ぐる式 (貳) より引っ越し作業中.未完.

2005年3月7日月曜日

ステルレルニー『ドーキンス vs. グールド』

ぱっと見,大きな相違点って二つあるように見える.まず,帯には「必然か,偶然か?」とあるが,これを連続と,断続と言い換えたもの.そして,科学の役割りというか科学への信念というか信頼.前者はトップ・ダウンとボトム・アップの対比みたいな感じもするが,その対比はたぶん,ドーキンスがローレンツ -> ティンバーゲンへ至る動物行動学から,グールドが古生物学から進化生物学にアプローチしてるということからくる先入観故だろう.そんなにすっぱりと別れてるわけでもないし.

身もふたもない言い方だと,積み上げというか組み上げ型と削ぎ落とし型.連続的な小さな変化が長時間の間に累積されて大きな変化になる.進化のパターンの大部分がこれだというのがドーキンスなら,世代間の変化は累積されず変動する.種としては明確な進化状態を示さずに定常状態にある.そこに新たな種を生む引き金になるのは巨視的な事象,たとえば絶滅を引き起こすような気候の変動といった要因,さらには地理的あるいは地質的なできごと.これに対応するために地質学的には突発的な時間で変容することのできたものだけが生き残るというのがグールド.合ってんのかな〜?

もう一つの方は,ドーキンスは科学の薬性に揺るぎない信念を抱いているのに対し,『人間の測りまちがい』を書いたグールドの方はそれが効かない領域,毒として作用する領域があると考えている.

用語解説や丁寧な参考書案内があるのはエエが,索引がない.だめぢゃん.こういう本こそ索引が要るのに.

ドーキンスの『利己的な遺伝子』とグールドの『ワンダフル・ライフ』または『人間の測りまちがい』を読んでおもろいと思ったのなら,楽しく読めるでせう.でも高価いな〜.似たようなページ数のコンラッド『闇の奥』(岩波文庫) は \400 なのに \1,000 だよ.

参考書案内で興味を持ったのは,ドーキンスの『表現型』他,ゲーム理論を社会行動の進化に適用した例としてアクセルロッド『つきあい方の科学』(ミネルヴァ書房),シグムンド『数学でみた生命と進化』(ブルーバックス).非常に読みやすいそうだ.『種の起原』も「読み難い」なんて文句垂れてる場合じゃないよ (笑).

  • キム・ステルレルニー "ドーキンス vs. グールド", 適応へのサバイバルゲーム 狩野秀之 訳, ちくま学芸文庫, 2004, ISBN4-480-08878-4, (Kim Sterelny "Dawkins vs. Gould", 2001)

グールドのいう多様性 (diversity) と異質性 (disparity) の例.グールド 1989 p.67 (文庫本 p. 73).

多様性
玲音,康雄,美穂,美香,ありす,麗華,樹莉,英利政美,タロウ, JJ, etc.*1
異質性
玲音,れいん,レイン, lain,ぐれいん,ちびちびれいん.

すんません,冗談ですぅ.えと,ある時点での種の数が多様性,基本的な体制や身体のプランの数が異質性でおます (p. 89).

*1: 上記の "serial experiments lain" から無理に引っ張ってきた例だと,二段階ぐらいスケール・ダウンして,ある特定のフィールドに存在する個体を多様性,その個体が常駐するフィールド間の差異を異質性の指標としている.もちろん,逆に考えて,ある特定のキャラクタの多重度を多様性,多重度に対応するフィールドを異質性の指標とすることもできる.この場合,最終話でありすだけが描かれたように,ありすや美香はそれぞれの玲音の総体数に対応する数だけ存在することになる.なお,ぐるぐるれいん,くま玲音は変種とも亜種とも認め難いので却下.

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