ぐる式 (貳) より引っ越し作業中.未完.

2004年10月22日金曜日

Kurau Phantom Memory #16 丘の上の墓標

  • 爆天 コレクターズセット / Kurau DVD 1a / Kurau OST 1 / 新居昭乃『エデン』 / ボーボボ
  • アカネマニアクス DVD 1 / ワる Q dx

「そういうことは言うもんじゃない」 © 名前のない老人.宮本常一の『忘れられた日本人』を思い出させる台詞.松岡正剛曰く「西日本では生活と文化を村の全体が記憶する。これに対して東日本では家が記憶する」,噫乎,心がゆったりする佳い言葉だ.

前回 の左翅を半分失ったアゲハが拳銃自殺する回想シーンで始まったんで,鬱な気分で観始めさせられてたら.右頬に大きな傷跡のあるジェシカ登場.丘の上に墓標が四つ.ジェシカの両親と叔父夫妻の墓らしい.写真の制服からすると月の研究所の研究員だったらしい両親が亡くなった原因は例の 2 年前のリナサピアンの事故,それ以来奇跡的に頬に傷跡を負っただけで済んだジェシカは叔父夫妻の元に身を寄せていたが,彼らも自動車事故で命を落とし,天涯孤独の身に.これ,あとで言葉でも語られるけど,まず 4 枚の写真を順繰りに見せることで,あらかじめ頭に入りやすいように布石を打ってる.しかもジェシカの境遇の変化も判るようになってる.やっぱ「一見に如かず」だな.

四つの墓碑には,

  1. 向かって右から不明なのが一つ
  2. ? ? May 10, ? - July 5, 2108
  3. Dolph Lundgren May 12, 2047 - April 8, 2109
  4. Erna Lundgren June 7, 2061 - April 5, 2109

何か北欧風の名前だけど,月名は英語.ジェシカ (Jessica) という名前は Allman 引くまでもなく英語圏.起源はユダヤ教というか旧約かも知れないけど.ううむ,ここはスイスだろ? それとも GB が復活したんだろうか. Kurau の腕章の件 もあるし,とりあえず英語の言語支配は浸透しているようだな.人が殺されるだけではなくて,言語も殺されていく訳だ.言語が支配されれば思考も支配される.そういう世界設定なのか.

あとでランダムハウス引っくり返してみたら Jessica ってのはジョア (ン) ナ (Johanna) の別称だと知れた.ああ,ならハイジの原作者と同じで「ヨハンナ」なのね,というのはエエが,なんでそれを英語の別称で呼ぶ,というわけだ. Johanna と対になるゲルマン語形 Johann の元は John だが,これには俗語で "woman's lover" の意味がある.あと, John の先頭は小文字にするとトイレの意味だ.無関係ついでにいえば Richard の愛称 Dick は,小文字にすると penis の意味だったと思う.もう,やめぃ.

孤独に耐えかねたか,村祭りの日に丘の上の墓標の前で自害しようとするジェシカの前に天使が落ちてくる.イヴォン・タルジュと言う名前の.

イヴォンの消息を確認できない GPO は相変わらず付近に展開して捜索中だが,そのとばっちりで Kurau と Christmas も表に出ることができず回復中 & 潜伏中.やれやれ.

あ! イヴォン生きてるぢゃねぇか! だからさ,こめかみに銃口当てるのはダメなんだよ,口蓋に突っ込んで上向けて撃たないと,って何を言ってるんだ,おれは (笑).思いとどまったジェシカが家に連れ帰って看病してたらしい.イヴォンって,ほんっっっとに単なる試験体なのか.「言葉を喋るんなら人間」 © ココなんだそうだからさ,基礎的な教育と仕付けぐらい施してやれよ.上半身裸で外には出てはいけないぐらいの分別はあるんだからさ.

そ〜か〜,リナサピアンは自殺することも許されないのか.ただ,分解のときを待つしかないのか.そういう存在なのか.え,どうなんだ,をい! と思わず大声を上げたくなるんだが,どうなんでしょう, 甘噛みさん,どう思われますか?

「どこにも行く場所なんかないのに」というジェシカと,必死に対を探し求めるイヴォンの束の間 (たぶん一日もない) の共同生活.「君の傍を離れない.ずっと一緒だ」という宣言があって,お互いに名乗りあう二人.ようやく心の拠り所を回復した二人は村を出ようと,丘の上の墓標に別れを告げに行くのだが,ここでイヴォンは「何も上げるものがないから」と帽子をジェシカに託す.実生活ならまだしも虚構でこんなことやればそれは急展開の呼び水にしかならないという法則の通り, GPO に発見される.捕獲劇の際にジェシカの Rynax 能力が覚醒したらしい.あ,ここのコラール風の音楽には歌詞があったのか.げげっ,と思ったらジェシカ光の欠片になって消えちゃった…… これって,そういう場面の音楽じゃないだろう! 余計にショックがデカい.不安になったので 第 12 話 の野中ミドリさんのシーンを見返してみたけど,案の定そちらでは "Moonlight" が使われていた.なにぃ,対ショック態勢が必要なのは "Moonlight" だけじゃないのか.天使昇天.落ちてきたのが天使ではなくて受け止めたのが天使.

因子発顕は何か急激な感情の変化が引き金なんだろうか.キーワードは欠如の回避? 補完が間に合わないから Rynax で充填される? それとも,単に時間の問題? 抑え込む,あるいは折り合いが付けられないと,こうなっちゃうの? いや,それどころか,もっと鬱な設定があって,アポトーシスみたいに回避不可能なのか. Rynax の能力は遅かれ早かれ主体を喰い尽くす? アヤカの根拠はそこ? 実験的に作り出されたイヴォンの悲劇性と彼に与えれらた設定が象徴する非人道性の根拠はここ? いずれは Kurau も Christmas もこうなる定めで,今の生活は時間的なもの,束の間の生? 本来ジェシカとイヴォンのエピソードは Kurau と Christmas が体験するはずの出来事で,ここではそれを先読みで見せているだけ? 噫乎,どんどん考えが暗くなっていく (笑).

「アゲハ蝶の不安」〜「丘の上の墓標」ときて,次回のタイトルが「霧の中」って,佐川くんは関係ないだろうけど,また誰かが居なくなる話か.「周囲のもの総てが,厚くたれこめたミルク色に鎖され,深海の光景のようにどんよりと沈み込んでいる,こんな霧の中を」消えていくのは,イヴォンなんだろうな.

もう,人が死ぬ,消える,居なくなる話はいいよ.まる一話幸せな話を観せてくれ.って,無理だろうけどな……

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