に関するもの.谿谷の間は山気の新奥なるところであるから,神霊の依るところとされ,民間的な進行の対象でもあった.谷を神霊化した表現は多い,とある.そういや,「谷」の字がなぜ中央が高いのか不思議なんだが,これは谷の断面を示していると解釈するからおかしくなる.水平方向ではなくて上下方向の方なのだ.谷を山上から見た形なのである.いやぁ〜,知らんかった.

かずら=葛とするなら,「葛」は艸 + 曷 (水分がない,かわく) で,茎が乾いて蔓状を成し,切っても水汁が出ない植物 (『漢字源』).『字統』で補足すると,葛の木にまとう姿は祝頌の発想に用いられる.葛の紐は婦人が喪に服する時に用いる.

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