- FC CD 「コックリ島のひととき 〜ボラボラ様からの贈りもの
- 創聖のアクエリオン 番宣 / FC 4GBA
- 創聖のアクエリオン 番宣
「セス,死んでも償いにはならない.トーマとして生きて.周りの人を幸せにするの.それがほんとうの償い」 © ヘルガ.
半年間の長きに渡った本作もいよいよ最終回.まぁ怒濤の最終話とはいかないし,いく必要もないのだけど,感動の最終回というのは当たってる.うん,とっても佳い二十六回だった.なんとなく終わるのが惜しいな.
トーマは無事ヘルダを取り戻す.内蔵されたセスの魂はセスの姿を取って死んで詫びるとかホザいていたが,んなもん詫びにはならん.ほんとうに詫びたいのなら生きて余生を捧げねばならぬ.トーマを殺すな,トーマとして生きろと.この辺,話者がヘルガ=ティナ,トーマ=セスと入れ替わるのでややこしい.ヘルガの言葉を聞き入れないセスの心を解放したのはティナの自己犠牲の言葉.セスは最終的に報われたのだろう,トーマの姿に戻る.セスの足下に頽れたティナもヘルガとなって戻る.こちらも解放された.
この後は後片付けみたいなもんだ.デュマはゲド・リングを破壊,ゲオルカらしい死体を回収 (これがゲオルカ本人なら,こいつはほんまのバカだよ orz),一度は遺棄したはずのタナトルームスの保存カプセルも回収する.タナトルームスに対し「元の身体に戻るならギリシアまで船を出す」と申し入れ.だが,彼らは戻らない.地球に残り,地球人として生きることを選ぶ.ゲルタ博士=メルはパルザのレコードを抱いて.
デュマに与えられた選択はティナの肉体とともに母船内の庭園で時間を止めること,そうなのか.それが救いだというのか.まるで生きながら葬られるも同然ではないか.なんと残酷な.
ソレトの問いに対してアギは「十二歳になるとギリシアの記憶は完全に消えてしまうだろう」と語っているが,これは厳密には正しくない.というか,消えてしまうというよりもむしろ連携がなくなるというか,断片的になって意識の底に沈んでいるといった方が正しいようだ.だって,セラフィーヌやクリスティーナの絵が「ほとんど忘れられて 花咲く涼しい日かげの庭」や「まどろみと夜と星が待っているところ」,「おまえの青い美しい岸」を微かながらであっても覚えていることを語っているではないか.
まぁヒロインの座を脅かす存在が他になかったというのもあるだろうが,けっきょくのところ,ギリシアの男どもの魂至上論,精神主義を一発で粉砕できるだけの肉体の存在を自覚していたのはティナ=ヘルガだけだったな.女性としての属性が明確なのも,ヘルガ=ティナとトーマの母ちゃんぐらいだしな.これはやはり,女性というのが子どもを生む存在であるというのと無関係ではなかろう.精子に比べて卵子がなぜあれほど巨大なのか.配偶者間の関係においてつねにオスが搾取する側に回るのは,オスが歴史的な存在ではないからではないか.ま〜,単なる思いつきであって何の裏付けもないが.
銀髪と碧眼は時間が経つと元に戻るようだな.たぶん,ギリシアの記憶の濃度と比例しているんだろう.
十年後,施設か学校か,そんなところで先生と呼ばれているヘルガを訪れる青年が一人.水を一杯所望するというのも意味深だが,ソランに佳く似た旅人の左腕にはギリシア文字の痣.それを難なく読み取るヘルガ先生.ソランという存在はもはや覚えてはいないようだが,それにまつわる,ある暖かい感情は忘れてはいない.たぶんそれは,その直後のエンディグ・スクロールの最初で,ちびティナがソランに初めて出逢うときの感情と同じだろう.あなたが誰かと初めて出逢ったときに暖かい感情や懐かしい想いを抱いたとしたら,あなたがたは「きっと,どこかで逢っているんだね」 (カンパネルラ).
「挟間」が海辺として描かれ,そして閻魔が海から来るのは意味がありそうだ.そう,ここでは海とはそういう存在なのだ.真っ先に思い出しのは補陀洛渡海だったりするが (笑).閻魔はある航路に沿ってやってくる.そしてこちら側から乗り出して行くには,「見えない目」で見,「聞こえない声」で話すことができなければならない.
ハスモダイが朗読するのはまたしてもヘッセ.タイトルは『フィエーゾレ (Fiesole)』だが,原詩のテクストは見付からんかった.引用されているのは高橋健二さんの訳で,新潮文庫の『ヘッセ詩集』 p. 45 に収められている.なぜか第三行が省略されている. 第三話 で引用されていた『どこかに』は pp. 164-165.ちなみに,この両詩の間には平均すると二十七年という年月が流れているわけだが,基本的な「ここではない場所へ」という願いは同じだ.もちろん「行きたい場所」と言い換えても佳い.ヘッセの漂泊する魂はギリシア由来かも知れない (ないない).
「合体すれば世界が変わる」って,そりゃそうだろうよ,一旦死んで生まれ変わるわけだから (笑).ま,スルーで構わんでしょうな,こりゃ.
0 件のコメント:
コメントを投稿