「己の物語を演じつつ,しかし人はその物語の作者たることはけして許されない.近代の苦悩が判ったか,小僧」 © 室田文明.
埋め立て地の高層マンション (第一話),海浜の一戸建て売り住宅 (第二話)に続き,今度は大日本写実探偵社オフィスと安アパートの泡立荘が舞台.
バックグラウンド動作中の多美子さん,フロントに出てきて大日本写実探偵社の多々羅伴内と結託,麿子と犬丸の現状を探る.これがまたメガネ的な饒舌長台詞の奔流で,すこぶるオモロい.探られている麿子と犬丸はというと,六畳一間の「男と女の情念のドラマ」どころか「可愛い孫娘と (同い年の) 若きお祖父さまの情念も愛欲もないほのぼの同棲時代」.
「若くて明るい貴女,気軽に働いてみませんか.衣服貸与日給一万円以上託児所完備足抜不可委細面談.キャバレー・ロンパリ」 © 四方田麿子.
最後に (有) 吉本金融の室田文明登場.反家庭的武器でのみ武装している犬丸のドラマを,同時代の社会的他者という立場からあっけなく粉砕する.
前口上は鳥類の愛のディスプレイ.「孔子(くじ)も倒るる恋の山」,「恋は意外の正無事」 (?),「従兄妹同士は鴨の味」.
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