ぐる式 (貳) より引っ越し作業中.未完.

2005年3月4日金曜日

ふたつのスピカ #05 おかあさんの顔

「おかあさんね,すご〜く佳い匂いがしたんだ……」 © 鴨川アスミ.

またしても鯨幕.第一話の直後,鴨川今日子さんのお葬式が済んで四十九日の辺り.リアル・アスミは瞳孔が開いてショック状態.まともな反応が返ってこんので一回お休み.しかもこれは臨死体験だ.だけど,んなもん放っといて,ある意味完璧な一話ということで.

頭で三つの問い.

  1. どんな匂いがするのかなぁって.
  2. ずっと寂しかった?
  3. もう痛くなくなった?

これらの問いに対する答えは最終的にすべて得られた.

原作との違い.

  1. 素顔を見せた高野 / ライオンさんが解説する,元の世界への戻り方.
    • 原作;川沿いに下流へ.
    • アニメ:川沿いに上流へ.
  2. 鈴成先生の図工の課題.
    • 原作;おかあさんの顔.
    • アニメ:家族の顔.
  3. 府中野くんの役割り.
    • 原作;アスミの絵を見て冷やかす.
    • アニメ:アスミの絵を見て冷やかした同級生の脚を踏んづける.閉鎖環境適応テストの受付時にも披露してたけど,これで相手の気勢を削ぐやり方は,小学生の頃から仕込んでいたのか.

    これでは原作の府中野くんは単にヤなやつだが,溺れたアスミを背負って鴨川家まで運んできた肉体的苦労に免じて許してやろう (笑).アニメ版の方は期せずしてナイト役やっとるんで,これはこれで.

  4. ショールの扱い.

    これがいちばん大きな変更.絵の代償に今日子さんからもらったショールは,原作では見開きで実に印象的な使われ方をしている (pp. 178-179).川を渡ってゆく今日子さんへのアスミの最後のメッセージになっている.こちらでは,ボートが進むにつれて眼が見え,包帯が取れた今日子さんが振り返って,河岸に立ち尽くすアスミを認識する唯一の手掛かりになっている.意味的な主体がちょうど対称的な位置関係にある.ショールのメッセージという絵はインパクトが大き過ぎるんかな.それまで抑え続けてきた感情を爆発させるシーンでもあることだしな.こちらの方はショールを抱いて佇むアスミに今日子さんがメッセージを投げ掛けるという逆の構造になっている.単発ものとした場合は確かに原作の方が印象的だと思うけど,シリーズに組み込んだ場合はこちらの版の方が連続性を壊すような高いピークを作らなくて済むのかも知れない.

「もうおかあさん,三途の川を渡ったのかな」 © 鴨川友朗,いやいやどうして,なかなかたいへんですよ.やっぱ今日子さんはアスミのことが気掛かりだったんだろうな.それが嵩じると黒い影になっていつまでも蟠るが如くに傍に蹲るようになってたいへんに困るんだけど (新耳袋 2-47).アスミの方も臨死体験中でだけど実の母親を前にして名乗ることができないという哀しみを味わってましたよ,友朗さん.

川を渡って行った今日子さんはお星さまになった.包帯がとれた今日子さんは綺麗な人でした.

アスミを河原に引き上げたのは誰? まぁ,たぶん自力で這い上がったんだろうが,はたして溺れている子どもにそれが可能なんだろうか.あ〜,そんな下世話な詮索よりも,この子は愛されている護られているんだなということを感じ取れれば佳いのかも.

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